『はらぺこミーム』は、「ミーム」と呼ばれるクセツヨで不思議な生き物の滅亡を阻止するため、プレイヤーがあの手この手と奮闘するシミュレーションゲームだ。
その見た目の印象はまさしく絵本的であり、どこかほんわかとした雰囲気と温かみのある色調、ミームたちのふわふわなキャラクターデザインなどから、「癒し系のゲームなんだろうな」という先入観を筆者に抱かせた。
だが、その外見は紛うことなき罠だった。
筆者は事前情報を一切仕入れず、本作に挑んだ……のだが。その初回プレイで「詰み」に陥ることになった。ミームたちの滅亡を阻止できない状況へと追い込まれ、1からのやり直しを余儀なくされたのだ。
絶句した。がく然とした。こんな絵本みたいなやさしい雰囲気に満ちたゲームで「詰む」とか、誰が予想できるだろうか!? 「とんでもないゲームに向き合うことになってしまった……」と、その時ばかりは本気で戦慄した。
そして、気合を入れなおして再挑戦した筆者は、今度は「時間泥棒」というふたつめの罠にはまることとなった。
本作は滅亡阻止のための計画を真剣に考えながらプレイする必要があるため、やるほどにズルズルと時間を吸われていく。しかも、ひとつのことを成し遂げるたび、新たな滅亡阻止の一手を打てるようになる。ミームたちも経験を積んで成長し、戦略的な作戦を実行できるようにもなっていく。
できることが増えれば、考えることがさらに楽しくなり、結果として夜は更け、知らずのうちに明け……気が付けば、小鳥のさえずりを聞きながらギンギンに血走った眼で時計を睨みつけることにもなりかねない。

たとえるなら、『はらぺこミーム』は絵本のカバーをかけられた中毒的な長編小説。寝る前に軽い気持ちで手を付けたプレイヤーを取り返しのつかない深みへいざなう、“ガチ”なシミュレーションゲームである。
遊び始めて仕組みとコツに気づいたら最後。延々と時間を吸われ続ける恐怖体験がアナタを襲う。若干、クセツヨが過ぎる部分もなくはないが、好きな人には深々とぶっ刺さって、抜けなくなってしまうだろう……。
※この記事は『はらぺこミーム』の魅力をもっと知ってもらいたいクラウディッドレパードエンタテインメントさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
不思議な生き物「ミーム」に降りかかった滅亡の未来を覆そう……って、資源管理が……厳しい……!
冒頭にも書いた通りだが、筆者は本作の初見で見事に「詰んだ」。ミームたちが滅亡する未来の回避が難しい状況に追い込まれたのである。結局その後、計画を再検討して1からやり直すに至っている。
「こんな絵本みたいなやさしい雰囲気に満ちているのに、そんな辛口なゲームなの!?」と思うかもしれないが、マジのマジである。もはや、やるべき一手が見つからないみたいな状況へと本気で追い込まれる側面を持っている。
本作は「食う、寝る、遊ぶ」の象徴みたいな生き物「ミーム」に将来訪れる滅亡の未来を覆すため、プレイヤーがあの手この手と奮闘する拠点発展とダンジョン探索に主眼を置いたシミュレーションゲームだ。
基本の遊び方としては、ミームたちの住まう村(拠点)を発展させつつ、食事の提供から体調全般の管理、果ては種族を存続するための繁殖(ブリーディング)などにも取り組んでいく形となる。
だが、いざ始めてみると、これが想像以上にシビア。というのも村の発展にせよ、食事にせよ、繁殖にせよ「素材」という名の資源が絶対に必要になる。
素材は「世界樹」と称された大木内部のダンジョンにミームたちを派遣し、探索させて回収するのが基本。ただし、プレイヤーはミームたちの探索および行動に直接干渉することができない。
できるのは、素材を回収するのに必要な「袋」を動かしてミームたちを導いてあげたり、ステータス管理(詳細は後述)のためのアイテムを提供することぐらい。あとは見守るぐらいしかないのである。
しかも、ミームたちは各々の意志で行動するのもあって、素材をちゃんと回収してくれるとは限らない。場合によっては、素材を拾ってそのまま食べてしまったり、何も発見できずその場に立ち往生してしまうようなことが起こり得るのだ。
加えてゲーム本編は日数単位で進行。現実世界で10分が経過することで1日が終わってしまう。
その僅かな時間のうちに世界樹内部の探索のほか、村の発展、ミームたちの繁殖、そして夜を迎えるに当たっての「ごちそう」という名の夕ご飯の準備をしなくてはならない。もちろん、それらをするためには「素材」なくしてどうにもならず。
シビアたる意味が察せただろう。本作は計画的な資源管理が常時試されてくるのである。なので、本当に甘い考えで取り組むと、素材が足りなくなってやりたいこともままならなくなってしまう。無計画で挑めば、滅亡まっしぐらなのだ。
ミームのメンタルが不調に陥った時、絵本みたいな世界に“地獄”が顕現する——。
滅亡から救わねばならないミームたちも見た目のみならず、中身も“クセツヨ”。
前述したようにミームたちは各々の意志(という名のAI)に基づき行動するため、プレイヤーが「動いて」「止まって」という感じに直接指示することができない。そのため、世界樹内部の探索は必ずしも事前の見込み通りの成果を出せるとも限らない。時には満足な素材を集めきれず、撤退することになる。
おまけにミームたちへの食事の提供、体調管理を怠ったり、不手際があればさらに状態は悪化する。特にミームたちに設定された3種類のステータスのひとつ「メンタル」が悪化すると「ヤバヤバミーム」と化し、探索と村の発展の双方で重大なトラブルを起こすように。
探索の場合、ヤバヤバミームが1匹でもいると、素材の回収と行動ルートを導くのに必要な袋に体当たりするようになる。袋を体当たりされるようになることで、何が起こるのか? 袋に入れた素材が消失してしまうのである。袋からこぼれ落ちて再回収の手間が生じるとかではなく、跡形もなく無くなってしまうのだ。
探索には最大3匹までのミームを参加させられるのだが、もしも全員のメンタルが悪化した状態になればそれはもう悲惨なことに。素材を集めた袋に当たって叩きまくり、中身を空っぽにする地獄のような光景が目の前で繰り広げられる。これがホントの袋だたきである。
しかも、探索中にもミームたちのメンタルは少しずつ減る。厳密には内部の霧に覆われた「未踏区域」に足を踏み入れるとメンタルが低下していくのだ。前述したような素材集めの失敗を防ぐため、探索中には必要に応じて回復用の「おやつ」を与えてあげることが重要になる。
だが、持ちこめるおやつは3個。そして、特定のミームに与えたはずのおやつを別のミームが食べ、こちらの配慮をおじゃんにしてしまうことも起きたりする。極め付けにおやつは素材無くして作ること叶わず。それも1日のうちに作る時間を設けなくてはならないのだ。
そんなおやつを作る場でもある村においても、ヤバヤバミームは問題を起こす。建設した施設に八つ当たりという名の攻撃をするようになってしまうのだ。

実は施設には耐久度が存在。これがゼロになると、その施設は跡形もなく壊れてしまうのである。もし、そうなれば当然建て直しである。そしてもちろん、建て直すに当たっては再び建設に必要な素材を消費することになる。素材が足りなければ、世界樹への探索にレッツゴーだ。
一応、食事を作る「キセキのナベ」を始めとする重要物や一部のシンボル(像)は壊れないが、各種施設はミームのメンタルを保つに当たっては重要。

特にミームたちの寝床でもある住居がなければ、特定日の夜に訪れる「まっくろ月」の恐怖にさいなまれ、メンタルが大幅に低下してしまう。そんなことになれば、どんな地獄が待つかは……想像に難くないだろう。
また、ミームたちに夕ご飯こと「ごちそう」を提供し、空腹にさせないのも大変重要。「はらぺこ」な状態だと、ヤバヤバミームと化すのも早くなってしまうのだ。
こんな繊細な存在であるミームにはもうひとつ、重要な特徴として寿命もある。ミームは一定の日数が立つと“月へと旅立ち”、村から居なくなってしまうのだ。当然、居なくなったミームは探索に参加させることもできなくなる。
そのため、ミームが減ることを前提にした繁殖も重要になる。しかし、繁殖を実施するためには素材が必要。そして、繁殖のためには「愛の巣」なる施設の建設も必要。この施設にも耐久度が設定されており、ヤバヤバミームに攻撃されれば、当然壊れる。
ミームの行動を直接操作できないだけでも結構クセが強いのに、メンタルの悪化で問題行動まで起こす特徴もあって、かなり慎重に管理していく必要があるのだ。その上、ミームの管理にも素材という名の資源が大きく影響してくる。

もう、これで十分に本作の侮りがたさは伝わったと思う。不手際が積み重なると負のスパイラルが生まれ、地獄が顕現するような設計になっている。そんな特徴をまるで知らず、やさしい世界観の雰囲気を味わうゲームだと思った筆者は血の気が引く思いをすることになったのである。
そして、これらの特徴に気付き、問題へいかに先回りするかを考え始めて以降、筆者は時間泥棒という名のもうひとつの罠にハマるのだった。