物語を楽しむ×気合いが必要:読むにはパワーが必要だけど面白いぞ……!
『ストーンサークルの殺人』(シリーズ)
偏屈で強引ながらも正義漢でタフな刑事&人付き合いは苦手ながらも天才的な分析力をもつ若手の分析官、ふたりのでこぼこコンビを中心に展開されていく刑事モノミステリー。海外ドラマのようなテンポの良さと、スリリングな犯罪捜査、愉快なキャラクターたちの魅力が詰まった高純度のエンタメで、主人公の名前を取って「ワシントン・ポー」シリーズとも。続巻も多数出ているので、1巻読んで気に入ればぜひ続きも。
『異常【アノマリー】』
激しい乱気流をくぐり抜けた旅客機の乗客たちを、理解しがたい出来事が待ち受ける。作家や弁護士から殺し屋まで、さまざまな人々に訪れたそれぞれの異常を群像劇的に描く物語は、ミステリーでありSFでもありサスペンス的でもあります。詳しいことがあんまり言えないのですが、ぜひとりあえず読んでみていただけると……!
『蠅の王』
誰が呼んだか“最悪版”『十五少年漂流記』。私が吹いてるわけではなく、本作『蠅の王』は本当にそういう話です。少年たちだけが無人島に漂着してしまい、自分たちだけの力でのサバイバルを余儀なくされる。前者が自由な冒険のなかで人間の善性を描いた話だとすれば、本作は極限状況における人間の悪性の発露を描いた物語。とはいえ、翻訳が新しくなっていることもあって文体は平易で、物語にも冒険的な要素やエンタメ性もあり、単に陰鬱な文学というわけではありません。
機龍警察(シリーズ)
至近未来の日本では、二足歩行型有人兵器・機甲兵装による犯罪が増加。それに対抗すべく警視庁では、最新の機甲兵装「龍機兵(ドラグーン)」と、それに搭乗する専任の操縦士を要する「特捜部」を創設した──。という、あらすじだけみると『機動警察パトレイバー』みたいなお話ながら、こちらは遥かにハードボイルド。手に汗握るアクションはもちろん、警察機構内部の対立という警察小説らしい要素もあり、さらに主人公たちは警官ではなく警察の「傭兵」であり、そこに絡んだ人間関係なども複雑に展開。申し分なしに楽しめるハードなエンタメ小説です。シリーズ作品も多数。
『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―』(シリーズ)
竜の騎手を育てる軍事大学を舞台に、主人公・ヴァイオレットの愛と戦いを描く──ファンタジー×ミリタリー×ロマンス×バイオレンスという人間の欲望全部を詰め込んで強引にミキサーしたような小説。ホグワーツ魔法魔術学園にハーレクインを注ぎ込んだらこんな感じかもしれません。学園モノなのに人がどんどん死ぬし、なんなら生徒同士で殺し合いとかするし、入学時点で命の危機からスタート。ロマンス光線もばんばん飛ぶ。おそらく人は選ぶので、苦手な人は胃もたれしそうな気もしますが、そうでなければ毎ページがカーニバルです。
マルドゥック・スクランブル(シリーズ)
個人的には『天地明察』がヒットするまで、冲方丁の代表作と言えば『マルドゥック・スクランブル』で、サイバーパンクといえば『攻殻機動隊』よりもこっちでした。カッコいい科学ワードとえぐ重い設定がばんばか飛び交う物語で、がっつりエンタメしてくれているのが嬉しい。一方で、自らの意思で「生きる」ことについてのテーマも光ります。
『涙を呑む鳥1 ナガの心臓』(シリーズ)
実は筆者は今回のセール情報で初めてこの本の存在を知り、狂喜して近くのジュンク堂に駆け込みました。どうしても紙で欲しかったので。韓国発のファンタジー『ドラゴンラージャ』著者イ・ヨンドによる新たなファンタジー小説で、日本語の書籍が出るのは『フューチャーウォーカー』以来10年以上ぶり。本作の舞台は人間、レコン、トッケビ、ナガという多数の種族が共生する世界で、それぞれの種族の神との向き合い方が描かれていくなど、『ドラゴンラージャ』と通じる部分はかなり大きいのですが、全体としてより大人向けに洗練されているような感覚があります。めちゃくちゃおもしろくて泣いてる。
セールにも早川にも1ミリも関係ありませんが、『ドラゴンラージャ』はかなりゲーム親和性が高く電ファミ読者は好きな人多いと思うので、気が向いたら読んでください。
『戦闘妖精・雪風〈改〉』(シリーズ)
超高性能な人工知能を搭載した戦闘機に乗り込み、敵性の異星生命と戦うというミリタリーSF。かなりハードよりの内容で、単に空戦アクションをやっているだけではなく、タイトルにもなっている人工知能「雪風」をめぐり、意識や知性とは何か、という問いにも踏み込んでいきます。一方で多種の用語が飛び交う戦闘機アクションは「よくわからんけどカッコいい!」で楽しめちゃう。話の方向性はかなり違うものの、『スカイ・クロラ』とか『エースコンバット』(ゲーム)とか好きならぜひ。
『天冥の標』(シリーズ)
とにかくスケールがデカい。遠い惑星の植民地から始まり、謎の疫病から異星の生命、政治や戦争はもちろん、人類の行く末までを、文庫では全10巻17冊(上下巻とかあるので)使って描き切った大長篇。巻が変わるたび時代も場所も登場人物の顔ぶれも変わるので、「さっきの話はどこへ?」になる。当然読むのはかなり大変で迂闊に手を出すのはおすすめできないものの、すべてが繋がっていく気持ちよさはほかでは味わえません。
『宇宙英雄ローダン』(シリーズ)
SF界隈では知らぬものがいないであろう、宇宙英雄ペリー・ローダンの活躍を描いた、世界一長く続く小説シリーズ。恐るべきは1961年に本国ドイツでスタートした連載が、著者をリレーしながらなんと現在まで続いていること。現在3000話超(日本語版で約1500巻相当)ながら、翻訳ペースがおいついておらず日本語版の既刊は760巻くらい。ちゃんと翻訳を出し続けている早川はえらすぎる。ちなみに内容の話を一切していないのは、大変申し訳ないことに筆者がこれをまったく読んだことがないからです。ごめんて。
『ウィッチャー』(シリーズ)
ゲーム好きなら誰しもご存知、怪物退治の専門家である「ウィッチャー」リヴィアのゲラルトの活躍を描くCD PROJEKT REDによる名作ファンタジーアクションゲームの原作小説。とはいえゲームより前の時系列の話なので、ゲーム世界を補完するのにはもってこい。怪物よりも戦争と差別と政治がいろいろ混迷していてたいへんです。
『三体』(シリーズ)
中国SFというものを広く知らしめた大作小説。サスペンス的な物語が強く牽引してくれるので、ハードなSFとしてはかなり読みやすいと思うのですが、3部作の1作目なのでこれを読むと自動的にあと2作くっついてくるので手を出すには覚悟も必要。科学者たちの不審な死が、実は地球規模の巨大な危機に繋がっていて……という物語で、全体からすると1巻目の『三体』はほぼ助走みたいな話なのですが、助走でこんだけおもしろいのはおかしい。
