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『メイプルストーリー』はなぜ22年目で過去最高を記録したのか? 守りから攻めへ──ネクソンの2025年度売上収益が過去最高を更新【キャピタル・マーケット・ブリーフィング2026レポート】

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ネクソンの成長促進戦略を支える5つのマトリックス

2024年に行われた「キャピタル・マーケット・ブリーフィング」以降、うまくいかなかった点を掘り下げると、『アラド戦記モバイル』は2024年に非常に良い推進力を持ってローンチされたが、その後失速している。リテンション設計も、プレイヤーを長期的に維持するためには十分ではなかった。『The First Descendant』も同様に、発売当初は好評だったものの、その後勢いは続かなかった。

これらはパッチなどで解決できるような問題ではなく、ゲームメカニクスの構造的な見直しが必要になるものだ。新規プロジェクトの開発にも遅れが生じ、その結果売上高の伸びが鈍化している。

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ネクソンCEOのイ・ジョンホン氏。

逆にうまくいったものもたくさんあった。2025年に『メイプルストーリー』フランチャイズは、前年比43パーセントの成長を達成し、22年という歴史上最高の売上収益を記録している。これは、韓国内でPC版の回復と、『MapleStory Worlds』による地域展開、全く新しい体験を提供する『MapleStory: Idle RPG』によって牽引されたものである。『メイプルストーリー』の収益の約40パーセントは、コア市場である韓国以外から得たものとなっている。

『アラド戦記』フランチャイズでは、PC版の回復によって前年比30パーセントの成長を達成。中国版では2桁の売上成長を記録し、韓国ではPC版の売上収益が前年比100パーセントを超える成長となっており、サービス開始20周年で過去最高記録を達成している。

2025年に韓国でリリースされた『マビノギモバイル』は、前年比4倍の成長を達成。フランチャイズの成長を促進する同社の能力を証明している。『ARC Raiders』は、グローバルIPを生み出する能力があることを示すことができた。この成功は、同社にとっても大規模な市場拡大を可能にする開発や運用を確認するチャンスでもあったのだ。

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『メイプルストーリー』は、フランチャイズ展開による成長促進戦略の主力IPであり、会社全体のIP成長の構想にもなっている。こちらは、シンプルな疑問から始まったものだった。過去22年間で、何千万人のプレイヤーが『メイプルストーリー』フランチャイズに触れてきたが、彼らは今どこにいるのだろうか?

そのような観点から、同社ではコアユーザーを活性化し、休眠中のプレイヤーを呼び戻し、新規プレイヤーを惹きつけるためのマトリックスを開発している。このマトリックスには5つのカテゴリーが設定されている。「コア拡張」はPC版の体験を強化するものだ。

「クラシック拡張」はノスタルジーと『MapleStory Worlds』のUGC機能のような新メカニクスを融合するものである。「ライト拡張」は、『MapleStory: Idle RPG』で実現した親しみやすいカジュアルな体験を提供するものだ。

「フロンティア拡張」は、『MapleStory: Idle RPG』のブロックチェーン技術のような全く新しいコンセプトを実験的に導入しているものとなっている。「ディフィニティブ拡張」は、熱心なプレイヤーに向けてより深く専念された体験を提供する戦略である。

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『メイプルストーリー』が成功した理由のひとつに、ハイパーローカライゼーションがある。これは単なる翻訳にとどまらず、現地の思考に合わせてコンテンツの調整を行い、プレイヤー間のコミュニティ意識を育むプロセスとなっている。2025年に『メイプルストーリー』が最高の売上収益を記録したという成果は、数十年にわたって運営されてきたフランチャイズであっても、成長することができることを示したものとなったのだ。

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大型アップデートや休眠プレイヤーの呼び戻しでフランチャイズが成長

PC版の『メイプルストーリー』における当初の最優先課題は、韓国での立て直しであった。コンテンツのアップデートやゲーム運営、コミュニティの運営を通じてユーザーへの関与や新規ユーザーの獲得に集中している。そのひとつが、昨年末に実施された冬の大型アップデートの「ASSEMBLE」だ。

韓国のソウルで開催されたイベントには、数千人の観客が集合。そして、このアップデートにより、ユーザーとも有効な関係性を構築することができ、エンゲージメントも確認することができたのである。

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同社のUGCプラットフォームである『MapleStory Worlds』は、長年のプレイヤーにはそれぞれお気に入りの時代や体験したい遊び方があるという、シンプルな気づきからスタートしたものだ。マップやキャラクター、アート、音楽などの多様なゲーム制作ツールやアセットを提供。プレイヤー自身が、『メイプルストーリー』の世界で自分だけのオリジナル体験を構築することができるようになっている。

そして、この戦略は実際の成果にも繋がっている。『MapleStory Worlds』は、休眠中のプレイヤーを呼び戻している。2025年には、グローバルユーザー数が700万人を突破。韓国内では、ユーザーの81パーセントが過去の『メイプルストーリー』から着想を得たコンテンツをプレイしている

その中の91パーセントは、過去にPC版をプレイしており、61パーセントは初回の参加が15年以上前のユーザーであった。

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もうひとつの成長の取り組みとして、昨年韓国でローンチした『MapleStory: Idle RPG』がある。こちらは、ライト拡張として、参入のしやすさや分かりやすいキャラクター成長、ストレスの少ないプレイ体験という特徴を持っている。ショート動画で『メイプルストーリー』の中核的な部分を、短く手軽に体験できるようにしたようなものだ。

『MapleStory: Idle RPG』の効果はすぐに現れており、なおかつ継続性のあるものとなっていた。PC版やモバイル版のいずれも遊んだことのない新規ユーザーが半数以上を占めており、全般的に年齢も低くなっている。『MapleStory: Idle RPG』は顕著なモメンタムも維持しており、フランチャイズとしても継続的に収益に貢献するタイトルとして定着しつつある。

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2026年は、『メイプルストーリー』フランチャイズのさらなる成長が見込まれる。韓国PC版は成長継続し、ハイパーローカライゼーションを通じてグローバルPC版も成長していく見込みだ。さらに、『MapleStory Worlds』と『MapleStory: Idle RPG』でも新たな地域とフォーマットの拡大が予定されている。

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『アラド戦記』フランチャイズでも新作タイトルを複数投入

『メイプルストーリー』で使われた成長戦略の設計図を、同社のもうひとつの大型タイトルである『アラド戦記』に適用することで、再活性化を図ることができたのだろうか。2026年、『アラド戦記』ではふたつの優先課題を設定している。

ひとつは『アラド戦記モバイル』のパフォーマンス改善だ。もうひとつは、『メイプルストーリー』の成功モデルを起用し、コアユーザーの活性化と新規ユーザー獲得に向けた新作・新体験でフランチャイズを拡大していくことである。

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モバイル版の足元の課題は、2024年の中国ローンチ後に急速に減速してしまったことだ。これは品質面の問題ではなく設計上の問題であった。プレイヤーの熱量を維持できない弱いモチベーションサイクルにより、離脱が進んでしまったのである。そして、これは短期間で解決できるものでもない。

その第一ステップは、ハイパーローカライゼーションだ。といっても、コンテンツをただ増やすだけでは長期的なエンゲージメントを改善することはできない。中核となる戦闘システムと報酬についても、構造的な見直しや改善を進めていかなくてはならない。また、中国のパブリッシングパートナーであるテンセントとの共同開発を通じて、制作体制も強化していく

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『アラド戦記』フランチャイズに拡大では、コアとなるPC版が4月に中国で大型の新シーズンが予定されている。そちらに合わせて、バトルロイヤルのような新しいゲーム体験も準備中だ。新規プレイヤー獲得向けに、導入部分と序盤の体験をシンプルにすることで、ゲームに入りやすくしている。また、『メイプルストーリー』と同様に、フランチャイズを複数の形で展開していく予定だ。

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ひとつ目は、『Dungeon&Fighter:Idle RPG』だ。こちらは、『MapleStory: Idle RPG』と同様にカジュアルなものとなっており、こちらで楽しめる体験を通じてフランチャイズの新たな成長機会をもたらすことが期待されている。こちらは今年リリースの予定で、現在準備中だ。

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来年リリース予定のタイトルが、『Dungeon&Fighter Classic』である。こちらは2009年に発売されたタイトルのリブートで、『アラド戦記』フランチャイズの中でも、最も熱量の高い時代のひとつとして認識されている。オリジナルのアクション体験を現代的なUXで再構築してリリースされる予定だ。

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それらに合わせてグローバルにIP展開していくための、中長期的な戦略も進めている。その第1弾が『The First Berserker: Khazan』だ。こちらは2025年にリリースされたタイトルで、欧米市場に合わせたハードコアアクション体験を提供している。現在中国でのローンチも準備中で、これにより長期的なポテンシャルを検証していく予定だ。

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新しい市場とプラットフォームに向けたもうひとつの取り組みが、『Dungeon&Fighter:ARAD』だ。こちらは、PCとコンソール、モバイル向けに開発中で、若年層でよりカジュアルなグローバルユーザーの獲得を狙ったタイトルとなっている。

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『Dungeon&Fighter:ARAD』の初期のコンセプト映像より。

『PROJECT OVERKILL』は、PCとコンソール向けのオンラインRPGで、戦闘やビジュアル、そして全体的な表現を現代化しつつも、『アラド戦記』の象徴とも言えるレイドやダンジョン、協力プレイを再解釈したタイトルとなっている。本作の初期テストでは、プレイヤーからも強い関心が得られた。

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『アラド戦記』フランチャイズの成長を引き出す戦略は、複数にまたがっている。そして、それらが同時に進められているのだ。プラットフォームでは、PC、コンソール、モバイル全般に広げていく。ジャンルでは、クラシックな横スクロールからハードコアアクション、オープンワールドRPG、放置系にいたるまで、多角化を図っていく。

地域面では、韓国や中国だけにとどまらず、グローバル市場での成長を見込んでいる。プレイヤーセグメントでは、コアなベテラン層から新規、カジュアル層までカバーし、裾野の拡大を図っていく。

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『Vindictus:Defying Fate』や『NAKWON:Last Paradise』など期待の新作も続々登場

21年の歴史を持ち、グローバルで1億以上のユーザーがプレイしたネクソンのフランチャイズ『マビノギ』にも同様の計画がある。韓国では昨年モバイル版の『マビノギモバイル』がリリースされたが、こちらでも成長のポテンシャルを改めて示している。この『マビノギモバイル』は、今年台湾と日本でもリリースされる予定だ。

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コアとなる大型のエンジンアップデートにより、現代化した「マビノギ エタニティプロジェクト」。そして、PCとコンソール向けのアクション体験となる、『Vindictus:Defying Fate』といったタイトルも用意されている。

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『Vindictus:Defying Fate』のトレーラーより。

『FC』フランチャイズでは、2026年にワールドカップが開催されるため大規模で熱量の高いコミュニティが活用できる機会にもなっている。そちらを利用して、ユーザーとの接点を増やし、PCとモバイル、そして韓国でナンバーワンのポータルであるNAVERのプラットフォーム間の相乗効果を生み出すための投資を進めていく。

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『ARC Raiders』では、エンゲージメントの維持の重要性を踏まえて、ローンチ時点から十分なコンテンツの投入計画を長期的に用意している。その結果、これまでの5ヵ月にわたりプレイヤーの関心を維持し、追加的な販売拡大にも貢献している。

今後の計画としては、詳細は明らかにされなかったものの複数の新しいプロジェクトが進行中だ。また、『ARC Raiders』で確立した成功モデルを生かすことも考えている。

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既存のフランチャイズにくわえて、同社のパイプラインにはグローバルのポテンシャルを持つ新しいIPも含まれている。その代表となるのが、『NAKWON:Last Paradise』だ。こちらは崩壊後の都市を舞台にした、マルチプレイヤーのサバイバルゲームである。

直近で行われたクローズドαテストでは、同時接続のプレイヤーが3万7000人を超えた。それを受けて、グローバル市場でも競争力があると考え、2027年のリリースを目標に準備を進めている。

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『NAKWON:Last Paradise』のトレーラーより。

パイプラインに関連して、事業拡大に繋がるパートナーシップについても紹介が行われた。中国では、テンセントと関係を築いてきており、『アラド戦記』を支えてきた。近年では、『THE FINALS』や『ARC Raiders』、『The First Berserker: Khazan』と言ったポテンシャルの高いタイトルをリリースするためにパブリッシング契約を結んでいる。

さらに、Blizzard Entertainmentとも連携し年内に『オーバーウォッチ』のパブリッシングを行う契約も発表している。ここまでが、現在開発中のパイプラインの一部のタイトルである。

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AI戦略では、ゲームの開発から運用サポートまで、全てのプロセスにおいて一気通貫で拡大する改革として『Mono Lake』が使われている。同社では以前からAIツールを活用しているが、すでに単なるツールの段階ではなくすべての文脈をあらゆる業務に適用しているフェーズに移行している。そして、この『Mono Lake』は、全ての領域でインサイトを活用可能にするものだ。

全ての開発者やライブ運用チーム、あらゆる意志決定が数十年にわたって蓄積されてきたデータにアクセスできるようになる。開発者やライブサービスのチームが入力する時間を減らし、考える時間を増やすということができる。これにより働き方も変わってくる。同社の方法論としては、クリエイティブに集中できるようにすることだ。

そして、その意志決定は「CONTEXT」によって導かれて何十億ものプレイヤーの意思決定が蓄積されたものである。

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ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。
編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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