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『メイプルストーリー』はなぜ22年目で過去最高を記録したのか? 守りから攻めへ──ネクソンの2025年度売上収益が過去最高を更新【キャピタル・マーケット・ブリーフィング2026レポート】

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2026年は『メイプルストーリー』の成長とワールドカップが『FC』の追い風に

同社の直近の業績では、2025年は通期売上収益4751億円と過去最高を更新。主力タイトルの『メイプルストーリー』や『アラド戦記』PC版の回復に加えて、『ARC Raiders』の大ヒット、『マビノギモバイル』や『MapleStory: Idle RPG』といった新作が牽引している。

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ネクソンCFOの植村士朗氏。

その一方で、営業利益は横ばいだ。こちらは、ロイヤリティ費用やプラットフォーム手数料、クラウド費用、マーケティング費用、人件費の増加に加えて、2025年度から繰り越された多額の繰延収益の影響によるものだ。近年の成長戦略でポートフォリオの多様化は進んだものの、営業利益マージンの成長は十分とは言えない状況であった。

現在はプロダクトポートフォリオの全面的な見直しを行い、各タイトルが一定の利益貢献基準を満たすようにコスト管理を徹底していく。そして、多くの売上が直接利益の増加と利益率の改善に繋がることを目指している。

こうした取り組みの効果が現れるには、一定の時間が必要だ。だが、着実に進展しており2026年は売上収益と営業利益のどちらも前年比で成長することを見込んでいる。『ARC Raiders』の売上収益により、営業利益率の改善も見込まれる。

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『メイプルストーリー』フランチャイズでは、2025年は前年比43パーセント増と大きく成長し、過去最高の売上収益を達成している。PC版の回復に加えて、『MapleStory Worlds』や『MapleStory: Idle RPG』といったフランチャイズ展開が成功している。2026年も勢いは継続し、二桁成長で過去最高の売上収益を更新する見込みだ。

PC版は昨年の大幅な成長に続き、コンテンツアップデートとハイパーローカライゼーションによってさらなる成長が見込める。『MapleStory Worlds』は安定推移。『MapleStory: Idle RPG』は、フランチャイズ成長の、重要なドライバーになる。

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『アラド戦記』フランチャイズは、2024年は中国でのモバイル展開によって成長。2025年はPC版が回復したものの、バイル版の落ち込みによって全体では減収となっている。2026年は、PC版は安定推移。モバイル版は立て直しとなり、フランチャイズ全体では前年比で微減する予想だ。

だが、2026年後半には『アラド戦記』の放置系ゲームなどのフランチャイズ展開によって、新たな成長フェーズが始まると見込んでいる。また2027年以降も、『Dungeon&Fighter:ARAD』や『OVERKILL』、『Dungeon&Fighter Classic』などが投入されることで、成長が加速していくと思われる。

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『FC』フランチャイズは、ワールドカップに連動した収益サイクルの傾向がある。2022年のワールドカップの追い風を受けて、2023年は過去最高の売上収益を記録している。そのため、2026年はワールドカップ効果により前年比で一桁成長が見込まれる

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これらを踏まえて、3大フランチャイズの合計売上収益は2025年の3315億円から2026年には一桁台の増加を見込んでいる。『メイプルストーリー』の成長に加えて、『FC』のワールドカップの追い風が成長を牽引する見通しだ。

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その他の新作ゲームなどについては、2025年の売上収益は『マビノギモバイル』と世界的な大ヒットを記録した『ARC Raiders』の成功で、全体で約25パーセント増加した。2026年は売上収益が2桁成長することを見込んでいる

『マビノギ』フランチャイズでは、2026年に売上収益の減少を見込んでいる。PC版は安定推移。モバイル版は売上収益が落ち着いてくることが予想される。しかし、上半期には日本と台湾でモバイル版がリリースされる予定だ。

『ARC Raiders』は買い切り型のため、発売直後に売り上げが集中する傾向にある。しかし、継続的なコンテンツアップデートによって、販売は顕著に推移。累計販売本数の増加によって、ゲーム内課金の基盤拡大が期待される

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同社の変革のコアとなるコストの見込みでは、人件費は厳格な採用計画と管理、リソース再配分によってコントロールすることで、2026年は前年比で横ばいになる見込みだ。これによって、売上収益に占める人件費の割合が低下。収益性改善にも寄与する見通しである。

マーケティング費用も前年並みを想定。グローバル展開の進展に伴うコスト構造の変化から、変動費は増加傾向にある。従来は収益の大半が中国と韓国からであったが、グローバルタイトルの成功でプラットフォーム利用料などの外部コストが増加する見込みだ。クラウド費用も増加する見通しである。

『FC』フランチャイズや外部デベロッパーと共同開発をしている『MapleStory: Idle RPG』の売上収益増加にともない、ロイヤリティ費用の増加も見込んでいる。

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2026年の主な重点施策は『アラド戦記モバイル』の立て直しと『メイプルストーリー』フランチャイズの成長維持、ワールドカップを活かした韓国の『FC』コミュニティの拡大、コスト規律の徹底による収益構造の強化、ROIベースの開発評価導入による収益性の高い組織の構築だ。これらを通じて、継続的成長を可能とする強固な収益モデルを目指していく。

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2019年以降、同社は自己株式の取得を通じて約3800億円を株主に還元してきた。取得した約1億5000万株を消却。株主還元方針に変更はなく、減損損失と一過性のコストを除いた前年度の営業利益を基準に、少なくとも33パーセントを還元していく。

実際はそれを上回る水準で還元しており、2023年は前年営業利益の79パーセントにあたる859円、2024年は50パーセントにあたり700億円、2025年は95パーセントにあたる1326億円を還元している。2025年には、1株あたり配当金を22.5円から45円へと倍増し、約1000億円規模の自己株式取得を実施している。2026年は、1株あたり年間配当60円を予定している。

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ネクソンの取り組みはまだ始まったばかり

ゲーム業界は現在、パトリック氏がこの25年間で見てきた中でも前例のない変化の真っ只中にあるという。ゲームの開発方法や運営の在り方、プレイヤーとの繋がり方が多くの企業が対応しきれないほどのスピードで変化してきているのだ。

このような局面において何が起きるか、過去の歴史が示している。ブレイクスルーは必ずしも最も多くのリソースを持つ企業から生まれるとは限らない。変化をいち早く捉えて、その変化を取り込み、実際の価値として具現化できる企業から生まれるのだ。そして、ネクソンはそれを実現できる位置にあるとパトリック氏は語る。

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ネクソンの経営人は何が問われているかを明確に理解しており、これまでにないスピード感と危機感を持ってこうした課題に取り組んでいるのだ。今回発表されたものは、単なる立て直しの話ではない。より強い意志とスピード、そして規律を持って前進することを決断した企業なのだ。

パトリック氏は、これまでも新たな挑戦の起ち上げに関わってきた。守りから攻めへと転じて、本格的に価値創出に向かう組織がどのような動きをするのかも理解しているのだ。そしてネクソンはまさにその段階にあり、自分たちの取り組みはまだ始まったばかりであると述べ、今回のイベントを締めくくった。

今回の「キャピタル・マーケット・ブリーフィング2026」は、投資家やアナリスト向けということもあり、どちらかというと企業の運営面での話がメインであった。そうした中で、複数の新作タイトルの話題も飛び出し、今後の活躍にも期待が持てそうだ。気になるゲームの情報については、今後の続報を楽しみに待とう。

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ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。
編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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