『Order of the Sinking Star』は、ヒントという「甘え」が一切通用しない超硬派なパズルゲームだ。
なんせ本作には、目的地を示すマーカーもなければ、解き方のヒントすら一切用意されていない。自分の思考とひらめきだけで、1000問以上あるパズルを解き明かしていかなければならない。
最初は親しみやすい「倉庫番」風パズルで始まり、新ルールが次々と追加され、いつの間にか途方もない謎解きの底なし沼へと引きずり込まれていく。
それなのに、なぜかやみつきになってパズルが止められない。そんな至高の「パズルジャンキー製造機」の恐ろしい魅力を、余すところなくお伝えしたい。
※この記事は『Order of the Sinking Star』の魅力をもっと知ってもらいたいPLAYISMさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
甘えは一切許さない。ヒントゼロの硬派パズル
『Order of the Sinking Star』は、異世界を舞台にした見下ろし視点のパズルアドベンチャーゲームだ。
開発を手掛けるのは、『Braid』や『The Witness』などで知られるジョナサン・ブロウ氏が率いるThekla。
『The Witness』と聞いてピンと来た人もいるだろう。本作はゲーム性こそ違えど、まさにその精神的正統進化版といえる。マップを探索し、仕掛けの法則を理解し、自分の頭脳だけで答えをみつけ出す……そんな特盛級の知的「アハ体験」がぎっしり詰まっているのだ。
いや、「進化」などという表現では生ぬるいかもしれない。本作はもはや進化を通り越してパズルゲームの「狂犬」と化している。なんと、パズルを解くためのヒントがゲーム中に一切ないのだ。「昭和のツッパリか!」と、突っ込みたくなる硬派さに、最初は腰が引けてしまう。
本作は往年の名作『倉庫番』的なパズルゲームだ。一定の条件を満たしてゴールへ辿り着けばクリアできる……。まあ、口で言うのは簡単なのだが、パズルゲームの狂犬はそう簡単に通してはくれない。
一方で面白いのは、どれだけミスをしてもやり直しは爆速なこと。「1手戻す(アンドゥ)」や「最初からやり直す(リセット)」がボタンひとつで手軽にできる。パズルは硬派なのに、システムはめちゃくちゃ優しいという、絶妙なツンデレっぷりがたまらない。
システムに対するストレスが皆無だと、逆にヒントがない過酷さが丁度いい挑戦に思えてくるから不思議だ。
「あと一手で解ける!」と確信した瞬間に、まるでこちらの思考を見透かしていたかのように、必要なピースが足りなかったり、そもそもなかったりする「絶望感」。それでも頭を捻り倒していると、突然、天からアイデアが降ってきてすべてが解決するときの「全能感」。
この相反する2つの感情が波のように交互に押し寄せ、気づけばやめ時を完全に見失ってしまう……。これこそが、本作最大の魅力なのだ。
しかし、狂犬の本領発揮はここから。本作はルールが追加され組み合わさることで姿を変え、プレイヤーをさらなる「パズル天国」へと叩き落とすのである。
ルールが追加され、組み合わさることで姿を変える、前代未聞のパズル
本作の最重要アイテムは「岩」だ。
プレイヤーは迷路に置かれた岩を「押す」ことでどかし、ゴールへの道を切り開いてステージクリアを目指す。慣れ親しんだ『倉庫番』のルールそのもので、その面白さは説明不要の折り紙付き。「あ、これは普通に超面白いヤツだ」と、まるで実家のような安心感でプレイするやつだ。
本作はその安心感を平然と斜め上の方法でへし折りに来る。
筆者がイイ感じで岩を押していると、特に説明もなく突然、岩を「引く」キャラクターが登場するのだ。しかも、逆にこのキャラは岩が押せない!
前触れや説明もなく、新しいルールでの解法を試すことになるパズルゲームなんて聞いたことがない。反則級の神の一手に驚きながらも、心の中では予想外の展開にワクワクが止まらない。なに、このちゃぶ台返し……最高すぎるんだが。
押すから一転、今度は岩を引きまくってステージを次々とクリアしていくと、また別のキャラクターが平然と登場。今度は押すでも引くでもなく、自分と対象物の「位置を入れ替える」能力でパズルを解けと、再度、前提をひっくり返してくる。
その後も「水面に足場を作る」「鏡の屈折を使ったテレポート」など、新しいルールを持ったキャラクターが次々に登場し、プレイヤーを片時も飽きさせない。これはもう『倉庫番』の派生とは言わせない。完全に別ゲーだ。
ステージには岩だけでなく、踏むと仕掛けが作動するスイッチや、プレイヤーを攻撃してくるモンスターも登場する。プレイヤーの1動作に対しモンスターも同じ数だけ行動するため、敵の行動パターンを予測するターン制思考も求められる。
さらに本作が革新的なのは、こうした異なるルールをひとつのステージにぶち込み、複雑怪奇な合わせ技でプレイヤーを翻弄してくる点だ。複数のキャラクターを同一マップに配置し、それぞれの固有能力を組み合わせて難解な仕掛けの打破を目指す。
そして、思い出してほしい。こうした狂気の複合パズルを解くヒントは、一切提示されないのだ。 この理不尽なまでの圧倒的歯ごたえが、ジワジワとプレイヤーを思考の奥底へと引きずり込んでいく。
そう、1000問以上という、とんでもない物量の底なし沼へ。
開発期間10年。収録パズルは1000問以上。無限に時間が溶ける「パズルジャンキー製造機」
公式によると、本作の開発が始まったのは2016年頃。なんとリリースまでに10年を費やしているのだ。この10年間パズルだけを作り続けてきた開発陣の狂気を想像してみてほしい。その結果、1000問以上のパズルが爆誕して、それが全部本作に収録されているという凄まじさである。
1000問をすべて解くのに、どれくらいのプレイ時間が必要かざっくりと計算してみた。仮に1問あたり平均3分という驚異的なハイペースで解き進めたとしても、全クリアには実に50時間以上かかる。
……が、筆者は序盤の問題でさえ、その5倍の時間をかけてクリアした。平均3分なんてIQ250くらいの天才じゃないと無理だと思う。公式ではコンプリートまでに「数百時間」かかるとされているから、マジで正気の沙汰ではないスケール感である。
しかも、本作ではワールドマップ自体もパズルになっている。つまり、パズルをするためにパズルをクリアしなければならないという、マトリョーシカみたいな構造なのだ。思考を休める一分の隙もプレイヤーに与えてくれない徹底っぷり。
ワールドマップはそれぞれ固有のルールや生態系を持つ「4つの独立した世界」で構成されていて、オープンワールドのようにシームレスで接続されている。まるで「パズルだけで作られたテーマパーク」気分で冒険を楽しめる。
この構造はプレイヤーの「逃げ道」としても役に立つ。どうしてもクリアできない問題に行き詰まっても、別の世界で新しいルールのパズルに挑戦することで気分転換ができるからだ。頭をリフレッシュすることで、いままで思いつかなかった気づきに繋がることもあるのだ。
まあ、パズルで疲れた頭をパズルでリフレッシュするって……、自分でもちょっとなにを言ってるのか意味不明だが、視点を変える効果は十分にある。
思考に疲れたならいっそのことゲームを止めてしまってもいい。本作は、ゲームを終了したその状態に秒で復帰できるシステムになっているのだ。
開発陣のパズル愛とユーザーへの気遣いがすごすぎて、気づいたら数時間が泡のように溶けてなくなっている……。本作は、そんな「至高のパズルジャンキー製造機」に仕上がっている。
もう安易な答え合わせでモヤらない!
『Order of the Sinking Star』は、パズル本来の楽しさである「自分でひらめくよろこび」をプレイヤーにこれでもかと叩きつけてくれる。硬派なパズルアドベンチャーの金字塔となるだろう。
10年をかけて作られた1000以上のパズルと、ヒント一切なしの硬派な世界。システムではとことんユーザーを甘やかし、パズルでは極限までの狂犬っぷりを発揮する。その絶妙なツンデレさが、他の作品では味わえない至高の快感を与えてくれるのだ。
自分の思考の限界に挑戦したいアナタ。ぜひこの「沈み行く星」の世界へ飛び込んで、気づけば数時間が溶けている最高のパズルトランス体験をしてみてほしい。














