キラキラしたタイトルロゴ。愛らしいアイドルたちのビジュアル。
『シャインポスト Be Your アイドル!』は、かわいいアイドルたちが歌って踊るのを楽しむゲームだと思っていた。
しかし、実際にプレイして飛び込んできた景色はまったく別物だった。
どんどん表情が曇り、メンタルを病んでいくアイドルたちの姿。
彼女たちが夢破れ、挫折していく様子がこれでもかと描かれるストーリー。
それによりプレイヤーは、自らの選択で彼女たちの人生をめちゃくちゃにしてしまった罪悪感を背負わされることになる。なんて胸が苦しいんだ……!!
「……開発陣に、人の心はあるのか?」
本作をプレイした筆者の第一声はこうだった。まさに「アイドルの曇らせ大図鑑」がそこにはあった。「闇のアイドル育成ゲーム」が爆誕してしまったのかと思った。
しかし、これこそ本作をプレイするうえで必要な儀式だった。この地獄を体験したからこそ、本気で彼女たちを応援したくなったとも言える。
そういう意味で、本作に登場するアイドルたちの「曇らせ顔」はとてもいい味を出している。絶望の表情が脳裏に焼き付いているからこそ、その後にやってくる彼女たちの笑顔がより輝いて見える。
このコントラストこそが、極上の味わいなのだ。ああ……たまらない。
文/竹中プレジデント
※この記事は『シャインポスト Be Your アイドル!』の魅力をもっと知ってもらいたいKONAMIさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
アイドルの「病み」は極上のスパイスである
このゲームに登場するアイドルたちは、めちゃくちゃ病む。いや……自分のプレイが下手くそすぎるだけかもしれないが、いつの間にかメンタルケアが必要な状態に陥っている。
ただ、この「病み」こそが、アイドルたちの魅力を極限まで増幅させる「スパイス」になっているのだ。
見てほしい。これがデビュー直後の彼女たちの姿だ。

アイドルデビューという夢への第一歩を踏み出せた喜びに満ち溢れ、その瞳はキラキラと輝いている。
「マネージャーさん! 私たち、がんばります!」
そんな声が聞こえてきそうだ。かわいい。じつにかわいい。この笑顔を守りたい。彼女たちの夢を叶えるため、導いてあげたい。誰しもそう思うだろう。
……だが、その考えは甘かった。

これが、デビューから2年後、心が折れてしまった彼女たちの姿だ。同じキャラクターとは思えないだろう。虚ろな目で虚空を見つめている。こうなってしまうと、いくら話しかけても、途切れ途切れの言葉しか返ってこない。
見ているだけで心が締めつけられる痛々しさだ……。しかし、この落差こそが本作の“味”なのである。
なぜ、彼女たちはここまで追い詰められてしまうのか。答えは、このゲームが彼女たちに課した、あまりにも無茶な目標になる。
それが「デビューから3年以内に武道館ライブを目指す」というものだ。当然、その道のりは平坦ではない。
しかも、彼女たちが所属する事務所は、設立したばかりの弱小プロダクションだ。所持金はわずか。楽曲や衣装の用意は一切なし。施設もまったく整っていない。ゲーム開始直後は、公園で泥だらけになりながらレッスンするアイドルを眺める有様である。
そう、本作のゲーム的な難度はわりと高めと言える。いきなり所属アイドルたちの夢を叶えることは難しいだろう。
そのため、我々プレイヤーはほぼ確実に目にすることになる。彼女たちが夢を追い、もがき、挫折し、夢破れる姿を……。
そして、なにより辛いのが、その過程が省略されずに描かれることだ。



夢破れた少女たちが、どんな表情で現実を受け止め、どんな想いを胸にそれぞれの人生に戻っていくのか。我々プレイヤーはその一部始終を強制的に見せつけられる。
彼女たちの人生で、もっとも輝くはずだった10代の3年間を、自分の選択によりめちゃくちゃにしてしまったという罪悪感を背負わされるのだ。
これが『シャインポスト Be Your アイドル!』がプレイヤーに与える最初の洗礼。この絶望を味わうことで、我々は誓うことになる。
「こんな思いは、二度とさせない……!」
「必ず彼女たちを武道館に連れて行く……!!」
一度地獄を見たことで、プレイヤーは本気で「マネージャー」となるわけだ。この通過儀礼こそ開発陣の狙いなのかもしれない。

そして、この曇らせ描写によって、アイドルたちの笑顔が、より魅力的に見えてくる。彼女たちを応援したくなる。好きになる。
まるで、よく冷えたスイカに塩を振りかけるように。塩のしょっぱさがスイカ本来の甘味を引き立てる。それと同じだ。「絶望」という名の塩によって、アイドルたちの「輝き」を、より強く感じさせてくれているのだ。
公式が謳う「経営シミュレーション」は、開発陣が仕掛けたトラップだと思う(妄想)
本作のジャンルは「アイドル×経営シミュレーション」。プレイヤーは、アイドル事務所の経営者として、事務所を経営しながらアイドルを育成していくことになる。
公式からの説明を見ても、アイドルのプロデュースがメインというよりも「経営シミュレーション」要素が強めに押し出されている印象だ。しかし、これこそ開発陣からの罠だったと、個人的には思っている(120%妄想です)。
どういうことか? 説明していこう。まずはシミュレーションパートのメイン画面を見てほしい。
画面右上に「経営力」「営業力」「企画力」「発信力」「育成力」「政治力」と、事務所のステータスが並んでいる。
ゲーム開始時点で並んでいるステータスは「オールF」。この画面を見たら、こう思うのが自然じゃないだろうか。
「なるほど。このステータスを上げていくのがゲームの目的なんだな」
KONAMIのシミュレーションゲームを嗜んできた人間ほど、そう考えるはずだ。事務所を強化していけば、所属アイドルの活動も幅ができて、彼女たちの輝かしい未来につながる。もっと端的に言えば「ゲーム的に有利になるはずだ」と。当然の理屈だ。
しかも、ステータスがFだったら、AやSを目指したくなるのがゲーマー心だろう。初見プレイの際、事務所のステータスをある程度重視してのプレイングとなったプレイヤーは少なくないのではないだろうか。
しかし、その考えこそ地獄への入り口。罠だ。というのも、このゲーム、事務所を発展させようとすればするほど、アイドルたちの夢を叶えにくいバランスになっているのだ。

先ほど触れたが、このゲームに登場するアイドルたちは、すぐに病む。……自分のプレイが下手くそすぎる説からは目を逸らしたい。
デビュー1年目は希望に満ち溢れているからか、放置していても楽しく過ごしている。しかし、2年目、3年目と「解散」というタイムリミットが近づくにつれ、どんどんメンタルが不安定に。びっくりするくらいの速度で病んでいく。
病んでしまうと「メンタル」の値が0になり、ライブパフォーマンスにものすごい悪影響を及ぼす。ライブの成否は武道館を目指すうえで非常に大事になるため、絶対に避けなければいけない状態だ。
そのため、プレイヤーは、適度にライブを開催してアイドルたちのモチベーションを維持したり、適度に話しかけて信頼を積み重ねていく必要がある。

ここでネックになってくるのが、「ライブ開催」にも「アイドルとの交流」にも、等しく1ターンかかるという点だ。
当然だが、事務所のステータスを上げようとすればするほど、アイドルたちを導く時間がなくなっていく。その先に待っているのは、病んだアイドルがライブに失敗して絶望する姿だ。
もちろん、実際にプレイすればこの仕組みについては容易に気づくだろう。しかし、初見プレイの際にはそうはいかない。
事務所経営とアイドルのメンタルケアに忙殺されて、なにもかもうまくいかないまま月日が過ぎ去っていく……それが筆者の1周目のすべてだった。同じ体験をした同志は、そこそこいるんじゃないだろうか?
「必ず一度は夢破れたアイドルの絶望した姿(曇らせ顔)をプレイヤーに見てもらう」という開発陣からのメッセージを感じずにはいられない。いや、きっとそうに決まっている。
あの「曇らせ顔」が脳裏に焼き付いているからこそ、武道館ライブは強烈なカタルシスを生む
本作に登場する23人のアイドルたちは全員が魅力的だ。かわいらしい。
そんな彼女たちが、アイドルが決してファンの前では見せないであろう表情で病んでいく姿は、言葉にできない辛さがある。正直、心が抉られる思いだ。
幾度もの失敗。数えきれないほど見せつけられた「曇らせ顔」。破産の危機を乗り越え、解散の悪夢を振り払い……我々はボロボロになりながらも、ついに運命の日を迎える。
デビューから3年目(事務所経営から5年目)。冬。日本武道館。
ステージに立つ彼女たちの姿からは、「かつて」夢破れ、絶望に叩き落とされた少女の面影はない。自信に満ち溢れ、ファンからの声援を一身に浴びて、キラキラと輝く「本物のアイドル」だ。
何度見ても、このゲームのライブシーンはよくできている。
歌う楽曲はもちろん、アイドルたちを彩る衣装、パフォーマンスの立ち位置など、プレイヤーが自由に設定できる。カメラワークもガチ仕様。アイドルたちの輝く姿を捉えて、まるで本物のライブ映像を見ているかのような臨場感を生み出している。
だが、この胸を締め付けるような感動の根源は、そういった技術的な作りこみだけではない。
もし、なんの苦労もなく、トントン拍子で武道館にたどり着けるようだったら、きっとこれほどの感動はなかった。アイドルたちに抱く感情も、ここまで大きなものにはなっていないだろう。
我々は、知っている。笑顔でパフォーマンスする彼女たちが、どれだけ悩み、苦しみ、涙を流してきたのかを。あの「曇らせ顔」が、脳裏に焼き付いている。絶望の淵にいた彼女たちの姿を知っている。
だからこそ……!!!!!!
マネージャーとして果たせなかった「責任」が、彼女たちを不幸にしてしまった「罪悪感」があるからこそ、これほどまでに強烈なカタルシスを生んでいるのだ。
本作に登場する23人のアイドルたちは全員が魅力的だ。かわいらしい(2度目)。
ただ、最初に彼女たちと出会ったときよりも、何倍も彼女たちのことが愛おしく、そして、心の底から「かわいい」と思っている自分がいる。
たしかに、本作は「アイドル曇らせ図鑑」のようなゲームだ。しかし、開発陣が本当に描きたかったのは、その先……。絶望という名の暗いトンネルを抜けた先にある、本物のまばゆい「光」だったのだろう。
登場する23人のアイドル以上に「幸せにしたい」と思った存在ができてしまった
本作に登場する23人のアイドルたちは全員が魅力的だ。かわいらしい(3度目)。しかし、そんな彼女たち以上に気になってしょうがない人物がいた。
それが和泉野 小夢(いずみの こゆめ)さん。彼女こそ『シャインポスト Be Your アイドル!』の隠しヒロインであると思っている(完全に個人の妄想)。
それこそ、このゲームの裏テーマが「小夢さんと幸せな未来を掴むギャルゲーだった」と言われても信じてしまうくらいには、小夢さんを推している自分がいる。
小夢さんは、ゲームの機能の説明をしてくれたり、ヒントを出してくれたり、いわゆるナビゲートキャラとして登場する。新米経営者の主人公をサポートしてくれる、プレイヤーにとって天使のような存在だ。
アイドルたちとの契約期間は3年。だが、小夢さんとの契約期間は5年。そう、我々と小夢さんは、どのアイドルよりも付き合いが長い。5年ものあいだ、苦楽をともにしていくことになるのだ。
そして、いつも明るく主人公をサポートしてくれる小夢さんだが、彼女と笑顔の結末を迎えるのは、武道館ライブを果たす以上に難しい。

じつは小夢さん、かつてアイドルとして武道館のステージに立った経験を持っていた。だからこそ、アイドルたちの悩みや苦しみを誰よりも理解していた。そして、彼女たちのがんばりをないがしろにする経営者を彼女は許さない。
たとえ1組を武道館ライブに導けたとしても、5年の契約期間を終えた彼女は主人公の前から去ってしまう。


嘘だろ……小夢さん……行かないでくれ……。
小夢さんとハッピーエンドを迎えるには、もうマネジメントするアイドル3組をすべて武道館に導くしかない……!
決意を胸にゲームを始める。事務所の発展は最低限でいい。資金も赤字にならないギリギリを攻める。アイドルとの交流を大事に、彼女たちの成長をなにより優先してマネジメントを行っていく。
その先にあるのは、笑顔で夢を叶えていくアイドルたちの姿だ。
するとどうなるか? 仕事終わりに一緒にご飯を食べに行ったり、手料理を振る舞ってくれるようになったり、小夢さんとの関係性も違ったものになっていく。
二人三脚で歩む主人公と小夢さんを見ていると、これはもう人生の伴侶なのでは……? 小夢さんが実質ヒロインなのでは……? と、勘違いしそうになる。
そして……。



やった。やったぞ。所属したアイドル全員の夢を導くことができた。誰も絶望の姿は見せていない。涙を流していたとしても、それはうれしさからくるものだ。
そして、3年連続で武道館ライブを果たした主人公の前には……。
小夢さんがいた。この表情、たまらない。5年の契約期間が終わってからも、小夢さんと一緒に過ごせるエンディングをやっと迎えることができた。ハッピーエンド!!完!!!
これから『シャインポスト Be Your アイドル!』をプレイする方は、ぜひ小夢さんとともに歩む人生を勝ち取ってほしい。
難易度ハードコア仕様の経営シミュレーションと噂の『シャインポスト Be Your アイドル!』だが、じつのところ数回プレイして仕様を把握すれば、その後のプレイは格段に楽になる。
アイドルたちは病むことなく順調に武道館ライブという夢に向かう。プレイヤーも事務所経営に忙殺されることもない。アイドルたちとの交流を楽しみながら、彼女たちを導いていける。


だが、あえて言わせてほしい。
もし、これから『シャインポスト Be Your アイドル!』をプレイするというなら、攻略情報は一切見ずに、己の直感に従ってプレイして、盛大に失敗してみてほしい。
事務所経営の難しさに頭を抱えてほしい。アイドルたちのメンタルケアに失敗してほしい。容赦なく突きつけられる「解散」の二文字に絶望してほしい。そして、忘れられない「曇らせ顔」を、その目に焼き付けてほしい。
そこで味わう「罪悪感」こそが、このゲームを忘れられない一本へと昇華させるはずだから。

しかしながら、本作は「Nintendo Switch 2」タイトルだ。本作をプレイするには、そのハードを手に入れるという試練を乗り越える必要がある。
もし、まだプレイ環境が整っていないなら……アニメ『シャインポスト』をおすすめしたい。全12話だから一瞬で観れる。詳細なネタバレは避けるが4話と6話がとくにいい。騙されたと思って6話まで。ぜひ。
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