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“ぼくのかんがえた最強魔法”を創れる『Spell Fragments』で究極の魔法使いになろう。くらえ!ファイヤーサンダースピアストームアイスボルト!チュートリアルが終わるより先に最強魔法でゲームがぶっ壊れる、でもなぜかバランスがとれてる

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『Spell Fragments』は、誰もが「禁忌」を手中にすることができる。

自分だけの、最強の、究極の魔法を作りたい。そして、使ってみたい。それが例えゲームバランスを壊すようなものでも……。という、禁忌の欲望に際限なく応えるのが、本作だ。

本作はCAMPFIREにてクラウドファンディングが実施されているが、総支援額は既に466%を達成と、目標金額を圧倒的に上回っている。それほどまでに、この禁忌は魅力的だ。

『Spell Fragments』の魔法構築システムは、とにかく「自由」だ。“こんなに攻撃力を盛ったらヤバい”とわかっていても、ゲームバランスを揺るがすような魔法を使ってみたくなる。そんな、危険で抗いがたい欲望を叶えることができる。

『Spell Fragments』レビュー・評価・感想:呪文の欠片を組み合わせて“ぼくのかんがえた最強魔法”をビルドできる_001

本作は「魔法構築」を軸として、ありとあらゆる最強魔法による、とんでもないプレイスタイルが実現する。多様な魔法を作り上げて使い分ける、まさに魔法使いらしい戦い方ができる一方で、究極魔法ひとつでダンジョン内の全ての敵を滅ぼしてもいい

もちろん、ただインフレした魔法を楽しむだけの作品ではない。本作の魅力ポイントは多岐にわたる。ローグライクならではの、ランダムな条件下でビルドを進めてステージを攻略していく楽しみもある。ハクスラ的要素でアイテムどころか魔法のパラメーターまでもがランダムに変化するので、宝箱を開けるのもワクワクする。

本作がいかに、これまでのゲームにおける「魔法」の常識を一新させるのか。本稿では、その詳細を先行アルファ版である「禁忌魔法版」のプレイレポートとしてお届けする。

文/囲図囿図囲
編集/anymo

※この記事は『Spell Fragments』の魅力をもっと知ってもらいたいCocoro Softwareさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


ファーストインプレッションは「もう壊れちゃった!」

本作の魔法構築システム」が、どれほど自由なのか。

この点について語るのはそう難しくはない。見ても触っても、そのヤバさが一発でわかるレベルにある。

その速度感には、たくさんのローグライクをプレイしてきた筆者も流石にビビった。攻略を開始してから、5分と経たず画面を魔法弾の嵐で埋め尽くすことができたのだ。何もしていないのに、ゲームが壊れた。チュートリアル文すら読み終わっていない。

いいんですか?こんなに早くゲームを壊しても……。

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本作における魔法構築システムは、様々な性質を持つ「呪文の欠片」を組み合わせてオリジナルの魔法を作っていくもの。かつ、魔法は連鎖させることができる。

「“10発の魔法弾を放つ呪文”と“10発の魔法弾を放つ呪文”を連鎖」させると、100発の魔弾が出る。ここで止まっておけばいいものを!本作では組み合わせ次第で1000発も、その10倍の10倍の10倍の10倍の……さらにその先を目指すことができる。プレイしているPCが悲鳴をあげるまで、これを追求できる。

なぜこんなことができるようにしてしまったんだ。

……最高じゃないか!

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しかし、読者のみなさんはこのド派手な仕様について「ゲームとしてバランス大丈夫?大味じゃない?」と不安になるだろう。

それが、なぜか大丈夫なのだ。

本作はハクスラ要素やローグライク要素なども合わせて、「最強魔法を丁寧に作り上げていく」要素がプレイの大きな部分を占めている。そのうえで、“やりたければ”バランスがぶっ壊れるレベルの究極魔法を作り上げることができる。

進行状況や魔法の構築の仕方によっては、ずっと「究極のやつ」をぶん回すというのも可能だが、基本的には乱発できないようになっているのだ。

「こんな簡単に自由に複雑な究極魔法が作れたら世界が終わるでしょ」←ギリ終わらない

では、いかにして究極の魔法が出来上がるのだろうか?答えは本作の魔法構築システムの独自性にある。

本作では敵か宝箱からドロップする「トリガー」「スペル」「オプション」の3つのどれかの要素を持つ「呪文の欠片」を使って魔法を作成する。これらを25個のマス目に配置し、それぞれをリンクさせることで魔法を作ることができる。

そして、この魔法構築はロジックで組み上げる側面があるのだ。(筆者は「マジカル・プログラミング」と勝手に呼んでいる)

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役割としては、まず「トリガー」が魔法の発動方法を決める。そして、「スペル」が魔法の内容を決める。さらに、「オプション」が魔法の効果に変化を与える

それぞれの呪文の欠片を「パス」という鎖によってどうリンクさせるかが自由に選択でき、これによって大量の欠片をまとめて究極の魔法を作り上げたり、いくつかの塊に分けて状況に即した魔法を使うといったことが可能になる。

一見すると複雑そうだが、効果は魔法を発動したときに確認できるので、筆者の場合は理解するまでそれほど時間はかからなかった。前述したとおり初回プレイの1層目でもう「あー、ヤバいぞ」という禁忌の片鱗を感じたし、通算して10層ほど攻略した辺りで最強究極魔法を生み出して、盛大にやらかしている。

もちろんだが、この魔法構築システムには無限の可能性がある。

さらに詳しく見ていこう。

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まず、トリガーとスペルが魔法を使うためには必須となる。トリガーは主にキーボードのQやE、マウス左クリックなどのボタンにそれぞれ対応しており、押下することでリンクされているスペルが発動する。

また、行動や条件に紐付いたトリガーまで存在する。たとえば「回避トリガー」を設定すれば、回避と同時に回復したり、バフをかけたりが実現してしまう。もちろん、攻撃もできる。

筆者のお気に入りは「敵トリガー」だ。文字通り、敵が近づいてきただけで魔法が発動する。強すぎる!

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魔法の本質を決定するスペルも実に多彩だ。

シンプルな連射攻撃の「魔弾」なんかはオーソドックスで、攻略に使いやすい。さらに火力を求めるのであれば、「フレアショットガン」。名前の通りダメージの高い火球がたくさん出るので嬉しい。そのほかにも、爆弾、散弾、雷、氷……などファンタジーな攻撃が目白押しだ。

スペルは理論上、24個まで繋げることが可能だ。「連鎖」という属性のスペルは、“効果が終了した時点で後続のスペルが発動”する。つまり、何かに当たったり、効果時間が切れたときに連鎖する。

このほかにも「並列」という属性もあり、これは“リンクされているスペルが同時に発動する”というものだ。これにより、瞬間的な広域制圧も実現できてしまう。

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トリガーが立ち回り方を彩る一方で、スペルは本作の魔法構築の根っこにあたる。魔法の威力がぶっ壊れるのは、だいたいこいつが悪い

もちろん、スペルは重ねれば重ねるほどコストが上がる。24個も繋げると、マナが足りなくてそもそも撃つことができない。本作ではクールタイムと詠唱時間というふたつの制約もあるため、回転効率も落ちる。

スペルの性能を強化・変更する「オプション」についても触れておこう。スペルを「散弾化」したり、「貫通」できるようにしたり、単純に「威力増加」させたりなど、あらゆる面から魔法の能力を引き上げる。

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魔法構築を考える上でのポイントとして、“オプションがコストに与える影響が控えめになっている”という点がある。スペルは重ねるとコストが肥大化しがちだが、オプションの重ねがけは、適切に行えばちょうどよく魔法の力をインフレさせてくれる。

また、トリガーにも種類に応じて威力や発動速度のトレードオフが存在したりと、スペルを重ねる以外でも考える要素は多い。

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そして、勘の良い方はもうお気づきだろう。全ての要素が掛け合わさった時、何が起こってしまうのか。

オプションでクールタイムを短縮し、消費マナを減らして、威力を倍増させ、敵を追尾できるようにし、さらに重ねたスペルで爆発氷結極炎のオンパレード……。なんなら発動は自動で。

こんな極限の魔法にハクスラとローグライクの要素がくわわって、時にはさらに上振れするのだから、面白くないはずがない。

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本作の魔法構築は、一歩踏み込めば「ゲームバランスをぶっ壊す」と言う禁忌に触れてしまう。

しかし、だからこそだ。自制しなくては、コストが高すぎて発動できなかったり、詠唱に時間がかかりすぎたりする。実戦で得た知識を持ってして最大効率を攻める、インフレしたド派手な画面とは裏腹の知的なプレイが求められる。そうしてギリギリまで踏み込むことで、指先ひとつで圧倒的な攻略ができる。

──不思議なことに、こうしてバランスがとれているのだ。

このリスクとリターンこそが、『Spell Fragments』を単なる「サンドボックス」ではなく、れっきとした「魔法構築ローグライク」として面白く成立させているひとつのポイントだ。

カッチリとゲームとしてまとめ上げてくれる「ローグライク要素」

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ジャンルとして魔法構築と並び立つ本作のローグライクの要素は、ご存じの方であれば想像できる基本要素が揃っている。ダンジョンを1フロアずつ攻略していき、どんどん強くなっていく敵を自分も強くなって踏み越えて、最深部のボスを倒すことが本作の主な目的だ。

ローグライクを語る上で外せないのは、やはり「ランダム性」「インフレ要素」「リプレイ性」だろう。

もう散々魔法についてのインフレは語ったのだが、ローグライクという軸でのインフレもちゃんと存在している。

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攻略の過程では「アーティファクト」と呼ばれる、その攻略中でのみ効果を発揮できるアイテムが存在する。こちらは各フロアの開始地点と、ランダムに道中で出現する祭壇で獲得可能だ。

「攻撃」、「回避」、「防御」、「回復」というカテゴリがあり、どれもレアリティが存在している。また、経験値を払えばリロールすることもできる。

攻撃でいえばクリティカルヒット率を上げるといったおなじみのものもあれば、特定の属性を強化するものもある。回避であれば「ダブルジャンプ」が可能になったりするものもあるといった感じだ。

プレイヤーの操作する主人公・エフィレィリカは、動きは機敏な一方で、防御面は強化してあげないと心許ないと感じる場面があった。この辺りは好みもあるかもしれないが、どちらかというと、回避したり距離を取ることが重要なゲーム性だと筆者は感じたので、攻撃と回避を選ぶことが多かった。

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攻略を進めれば進めるほどアーティファクトも集まってゆくので、当然インフレしていく。そして、「自分が扱う魔法を最も輝かせる『アーティファクト』はなにか?」あるいは、「自分が持っているアーティファクトに最も合う魔法は何か?」と頭を捻るのも、攻略のうえで必須になるだろう。

魔法構築が自由であるからこそ、他の要素との相乗効果が本作の魅力を際立たせているのだ。

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ローグライクとしてのリプレイ性の面で見ると、攻略終了時に獲得した装備などのアイテムと呪文の欠片を「ダンジョン内で獲得したスコアに応じて」持ち帰ることができる。現時点の仕様では、途中で死亡したりしても、攻略が進んでいればいくつかのアイテムを持ち帰ることができた。

ちなみに、筆者がノーマルダンジョンの最深部を踏査した際には、なんと62個ものアイテムを持ち帰ることができた。

そして、一度持ち帰ったアイテムは、再びダンジョンに持ち込むことができる。また、持ち込んだアイテム自体は死亡しても消えないという仕様だった。攻略において出し惜しみをする必要はない。

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というより、出し惜しみはできない。

最上位難易度である「ヘル」は恐ろしいほどの歯ごたえだった。敵が本当にめちゃくちゃに強い。硬いうえに、こちら側は一撃で倒されてしまうこともある。

ダンジョンの難易度ごとに獲得できるアイテムや呪文の欠片は異なるので、挑まないという選択肢はない。この苦難を乗り越えることで、究極魔法のさらにその先の、極上の魔法が作れるのだ。

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本作のアルファ版時点での最終的な目標は、最高難易度・ヘルを攻略することにある。魔法も、コストをおさえつつ高いダメージを出せるよう工夫する必要があり、やりごたえは抜群だ。

わりとハチャメチャで壊れてる疑惑のある「ハクスラ要素」

本作を彩る第3の要素「ハクスラ」だが、これが個人的には振り切れていると感じた。ここまで突き抜けている作品にはなかなか出会えない。このゲームは魔法もヤバいが、ハクスラ要素もヤバ

以下の画像を見てほしい。

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これは「威力増加」という、接続しているスペルの威力を+3してくれるオプションだ。筆者はこれをガン積みして攻略を進めていた。

……が、なんか弱い。

魔法が、なんか弱いのだ。

よく見てみてほしい。こちらのオプションの追加効果にとんでもないトラップが仕込まれていることに、お気づきだろうか。

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「威力+3, 攻撃力-11」

???

本作ではなんと、トリガー、スペル、オプション、装備、消耗品……つまり全てにランダムで追加効果が付与される。

今回のケースでは発射弾数を大幅に増やしてくれる「弾数+2」がついているので完全なマイナスではないのだが、スペルの基礎ステータスによっては、「攻撃力-11」のオプションがつくことで魔法はノーダメージになってしまうのだ

もちろん、この追加効果はプラスにも転じる。

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敵に「炎上」という持続ダメージを与えるオプションになぜか「発射弾数の増加」がくっついたりもする。なんてことのないものに特大のダメージ増加がついていることもあるのだ。あまりにも、ファーム欲が刺激されすぎる。

中でも、特にお気に入りのものを紹介しよう。

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ただでさえ楽しい敵トリガーに「弾の発生数+3」がふたつもついていて、歩いているだけで本当に敵が溶ける。ゲームエンド。

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基礎威力が高くてたくさん撃てるのに、これも「弾の発生数+3」がふたつもついていて、もはやマジカル重機関銃だ。

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クールタイムを下げるオプションに詠唱時間を下げる追加効果がついていて二度おいしい。攻撃力まで上がるのでDPSが爆上がりな縁の下の力持ち

超最強魔法を撃ちまくる誘惑に抗って、なんとか普通の攻略をしてみる

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魔法構築は強烈な独自性を持ち、ローグライクはおさえるべきところをしっかりおさえ、ハクスラはちょっとはっちゃけすぎている。様々な要素が絡み合い、むしろゲームとして一貫したまとまりを見せている。本作は、唯一無二の魅力を兼ね備えている。

なので、通常の攻略ももちろん面白い。ファームをして、宝箱を開けて、深層を目指して……それだけで楽しいのだが、やはりどうしても「究極魔法」を使いたい欲には抗いがたい

そこで筆者としてはいくつかの発散法を考えた。

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ひとつは「ベーススペル」とちょっと究極な「アルティメットスペル」の組み合わせだ。取り回しがいい魔法を軸に据えて、常用できるギリギリまでスペルを詰め込んだ、強力な魔法も用意して回転させるという形だ。

たとえば、11個のスペルを組み合わせた“ちょっと究極”な魔法でも、一部屋まるごとどころか、飛び越えて隣の部屋の敵まで「ポチッ」で殲滅することができたりする。通常攻略には採用しやすい手法かもしれない。

ストレスなく攻略できる上に、とてつもなくいい気分になれる。たまに、「爆発のスペルを使うのは、もう少し上手くなってから……」と自身を戒めたりしながら魔法を組み立てていく、中級魔法使いロールプレイも可能だ。自爆ダメージもあるので、実際に取り扱いも難しい。

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もうひとつが、可能な限りオプションで強化したものを、高頻度で敵にたたき込むという方向性。

こちらは究極魔法的な喜びは薄いが、敵をバターのように溶かせるローグライク的な快感が強い。しかしやはり強い魔法となると取り回しが悪くなるはず。クールダウンや詠唱の問題を乗り越えて、一体どうして高頻度でこれを使うことができるのか?

個人的に本作が「やってる」と思った魔法構築の仕様がひとつある。

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それが、「複数のトリガーで同じ魔法を発動できる」というシステムだ。つまり、キーボードのQ、E、Rなどのトリガーを、同じひとつの魔法につなげると、「異なる魔法」として認識される。なんと、クールタイムが別のものとして管理されて、ボタンをガチャガチャするだけでマナが許す限り究極の魔法でも同時に撃ててしまう。

これがヤバい。

一応、同じボタンを使うトリガーを重ねることはできないようにはなっている。それでも十分。それにくわえて、敵トリガーは別だったりする。魔法を複数の敵トリガーで囲ったりしたら、近づいただけで本当に敵がズタズタになってしまう。走っているだけでダンジョンが終わる。ボスも死ぬ。

もはや、これも究極魔法のひとつかもしれない。

というわけで、本作は派手な魔法を作れるだけではない。魔法構築の計り知れない自由度と、様々なシステムの伸びしろが組み合わさって、多方面で頭抜けたインフレと遊びの幅を見せてくれる。

「バグ修正を除いてできるだけ弱体化はしない」開発姿勢にシビれる

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「主人公が最強なゲームランキング」があったら余裕でノミネートされるんだろうなぁ……と、本作をプレイしながら筆者は思った。それくらい強い。あまりにも強すぎる。最初から終盤と言ってもいい。

しかし、ここまで繰り返してきた通り、バランスが取れている。ゆえに遊びは尽きない。そしてこの壊れ具合は、なんと保証されている。個人的にも「うおー、好きっ!」となったのは「バグ修正を除いて、できるだけ弱体化はしない」という開発姿勢だ。

もちろん、開発の過程で結果として下方修正が入ることはありえるが、公式がこのように明言しているのはハクスラやローグライクで弱体化に泣かされた人にとっては福音だろう。

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あくまで筆者の個人的な感想ではあるが、今回は開発中のアルファ版ながら開発理念が隅々にまで行き渡った完成したゲームとして楽しむことができた。もちろんアルファ版なのでまだ手が届いていない部分はあるが、ローグライクとして楽しむための基幹となる部分はほとんど固まっているとみてよさそうだ。

公式Discordをチェックしていても、本作では高い頻度の更新が成されている。既にとてつもない数の装備や呪文の欠片が存在していて、無限に近い遊び幅があるのにまだ進化の余地があると考えると、比喩でもなんでもなく普通に恐ろしい。魔法怖い。

「魔法を作れる」というゲームという類型で考えればこれまでにもいくつかのタイトルがリリースされている。しかし、「魔法を作る」という点だけに絞っても、本作はとても強い独自色を持っていた。加えて、多要素の調和によって生まれる体験はもう無上だったと言える。

『Spell Fragments』は、カジュアルにゲームをぶっ壊したい人、創意工夫を凝らして遊びたい人、真面目にローグライクを楽しみたい人。そして、魔法に魅入られた全ての人へおすすめできる作品だ。

本作を通して、ぜひとも禁忌に触れてみてほしい。ちなみに、本作は複数人での協力プレイにも対応する予定だそうだ。友達も誘って禁忌に触れてみよう。

現在、先行プレイが可能な『禁忌魔法版』はCamp Fireの1万1000円以上のプランでの返礼品となっている。

また、本作は先行アルファ版の開発期間中におけるオープンな場所での配信や画像の公開は禁止されている。(なお、YouTubeなどでのメンバー限定配信や限定公開は許可されている)

一方で、誰でも参加できる公式Discord上ではこれらが許可されているので、本作が気になっている方はこちらもチェックしよう。

 

ライター
ストア派とシカゴ学派の観点から人生をゲームとして生きている。ライターとしてはクラス選択したばかり。esportsは嗜む程度で、ほとんど追う専・観る専。好きなゲームジャンルは、ハクスラ・放置ゲー・宇宙ゲー・工業ゲー。特に、『Factorio』には無上の喜びを感じ、クリアまでに1000時間かかるMODを完遂することが夢。趣味は漫画を読むことと、書籍とゲームを積むこと。3度の飯ほど『弐瓶勉』作品が好き。
Twitter:@abaranche

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