10代の頃、とにかくゲームがしたかった。でも、お金はなかった。だからこそ本作に初めて出会ったときに感じた「こんな面白いゲームがタダで遊べていいのか!?」という衝撃は忘れられない。
そのタイトル画面で懐かしい音楽が流れているのを実際に聞いたとき、もうそれだけで懐かしさが爆発してしまった。最初にこのゲームをプレイしてから15年以上。『Ruina 廃都の物語 Remake』は、何もかも大きく変わっているのに、以前と変わらない手触りで、正直嬉しくてしょうがなかった。
タイトルに「Remake」の言葉が使われている通り、同作は2000年代の傑作フリーゲームのひとつとして名高い『Ruina 廃都の物語』のリメイク版だ。誤解のないよう言っておくと、本リメイクはSteamでの販売を目的としたもので、無料でプレイできるフリーゲームというわけではない。
同作はRPGツクールによって制作され、「ゲームブック風」という特徴的なゲームシステムや、さまざまな神話やファンタジー作品にインスパイアされた雰囲気たっぷりの世界観、さながらTRPGの名GMのような語りの巧みさなどによって、当時”おすすめのフリーゲーム”が話題に登ったときには、必ずと言っていいほど名前が挙げられていたようなタイトルだ。
本作のリメイクが発表されたのは2022年のこと。実はその翌年の2023年にもTGSで試遊版が出展されていたらしいのだが、公式からの日本向け発表がほとんどなかったせいで、筆者は会期中そのことに気づけず、あとから知って悔しい思いをしていたのだ。
それを今年、ついにプレイすることができた。
リメイク版は、ビジュアルや演出面などが大幅にブラッシュアップされつつも、原作版のコアな要素はそのまま。変更されているイラストなども丁寧に原作の雰囲気が再現されており、個人的にはたいへん満足な内容だった。
今回は物語の導入に当たる最初のマップでボスを倒すまで+αがプレイできたので、その模様をお届けする。プレイ動画の撮影も許可していただいたので、そちらについても以下にご案内しておこう。もちろん、TGSに参加できる方には、ぜひ本作に実際に触れてみることをおすすめしたい。
本作は【ホール10】C03のWhisperGamesブースにて展示されている。
執筆/恵那
ゲームブックやTRPGのようなシステムの名作フリーゲーム
本題に入る前に、まず本作のリメイク元である『Ruina 廃都の物語』について簡単に触れさせてほしい。
同作の特徴は、「ゲームブック風」あるいは「TRPG風」とでも呼ぶべき独特なシステムだ。画像や動画で見てもらうのがわかりやすいが、いわゆる『ドラクエ』以降の”キャラクターがフィールドマップを歩き回って冒険していく”というタイプのRPGとは大きく違うゲームだ。

『Ruina』では一枚絵のマップ上に置かれた探索ポイントを選択していく形で冒険が進行していき、ポイントごとにイベントが発生。その際に選ぶ選択肢によって展開も変化していく。
言ってみれば本作の冒険はすべてイベントと決断の連続であり、RPGの一番濃い部分だけを延々と味わい続けることができるゲームなのだ。
未プレイの方は「フィールドマップがない」というのはかなりヘンに感じるかもしれないのだが、本作ではそのかわりにテキストによる語りや、随所に登場する一枚イラストなどが物語の体験を彩ってくれる。このあたりはTRPGなどをプレイしたことがある人ならイメージしやすいだろう。
RPG的な要素とビジュアルノベル的な要素を絶妙な塩梅で織り交ぜたようなゲームとも言え、自分自身がまさしく物語の1ページになるようなプレイ体験が、本作の最も特徴的なところだ。

ビジュアルは綺麗に現代ナイズ、中身はあの頃のままの『Ruina』
今回プレイできたリメイク版についてざっくり感想をお話すると、原作版のコアなポイントはそっくりそのまま、ビジュアルやUIだけをしっかり現代ナイズしているタイトルだというのが筆者の所感だ。
そのため、ゲームのプレイフィールはびっくりするほど原作版そのままだ。というか音楽はかなりの部分が原作タイトルと同じものを使っているらしく、そこかしこで懐かしの音楽が聞こえてくるので、ちょっと泣きそうになってしまった。

今回のプレイでは物語の導入部に当たる「滝の洞窟」のクリアまで+αをプレイ。
今作では主人公の容姿は既存の画像から選択する形式ではなく、複数のパーツを組み合わせることである程度キャラクリができるようになっている。カラーが鮮やかになったことで、原作のレトロ風な雰囲気は弱まってしまったが、目や髪色などはよりはっきり分かるようになっている。
で、肝心のプレイは本当に「Ruinaじゃんこれ!」という感想に尽きる。一部のスキルなどは変更されているようなのだが、戦闘から探索までぜんぶ『Ruina』の味がするのだ。
たとえば同じシーンを原作版と比較してみると、ビジュアルが大きく変化している様子がわかる。こちらはマップ画像だが、原作版の味のある古地図のような風味は残しつつも、リメイク版では色合いがはっきりとして画像としてより精細になっている。ただ、マップの形が変わっているわけではない。

1点変わっていたのが、「TTEXPの表示」がなくなっていたことだ。
これについては前回の試遊版を遊んだ方の感想の中にそうしたコメントがあったので気になっていたのだが、進めてみると「滝の洞窟」クリア後に表示されるようになっていた。23年版は洞窟クリアまでだったようなので、その関係で一切登場しなかったのだろう。
わからない人のために簡単に説明しておくと、「TTEXP」は町に帰還せず連続で探索を続けたプレイヤーに対するボーナスのようなもので、長く探索を続けるほど主人公のジョブを強化するポイントが得られるのだ。
昔取ったなんとやらで、無事にこのマップのボスである”キーパー”まで到達。あれ、なんか名前変わった……?
こちらもリメイク前と比較すると、かなり近い雰囲気で敵キャラが再現されていることがわかる。戦闘シーンも基本的なシステムは原作と同じコマンドバトル形式だが、敵キャラにアニメーションが入っているなど演出もリッチになっているほか、敵のHPが表示されるようになっている。戦闘の手探り感が緩和されるため、個人的には嬉しいポイントだ。

洞窟をクリア後には酒場でパーティ編成ができるようになるので、キャラクターも何人かご紹介しよう。キャラクターたちのビジュアルも元イラストの雰囲気を感じさせつつブラッシュアップされている。
個人的には掘れば掘るほどやんちゃでお茶目な面が次々に飛び出してくる隻腕のいぶし銀、ラバン先生がいい感じのナイスおじいちゃんになっていたことが良ポイント。たしかにこれならパンツも脱ぎそう。
プレイの最後には大長虫に挑戦。男性陣が戦闘不能に陥るなか、ネルさんの奮闘により撃破に成功。
討伐後にちゃんと金色猫・ピートにも合うことができた。体験版なので残念ながらショップは開かれていなかったが、相変わらずトボけた感じで出迎えてくれた。また来るからな。
なお、今回の試遊で筆者は序盤のストーリーをプレイしたが、ストーリー中盤ごろに挑戦することになる「宮殿」マップにも挑戦することができるようだ。こちらでも懐かしの面々に会えそうなので、TGSに参加される方はぜひこちらも遊んでみてほしい。
みているよ