【ネタバレあり】バラバラの展示がひとつに収束する「2周目」が超おもしろい
展示も終盤になると、さらに不思議なものが現れてきます。そのひとつがこれ、鯉のぼり。
これが鯉のぼりであることは、誰がどう見たって明らかだと思うのですが、キャプションによれば「魚モチーフの飾り」……?
もう少し進むとわかってくるのですが、どうやらこの展覧会、現実の世界でごく当たり前に存在しているものが、いくつか欠落してしまっているらしい。いつの間にか紛れ込んでいた記憶の逆で、あるはずの記憶が「ない」ことになっている。
展示会の最終部に置かれていたのは、これまたごく普通の腕時計。
ですがこれも「見慣れない記号のある時計」として珍品扱いされて展示されていたりする。上から下から、矯めつ眇めつしてはみるものの、この時計自体にまったくおかしなところはない。
なんとなく「フーン、そういうことね」という意図は分かるものの、それについての理由はまったく説明されないため、これも違和感だけが残ります。
とまれ、そうこうするうちに展示もいよいよ終わりを迎えます。写真を撮ったりしていたこともありますが、じっくりとゆっくり見て回って、およそ2時間弱といったところでしょうか。なんだか、ずいぶん長いあいだここにいたような気がする……。
……。
……。
──えっ!?
ええっ!?!?(ひらめきが走る音)
すごいことに気がついてしまったかも知れない。いやこれ勘違いじゃないよね……?
さっきの展示では、普通の時計が「見慣れない記号のある時計」扱いされていた。つまり、この展覧会の世界には数字が──アラビア数字が存在しないのでは……?
楽しい2周目の始まりです。
勘違いじゃない。
この世界にはアラビア数字が存在しない。この展覧会の世界、いつのまにか現実の世界じゃなくなっている。
よくよく見返してみると、これまで数字が出そうな展示では、すべて漢数字か、ローマ数字が使われていたんですよ。なんならさっきの冷蔵庫に貼られていたチラシさえ、数字はすべて漢数字でした。
こいつらのウソってとんでもなく丁寧なんだよ……!
そしてもう1箇所、絶対に数字が使われるべきところには、違う記号があった。よく観察していれば気づいても全くおかしくないはずなのに、見落としてしまっていた。
そう、各章が始まる際の展示パネルです。
「変なマークだなあ」くらいに思っていたというか、そもそも意識していなかった。見てなかっただけで、答えは最初からそこにあった。
──そういえばこんな記号、ほかにもどこかで見たような……?
とまあ、ざっくりお伝えすると2周目はこんな感じです。
1周目で得た知識によって、同じはずの風景がまったく違って見えてきます。
とはいえ本展覧会は謎解きゲームではありません。
これまで繰り返してきたように、本展示はひとつの物語によって貫かれています。そしてこの物語こそ、本作の展示全体の軸になっているのです。
アラビア数字のギミックも、「この世界って実は……?」を促すきっかけにはなっているのですが、基本的には展示をじっくり追えば、物語を理解するのにまったく支障はありません。2周目の展示、「ここってこんな考察の余地があるんじゃないの……!?」というひらめきが無限に湧いてくる。
「この展示なんなん?」と思っていたものや、そもそも意識さえしていなかったものが、2周目だとおもしろいように繋がってゆく。個人的には、1周目の際には流し見してしまっていたアルバムに、とある1ページを見つけた瞬間が最高でした。そりゃあないわけないんだよなあ!
「この展示ってそういう意味だったの!?」「ここで言及されてるこのひとたちって、もしかして……!?」という発見が、どんどん出てくる。そうすると「どこを探すとなにか出てきそうか」が分かるので、ネタバレ状態で見る「記憶汚染展」2周目は、1周目とはまったくベクトルが違うおもしろさになります。
1周目がちょっと不気味なホラー展覧会だとすれば、2周目はミステリーの解答編。1周目でひっかかった展示もそうでない展示も、見直してみれば新たな発見が転がっているかもしれません。もしまだ展覧会に行かれていない方は、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
「記憶汚染展」は2026年8月2日から9月6日まで、東京・渋谷にあるBEAMギャラリー4Fにて開催中です。












