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【60作まとめ】早川書房が夏の超特大セールをやっているので「おすすめ本・シリーズ」を気合いと勢いでいっぱいまとめてみた。ド定番からいつかは読みたい大作級まで、SF、ミステリー、ファンタジーいろいろ

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テーマ・世界観を味わう×手軽に読める:読みやすいけど深さも十分

『紙の動物園』

著者のケン・リュウ氏は中国生まれのアメリカ人で、その作品は「アジアらしい文化を感じるSF」であることが最も大きな特徴。どの話も抜群にまとまりが良く、読後に「すごく大事なことを聞いた気がする」という気持ちになれる良作ぞろい。ぜひ最初に読んでみるSFとしてどうぞ。

本作以外にも粒ぞろいの短編集を出しているのですが、編者として中国SFの紹介もしており、そちらもかなりおもしろいので、中国SFに興味がある方には『折りたたみ北京』などのアンソロジーもおすすめしておきたいです。

『走馬灯のセトリは考えておいて』

戦国武将みたいな顔と名前の作家、柴田勝家による名短編集。しれっと真に迫ったウソをつくのがとんでもなくうまく、その白眉ともいえる短編が本作の「クランツマンの秘仏」という上から下までウソしかないウソ論文。これがとんでもなくおもしろく、ほかの短編も粒ぞろい。柴田勝家らしく歴史ゲームをプレイした「姫日記」なる短編もあり、分かる人は顎が外れるほど頷けるはず。

なお、実は早川からは、前述したウソの論文だけをまとめた、題して『異常論文』というそのまんまのアンソロジー短編集も刊行中。しっかりセール対象なので、こういうのが好きな方はぜひこちらもどうぞ。

『ソース焼きそばの謎』

なぜ焼きそばには醤油ではなくソースなのか。屋台の軽食みたいな疑問を追いかけたら、急に関税自主権とか戦後史とか、あたまの良さそうなことを言い出します。近代日本史を麺から解きほぐす炭水化物系ノンフィクション。読むと賢くなりますが、同時に猛烈に焼きそばが食べたくなる。ちなみに続編(?)『あんかけ焼きそばの謎』『カップ焼きそばの謎』も刊行中。前者はセール対象です。

『Jホラーの核心』

なぜ幽霊は「長い黒髪の女性」なのか。なぜ呪いは「ビデオ」に録画できたのか。日本におけるホラーのブームについて、特に「ビデオ」というメディアの成長史とからめつつ紐解く興味深い論説で、ホラー好きにはおすすめしたい1冊。『リング』の時代から、都市伝説や昨今はやりの「フェイクドキュメンタリー」まで、ジェンダー規範やメディアの変化を追いつつ探っていきます。

『わたしたちが光の速さで進めないなら』

韓国発の短編集。大きく物語が動くというより、人の過去や世界のありようなどのベールを脱がし、謎が少しずつ明らかになってゆくミステリー仕立てのお話が多く、ケン・リュウの『紙の動物園』などと並んでSF初心者におすすめしたい1冊です。表題作はとある宇宙ステーションで故郷に向かう船を待つ老人が、少しずつ過去を語ってゆく物語で、孤独と別れについてのつめたい後味がえもいわれません。

『ネット怪談の民俗学』

きさらぎ駅、くねくね、リミナルスペース──。こうしたネット怪談や都市伝説などは、どのようにして増殖し、変化し、広がっていったのか。ネット掲示板やSNSなどで広がってきた、いわゆる「ネット怪談」を民俗学の道具で学術的に解剖することを目指した書籍で、興味があれば読み応え十分。近年の都市伝説などをかなり順を追って押さえているので、単にネット怪談概説書としても読みやすいです。

『くらやみの速さはどれくらい』

「21世紀の『アルジャーノンに花束を』」と呼ばれることもあるSF小説で、同作が好きだった人にはぜひおすすめしたい一冊。自閉症の主人公・ルウによる一人称の語りが特徴的で、その視点から描かれる世界にはしばしば驚かされることになります。とくにそれが顕著になるのは、本作のタイトルの意味が明らかになるとき。物語の後半で主人公は自身の自閉症を「直す」ことに向き合うものの、それはいままでの世界との関わり方を手放すことになる──いまの自分ではなくなってしまうかも、という予感に満ちている。その予感に向かって進んでいくラストは、なんとも言えない後味です。

『鋼鉄紅女』(シリーズ)

男女一組のペアで操縦する超巨大ロボットを操り、超巨大な怪獣をボコボコにしていく中華ロボットファンタジー……でもパイロットのうち女は死ぬ。中国史をモチーフにしつつがっつり大怪獣バトルをやりつつ、かつかなり超ド直球に虐げられた女性による革命ものでもあり、理不尽に対する怒りをエンジンにシステムに挑んでいく、とにかくパワーに満ちた物語。ちょっと前に続編が出たのでそちらもぜひ。

『イラクサ姫と骨の犬』

隣国に嫁いだふたりの姉のうち、ひとりは殺され、もうひとりはいままさに虐げられている。彼女を救うため、主人公の王女が魔法の力を持つ墓守女に助けを求め──という、おとぎ話のような世界観のファンタジーながら、明確に“理不尽には抗わねばならない”という反抗の物語でもあります。王女は非力で世間知らずな面もありつつ30歳の大人の女性であり、そこも本作の重要な点のひとつ。しっかりとしたテーマを抱えつつ、物語が動き出す序中盤以降におもしろさが加速していきます。著者の前作『パン焼き魔法のモーナ、街を救う』もセール対象です。

『悪童日記』(シリーズ)

戦時下をたくましく生き延びる双子の少年たちを描いた物語。そう書くとめちゃくちゃ退屈そうなのですが、ソリッドな文体の中に興味深いエピソードと、少し奇妙にも残酷にもみえる双子の行動が詰まっており、まったく飽きさせません。また本作は単巻でも完結しつつ3部作の1作目でもあり、『ふたりの証拠』『第三の嘘』という物語に続くのですが、各巻を手に取るごとに、驚きとすこしの恐ろしさを感じるかと思います。

『なめらかな世界と、その敵』

表題作は目線を変えるような容易さでさまざまな並行世界を行き来できる世界の女子高生の物語で、読んでいるとはじめはかなり混乱するのですが、その混乱が気持ちいい。短編集を通してIFの可能性というものをSF的な仕掛けをたくみに取り入れつつ描いているものが多く、複雑な話はしても観念的にはなりすぎず、SFの短編小説ならとりあえずおすすめしたい本のひとつです。

『動物農場』

ディストピア小説の傑作『一九八四年』で知られるジョージ・オーウェルの寓話的小説で、とある農場の動物たちによる“革命”を描きます。動物たちは悪しき農場主を放逐し、すべての動物が平等な共和国を打ち立て、それにてめでたしめでたし……とは当然ならず、得られた権力は少しずつ歪められ、拡大されてゆく。作中でかなり直接的な権力批判を行いつつ、ディストピア小説としてもたいへんおもしろいです。『一九八四年』よりもかなり読みやすいので、これからオーウェルを読む方はまずこちらからどうぞ。

『わたしを離さないで』

ノーベル賞作家カズオ・イシグロによる名長編で、いうなればやさしいディストピア物語。物語の進み方はゆったりと静かで、けれども薄いベールを一枚ずつ剥いでいくように、次第に残酷な世界の現実があらわになっていきます。『一九八四年』や『華氏451度』ほど抑圧的ではないものの、だからこそ逃れがたい理不尽のなかで、それでも美しいエピソードの詰まった日常が印象的です。個人的には遺失物保管所、ノーフォークの話が忘れられません。

『あまたの星、宝冠のごとく』

異星人、愛、老い、時間、神。ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアが、宇宙のあちこちから人間のどうしようもなさをまばゆく照らす短篇集です。本当なら同著者では『たったひとつの冴えたやりかた』が一番好きなのでこれを読んでくれ!と言いたいのですが、一向に電子化する様子がなく、したがってセール対象でもないのでなかなかその機会が巡ってきません。いい本なので紙で買って読んで!

『タイタンの妖女』

個人的には文章はかなり読みやすい……と思っていたのですが、「話が繋がってなくて何が起こっているか全然わからん」という人もたくさんいるらしい。たしかに話の筋を紹介するのはちょっと無理な気がするので諦めています。ユーモラスな読み味は『猫のゆりかご』ほかのカート・ヴォネガットJr作品と同じく、笑いのあとに一抹の寂しさと人間への愛情が残るようなもの。人生に意味はあるのか? ないかもしらんけど気にすんな!

『あなたの人生の物語』

映画『メッセージ』の原作となった表題作を含む短篇集。こちらも文章自体は読みやすいものの、直線的な物語ではなく、寓話的な話が多いので少し人は選ぶかも。哲学や神学的な物語もあり、SFという裾野の広さを感じられる小説でもあると思うので、ある程度いろいろ読んできた人に次の物語の入り口として手にとって欲しい1冊です。

『最後のユニコーン』

タイトルの通り、自分が世界で最後の1頭になったと考えたユニコーンが、同胞を求めて世界をめぐるたびに出るというファンタジー小説。寓話的な話でもあり、内容についてこれ以上の紹介はなかなか難しいのですが、「不思議な話を読んだな」という読後感が残り続ける物語です。金原瑞人氏による新訳版(学研プラス刊行)もあり、実は筆者はそちらで読んでいるのですが、こちらは残念ながら電子化なし。

『華氏451度』

華氏451度──紙の本が燃える温度。『火星年代記』ほか多数の著作で知られるレイ・ブラッドベリによる名作で、本を燃やすことを仕事とする昇火士(ファイアマン)の男が、ひとつの出会いから本を読むことを禁じる社会に疑問を抱き始めるという物語。オーウェルの『一九八四年』と並び、ディストピアSFを代表する1冊です。

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

SFの名手フィリップ・K・ディックによる説明不要の有名作で、映画『ブレードランナー』の原作小説。アンドロイドがほとんど人間と変わらず、見分けもつかなくなった未来で、どうやって人間を人間と断じれば良いのか。人間とは、生命とは何かという問いに挑む物語です。

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編集・ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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