一番好きな敵は「まだ言えない」。ゲーム発売まで語れない情報は数あれど「巌流の篭手」には注目してほしい
──本作には歴史的な登場人物や、妖怪をモチーフにした幻魔などが登場します。よければおふたりの「一番好きな敵」をお聞かせください。
門脇氏:
私が一番好きな敵は、まだ言えない敵ですね(笑)。
二瓶氏:
本作には、公開されていない敵がたくさんいるんですよ。僕らが「このボス、めっちゃよくできてるし魅力的だな」と思っていても、まだお見せできていないんです。
そんなボスをユーザーさんに届けるのを後にして、楽しみを取っといてほしいと思っているんです。もしかしたら発売前のPVなどで新しい敵を見ることができるかもしれないので、気になる方はそういった部分もチェックしてみてください。

今言える範囲だと、やっぱり巌流は一番時間をかけて作った強敵なので、思い入れがあります。ゲーム中でも巌流とは複数回戦うことを想定していて、まだ登場していない変化を遂げたりもします。
門脇氏:
そこは楽しみにしてほしいですね。実は僕も、「巌流」って言いたかったんです。もしかしたら過去言ってるかもしれない。でも、二瓶さんとかぶるから避けました(笑)。
二瓶氏:
たしかに(笑)。
──巌流が物語にどのような影響を及ぼすのかっていうのは、さすがにまだ言えないですよね……?
門脇氏:
はい、まだ言えないですね。でもひとつだけヒントを出しましょう。「武蔵の籠手のなかに女性がいるのに、巌流の籠手のなかにはいないんですか」というのは、これまで聞かれたことないですよね?

二瓶氏:
たしかに、まだないですね。
門脇氏:
それがヒントです(笑)。
──武蔵と巌流の因縁を盛り上げるために、ディレクションで気を使ったことなどがあれば、お聞かせください。
二瓶氏:
このふたりのやりとりには、私の趣味が入っているかもしれません。実は私、『クローズ』という映画がすごく好きなんです。主人公たちの「悪っぽさがありながら、めちゃくちゃかっこいい」というところが、本作にもエッセンスとして入っています。

巌流とか武蔵もちょっと素行が悪い不良っぽさがありますよね。また、一概に不良と言ってもチンピラ、ヤンキー、インテリヤクザみたいなグラデーションがあって、そういった要素が入っているキャラクターがいます。
まだ公開していないボスに関しても、そういう要素がちょっと入っているので楽しみにしてもらいたいです。あとは、ちょっと極道のような雰囲気を持ったキャラも、いるかもしれません。
京都をモデルにしつつも、ゲーム体験のためなら史実は脇に置く。それでも、モデルへのリスペクトは欠かさない
──本作のマップは、京都の町を再現しつつ、要所要所でデフォルメされているように感じました。こういったマップの作り方は、架空のマップを作る時と比べて、どちらが大変だったのでしょうか。
二瓶氏:
架空のマップを作る方が楽だと思います。とはいえ、現実にある街を使うからこその迫力とか、没入感、「自分が行った場所を体験できる」という感覚は、やっぱりリアルに存在してるものだからこそ得られた体験なので、ゲームに落とし込めて良かったです。
苦労した点でいうと、最初は京都の街の実寸でマップを作ろうとしていたですが「めっちゃ歩くのしんどい」となりました。なので、ぎゅっと半分ぐらいにしたんですけど、単純に街を小さくすると建物も同じように縮んでしまって、迫力がなくなったんです。
だから、移動距離はぎゅっと縮めてるんですけど、建物はほぼ実寸で再現しました。迫力がある大きさ、高さっていうのは、そういうところをゲームで遊びながらカスタマイズして作ったっていうのが、結構苦労した点でもありながら、いいものにできたという実感があります。
ゲーム内で再現した建築物のなかのひとつ、建仁寺には「双龍図」という、有名な2体の龍が描かれてる天井があるんですけど、この絵は2002年に描かれたもので、江戸時代初期にはなかったんですよ。けど、ゲームでは再現しています。
「江戸時代の再現」っていうことにこだわるのであれば、当時存在しなかったものはゲーム内でも存在しない方がいいんですけど、僕らのこだわりとしては「ゲームで得た体験と、実際に行ってみた時に同じものがある」という感動もしてほしかったんです。
双龍図のある建仁寺を知っている人がゲームをプレイして、「龍いないじゃん」と思うよりは、その当時なかったとしても、今を生きているプレイヤーの人に楽しんでもらいたいんです。そうした考えのもと、ゲームではリアルとフィクションのさじ加減を調整しながら作ってきました。
──正確な再現のみにこだわるのではなく、より遊んだ方が楽しめるよう作られたんですね。
二瓶氏:
なるべく実寸に近い建造物にしたりとか。デフォルメとか、現実の縮尺とかに合わせた建物のものにしたりっていうのは、意識してやってました。
門脇氏:
表現としては「道のりだけがデフォルメされてる」に近いかもしれません。
──ゲーム内で訪れることができる「安井金比羅」は縁結び、縁切りで有名な実在する神社ですが、ここで登場する敵「羅掌願」は、足の痛みを訴える人の足を切り落として「足が無ければもう痛くないね」と言うなど、『猿の手』を思わせる「願いを捻じ曲げて叶えてしまう」存在で、かなりダークな印象でした。
こういった取り上げ方をすることに関し、神社側からNGなどはなかったのでしょうか。
二瓶氏:
もちろん、安井金比羅宮には許可を取って、作中での扱いも確認しながら制作しました。
門脇氏:
実は、安井金比羅宮さんというのは怖い伝承というのも有名な神社さんなんですよ。「嫌いな上司と縁を切りたい」っていうのを願い事すると、上司が事故で亡くなる、というようなお話は、ネットで調べたらいっぱい出てくると思います。
そういった少しホラーな部分を『鬼武者』の世界観で落とし込んでみたいと思って、神社にも、ご相談したんです。もちろん、ゲーム内のストーリーは我々が味付けしたんですが。
二瓶氏:
なので、あれはいきなり思いついたわけではなく、本当にあった怖いエピソードを「幻魔の仕業によって起きたんじゃないか」とすると親和性があるなと感じて選んだんです。
念のため言っておくと、安井金比羅は縁切りだけじゃなくて、縁結びの神社でもあります。いろんな成就のさせ方もあるというだけで、地主さんとしてはもちろん“いい場所”として、神社をやっています。

──安井金比羅の方は、「こういう風に使わせてほしい」というお話を聞いた際はどういった反応でしたか。
門脇氏:
元々ゲームにもすごく精通してる方だったので「ゲームならいいんじゃない」と仰ってくださり、許可をいただきました。
武蔵と巌流は「赤と青」。天才肌で妖艶な巌流の“毒気”を表現するため、アクターにも声優にもこだわった

──佐々木巌流について伺います。巌流からはすごく毒のある「色気」を感じるのですが、彼のコンセプトや、主人公である武蔵との対比を、どのように考え、作り上げたのでしょうか。
二瓶氏:
本作における武蔵と巌流は、キーワードとしても「赤と青」を用意するぐらい、当初から差別化を意識していました。その上で、武蔵は“野蛮さ”を、巌流は“色気”を、それぞれ重視しています。
武蔵は、いわゆる「時代劇の主人公」にしたかったので、宮本武蔵と三船敏郎さんのイメージに共通した野蛮さであったり、「山猿感」というものをキーワードとして作りました。
巌流に関しては、逆に天性肌で、そんな練習しなくても剣がすごくうまい人物として描きました。なので、余裕をかましてるんですよね。そして「妖艶さ」や「色気」を本当に大事にしていました。
そういったイメージを念頭に、武蔵役と巌流役のアクターさんをオーディションしていた時に、ひとりすごく妖艶な男性の役者さんがいて、「巌流はこの人だ!」と決めました。
じつは開発内でも、巌流の女性の人気はすごく高いんです。発売後は、もっと好きな人が増えてくれるんじゃないかというのも期待しています。そういった経緯もあり、野蛮な武蔵と色気のある巌流の対比は意識して作りました。
──武蔵と巌流の動きを見ていても、武蔵は力強く、巌流は滑らかな動き、という対照的な印象を受けました。アクションデザインの観点では、両者はどのように差別化されているのでしょうか。
二瓶氏:
武蔵はプレイヤーが操作するキャラクターなので、奇をてらった動きは、基本のスタイルから外しました。「達人らしさ」というのを意識しつつ、振り終わった後の野蛮さに「山猿感」が出る納刀の仕草を入れるなど、バランスを考えて作りました。

逆に、巌流はプレイするキャラではないので、いろいろな工夫を入れています。私はキャラクターの動きを作るためには性格から考えなきゃいけないと思っているのですが、巌流に関しては、相手を騙して笑うみたいな性格なので、「フェイント」的な動きを必ず入れるように意識して作っていました。
右に動こうとする時、少し左に移動してフェイントを入れてから右へ移動する巌流の動きというのは、そのキャラクターの性格が元になっています。そんな「巌流らしさ」を意識しながらモーションを制作しました。
──キャラクターの声優は、モーションアクターが決まったあとに決められたんでしょうか。
二瓶氏:
はい、声優さんは後からです。巌流については、「狂気」とか「サイコパス」というキャラクターにしたかったので、そういったお芝居が得意な人を、と岡本信彦さんにお願いしました。
──動きももちろん妖艶なんですが、岡本信彦さんの声が乗ることで、巌流の毒のある色気に「ツヤ」が乗ったと感じました。どういう風にディレクションされたのでしょうか。
二瓶氏:
岡本さんを指名した理由は、狂気だけじゃなくノーマルな喋りも得意な方だと思ったからです。巌流は、最初はただの人間で、籠手を授かってどんどん狂気に落ちていくという描き方をしたかったので、普通の喋り方と狂気的な喋り方のコントラストを際立たせられるような、自然な表現の幅がある声優を求めていて、岡本さんにお願いしました。
岡本さんはアニメっぽいお芝居と、映像的なお芝居、どちらもできる方だったので、アニメに行きすぎない「毒」を、映画的に見せながら狂気を演じてほしいという要望をお伝えして、そういう中で演じていただいた声でした。
門脇氏:
岡本さんにやってもらえてラッキーでしたね。
荒々しいだけでなく、滑稽さや情熱も持った人間味あふれる武蔵と、“喋る幻魔”との掛け合いがもたらす「時代劇らしさ」も本作の魅力
──試遊でイベントシーンを見て、人間臭かったり、やんちゃ感もある武蔵の表情が非常に魅力的だと思いました。作中キャラクターの表情を作る上で心がけたことはありますか?

二瓶氏:
今回、『鬼武者』のキャラクターたちについては「少人数で作ろう」というコンセプトがありました。その上で、武蔵はもちろん、小野篁であったり巌流であったり、主要なキャラクターはみんな、表情にこだわって制作しています。
武蔵の性格は野蛮というか、「無頼漢」的なところがあるので、表情でも人間っぽさを出したかったんです。嫌なものは嫌で、「めんどくせえ」みたいな人柄なんだけど、自分の天下無双を掲げるためには何でもやる。そういう人間を作りたかったので、自然と表情が豊かになりました。
──表情を作るうえで、特に苦労された点はありますか。
二瓶氏:
表情がわかりやすくなるよう、制作中はひたすら技術を詰めていきましたね。お芝居自体は最初から変わっていないのですが、眉間のシワの動き方や、鼻の膨らみ、頬のシワの動きとか、細かい部分も含めてチームで磨き上げて作り込んでいき、最終的には魅力的な武蔵に仕上がったという感じですね。
──籠手に宿る「静」と武蔵の掛け合いなど、つい吹き出してしまうようなイベントが印象的で面白かったです。キャラクター同士のやり取りを作る上で気を付けたことや、こだわったことはありますか?
二瓶氏:
武蔵と他キャラクターの掛け合いはとても大事にしていました。武蔵が籠手に宿る静を「籠手女」と呼んで、「そんな言い方嫌いです」みたいなちょっと面白いやり取りも、開発の最初の段階から「入れよう」と決まっていました。人間同士のぶつかり合いを描きたかったので、真面目なだけの冒険活劇にはしたくなかったんです。
これまでの『鬼武者』って、幻魔は基本的に喋らなかったんです。「高等幻魔」のような頭いい幻魔だけ喋って、雑魚は喋らない設定でした。ですが、今回は「時代劇感」を出したくて、戦闘中でも敵と掛け合います。
そういうキャラ同士の掛け合いを「キャッチーに感じてもらいたい」と思いながら作っていました。その結果、多言語化の際に現場には大変な思いをさせてしまいましたが、でもそのおかげで幻魔との面白い掛け合いが作れたと思っています。
──道中、雑魚の幻魔に話しかけられて、「え、喋るんだ」とびっくりしました。
二瓶氏:
これまでの『鬼武者』シリーズにはなかったですよね。
門脇氏:
本作は、強敵とのバトルでは、常に会話しながら剣戟しています。僕自身、いちプレイヤーとしてすごくテンションが上がりました。
──以前のインタビューで、武蔵は日本のみならず世界的に知名度があるから、主人公として選ばれた、と伺いました。
門脇氏:
武蔵を主人公にした理由には本作がほぼ新規のIPに近い状態での勝負になる、という事情もあります。そういった状況で、作品の認知度を底上げしてくれる存在として「みんなが知ってる人が主人公」という要素が重要だと感じ、宮本武蔵を主人公にしました。
──武蔵のビジュアルとして、三船敏郎さんを採用されたことに関する反響はどうでしたか? 日本国内でも大きく話題になりましたが、海外からはどのような反応があったのでしょうか。
門脇氏:
じつは、三船さんを起用したことに対しては、日本より海外の方が反響がありました。
三船敏郎さんは黒澤監督の映画などで知られていて、海外にもとてもファンの方が多いんです。元々そういった情報は知ってたんですけど、改めて海外の反響を見て、「そういった方々がたくさんいるんだな」という印象です。
とは言え、三船敏郎さんを起用した理由は、海外で人気があったからではなく、今回の「カプコンが作る宮本武蔵」のイメージにぴったりだったからなんです。
本作以外にも、さまざまな創作物で宮本武蔵は登場しますし、作品ごとの武蔵像がある。そのなかでカプコンが作る主人公・宮本武蔵には、なんというか「パンチ」が欲しかったんです。そこで「野性味溢れる宮本武蔵」を描くために、三船さんを起用しました。

武蔵が三船敏郎さんだと発表して、改めて海外でも根強い人気があるということを再確認しましたね。
ゲームを遊んでから京都へ行くことで「作品の追体験」ができるかも? 実在するものを描くからこそ、プレイ後も世界が広がる
──宮本武蔵や三船敏郎さんの海外における知名度が高い一方、作品のなかで登場する安井金毘羅や清水寺といった京都の歴史的、宗教的な文化や伝承は、まだまだ世界には知られていないかと思います。
こういった日本の土着文化に対して、海外の方からの反応をどういった形で想定されていますか?
門脇氏:
京都の伝承という部分では、海外の方に認知されていなくてもいいと割り切ってます。
ですが、海外の方も京都自体を知っている方は多い印象です。実際にゲームで京都を体験した後で、もしも将来京都に行くことがあったら、「鬼武者でやった京都だ」「これ、ゲームで行った場所と一緒だ」とか、「あれ、ここはゲームと違うな」というように、作品の追体験ができるきっかけになってくれるのではないか、と考えています。
二瓶さんから、京都の伝承と『鬼武者』の世界観の親和性といった、京都をステージにしたい理由を全部聞いて、即決で「やろう」と決めました。海外に伝承自体は認知されてなくても、十分面白いので勝負できるんじゃないかなと思ったところです。
──野蛮な部分やファニーな面などさまざまな側面を持った武蔵が描かれていますが、制作する際に三船プロダクションの方からご意見などはあったのでしょうか。
門脇氏:
フェイシャル(表情アニメーション)を作る上で三船プロダクションの方には何度も監修いただいてるんですけど、結構気に入っていただきました。一方で、映像は全てお見せしていますし「こういったことやるんですよ」とお伝えはしましたが、「脚本を全部見てください」などはしていません。

たとえば、「武蔵の全身が鬼に変わったりしますよ」とか、「こういった剣戟になりますよ」「敵、真っ二つに切れちゃいます」など、そういった説明をした上で、全シーンで絵的な監修を受けてるという感じです。
──今回『鬼武者』を制作する際に参考にした三船さんの作品などはあるのでしょうか。
二瓶氏:
特定の作品からは参考にしていません。その分、三船さんの映画をもし見てる方だったら、「これ、三船さんっぽいな」と思えるような要素を散りばめています。物語の最初、一時間程度のなかにたくさん入れているので、そこはぜひ楽しみにしてもらえたらなと思います。
──三船敏郎さんの作品を見たことがないという若い方々に、これから『鬼武者』をプレイする上でおすすめの作品などありましたらお聞かせください。
二瓶氏:
僕とプロデューサーで、それぞれ1本ずつ好きな作品があります。僕は『椿三十郎』っていう映画が好きです。この作品を見れば、「三船さんが戦う際の、剣のやり取りがいいな」と感じてもらえると思います。
門脇氏:
僕は剣術物じゃないんですけど、『羅生門』が好きです。今回の宮本武蔵のキャラクター性っていうところに近しい部分があるんじゃないかなと感じています。野性味溢れるワイルドな三船さんが素敵なんです。物語もすごく面白いし個性的なので、『鬼武者』を遊んだ後に見ていただきたい作品です。(了)
今回の取材を通してもっとも印象的だったのは、『鬼武者 Way of the Sword』について語る二瓶氏と門脇氏の楽しそうな掛け合いです。「まだ言えないことばかりだから、早くゲームをプレイしてほしい」、そんな作品への自信が、言葉の端々から伝わってきました。
また、ゲームへの想いと同じぐらい繰り返し語られていたのが、「京都」を表現することへの情熱でした。時にリアルに、時にデフォルメして、さまざまな形でゲームのなかへ落とし込まれた江戸時代の京都と、実際に見て歩く現代の京都。そのふたつの光景が脳内で結びついた時の衝撃は、ただならぬものがありました。
『鬼武者』シリーズ最新作『鬼武者 Way of the Sword』は、9月4日より発売予定です。ぜひ本作をプレイし、そして本作の舞台となった京都にも足を運んでみてください!



