CD Projekt Redは一人称視点RPG『Cyberpunk 2077』の48分間に及ぶゲームプレイ映像を公開した。公開された映像はE3 2018とgamescom 2018で公開されていたライブデモとほぼ同じ内容になっているが、一般向けに披露されるのは今回が初となる。
映像からわかる要素とこれまで公開されてきた情報から『Cyberpunk 2077』がどのようなゲームなのかをあらためて分析してみたい。
プレイヤーの選択が重要となるキャラクターメイク
ゲームプレイデモはキャラクターメイクから始まる。性別、バックグラウンドや見た目などを変更できるが、主人公が「V」と呼ばれる新人の傭兵である点は共通だ。バックグラウンドでは「ゲームの舞台となるナイトシティに来た理由」以外にも、「子供のころのヒーロー」や「人生における大きな出来事」といった、一見無関係にも見える設定にも選択肢が用意されている。これらは単なるフレーバーではなく、ゲームに影響を及ぼすことになる。
バックグラウンドや身体的特徴、服装を決めると初期能力値が決定される。本作のロールは今のところ戦闘に特化した「Solo」、ハッカーの「Netrunner」、エンジニアである「Techie」の3種類が紹介されているが、キャラクターメイク時に選ぶものにはなっていない。キャラクターメイクを行った後にこれらのロールが決まることになり、さらに主人公のロールはその後のゲームプレイによって流動的に変化するという。なお、原作となるテーブルトークRPG『The Cyberpunk 2020』には、この3種を含め全10種類のロールが用意されている。
キャラクタービルドはプレイヤーの行動の結果を受けて成長していくこととなり、ダイナミックな変化が作中では期待できそうだ。
映像ではキャラメイクが終わるとゲームが始まる。TBugという女性の依頼を受け、人々を誘拐してインプラントを集めるスカベンジャーというならず者たちから少女を救い出すのが目的だ。このミッションでは相棒にジャッキーという大柄の男性がついてくるが、ほかにも相棒となるキャラクターが登場するようだ。
サイバーパンク要素を存分に生かしたド派手な戦闘
ゲームがスタートすると主人公のVと相棒は、どこかの居住ビルらしき暗い通路を抜けて、スカベンジャーの隠れ家に侵入。ミッションクリアを目指して戦闘が始まる。RPGながらターンベース制というわけではなくリアルタイムのアクションで、スライディングやダブルジャンプを駆使して動き回り、ケレツニコフと呼ばれる反射神経をブーストさせる薬剤を使ったスローモを使うなど、かなり派手なものとなっている。
CD Projekt REDにとって一人称視点のアクションゲームの開発は今作が初のはずだが、いずれのアクション性にもぎこちなさは感じず、命中するたびに表示されるダメージポイントがこのゲームがRPGだということを思い出させる唯一の要素となっている。
最初の戦闘も派手だが、映像後半に繰り広げられるさまざまなサイバネ能力を使った戦闘はさらにド派手だ。ハッキングして小型ボットを仲間にし、ダブルバレルショットガンにサイバーパンクな装飾を施したテックショットガン、敵を追跡する弾丸を撃つスマートガンを手に、メールシュトロームと呼ばれるギャングと戦う。また、拳銃もアップグレードされ、跳弾を計算して遮蔽物に隠れた敵を狙い撃つことができるようになる。
V自身もさらにパワーアップし、ダブルジャンプで高い場所へ移動したり、壁を走り有利な場所から敵に襲い掛かったりと大暴れしている。
テックショットガンは遮蔽物を貫通する高威力の弾丸が撃て、スマートガンは『Titanfall』シリーズに登場するスマートピストルのように、照準の方向に関係なくロックオンした敵に向かって弾丸が飛んでいく。暴力表現も強く、動画ではショットガンで下半身や頭を吹き飛ばされたり、『Cyberpunk 2077』の一番最初に公開されたトレイラーでも登場したマンティス・ブレードで切り裂かれる哀れな敵キャラクターも登場する。
誤解を恐れずに言えば、『Cyberpunk 2077』の戦闘は個々の要素を挙げれば類似したシステムはこれまでにもあったが、単純にそれらをただ持ってきたのではない。むしろ、これまで積み重ねられてきたFPSの戦闘の歴史の集大成になっているとさえいえるかもしれない。さまざまなFPSで培われた面白い要素を、サイバーパンクという世界観でひとつにまとめ上げた戦闘は、これまでにない面白いものになるだろう。
すべての要素をつなぎとめるシームレスなサイバーパンクの世界
『Cyberpunk 2077』も『The Witcher』シリーズ同様作り込まれた世界が描かれている。たとえば最初の依頼の報酬で、Vは男娼を買って楽しんだようだ。今回は男娼だが、ゲームではほかのNPCとのロマンスも多数用意されているという。
Vの自宅はプレイヤーがサイバーパンクな世界に期待するようなさまざまな仕掛けが用意されている。窓ガラスに表示されるミュージックプレイヤー、ブラインドを開けると広がるけばけばしいネオンの光るビル街、部屋の一角を占める武器庫には銃だけでなく刀を設置するための箇所まで用意されている。武器庫には最初は拳銃がぽつんと置かれているだけだが、ゲームが進むにつれてどんどんにぎやかになっていくのだろう。
また映像でVは最後にジャケットを着て外に出る。RPGらしく防具としての側面もあるが、それだけでなくストリート・クレドと呼ばれる信用度を上げる効果もある。信用度が高ければ新しいお店やコンテンツがアンロックされる仕組みだ。ジャケットに輝くSAMURAIの文字は、体制に対する抵抗と闘争を音楽で表現した伝説的なロックバンドの名前であり、ここでも世界観の作り込みが見て取れる。
朝でも薄暗いアパートを抜けると、「Cyberpunk」という文字とともに、ひときわ目を引くナイトシティの大通りにたどり着く。暴力と抑圧が支配するディストピアであるナイトシティは、ローディングなしのシームレスで描かれる。
これが一人称視点で描かれるオープンワールドゲームなのかと疑うほどの群衆の中には、パンクな衣装を着た人々だけでなく、袈裟を着た僧侶風の男たちもいる。この街に暮らす人種はさまざまだ。また、群衆はただ動き回るだけでなくきちんと信号を待ち、屋台で食事をし、セルフィーを撮影する人もいて賑やかでダーティな街に色どりを添えている。
街中の広告は通行人に合わせてカスタマイズされており、VにはVに向けた広告が表示されるという。想像ではあるものの、たとえば戦闘能力を伸ばせば武器を買える場所が示されるなど、ゲームプレイを通じて広告も変化していくかもしれない。
Vが広告の表示に従い、設置された自動販売機からニコーラと呼ばれるサイダーを購入する様子も収録されている。街は広くごみごみしているだけでなく、実際にプレイヤーにとって意味があり非常に密度が濃い。
街には自動販売機や武器商だけでなく「リパードク」という医者が経営するサイバーウェアを強化するためのクリニックもある。違法な軍事機器を提供する闇医者のようなリパードクもいるようだ。
街に出た後は大物フィクサーDexter Deshawnからの依頼を受け、リパードクで自身の強化を終わらせると、今度は車に乗り込んで街を走ることになる。ジャッキーの車だけでなく、ほかの車やバイクに乗ることもできるようだ。
コックピットからの一人称視点だけでなく、車外から見た三人称視点も選択できる。ドライブに関しては柔軟な視点が用意されている。
依頼の場所に向かう間に拠点を潰されたスカベンジャーの残党が襲い掛かってくる。これはあらかじめ設定されたイベントではなくランダムイベントだという。車での戦闘は相棒がハンドル操作を変わってくれるようで、自動で運転されるようだ。ファストトラベルや自動運転の存在は不明だが、少なくとも戦闘に入れば運転に気を使わずに戦える。
ナイトシティにではさまざまな勢力がしのぎを削っており、プレイヤーの選択によってそれらの勢力と敵対したり協力関係を結ぶことになる。事前の調査や会話の選択、自身の能力を使って戦闘を回避したり、交渉を有利に進めたり、逆に喧嘩を売るといった、能力に見合った自由な振る舞いが許されるはずだ。
しかし、だからと言ってどんな依頼もすんなりとは進まない。ディストピアの世界では銃を突き付けられ、殴られ、騙されるのは日常茶飯事のことだ。新人の傭兵であるVは多くの困難を乗り越えて成長していくのだろう。
今回公開されたゲームプレイ映像ではメインとなりそうな物語を見つけ出すことはできなかった。プレイヤーは新人の傭兵として依頼をこなして、さらに自身をアップグレードしていくことに終始している。
とはいえ、『The Witcher 3: Wild Hunt』のCD Projekt Redが単純でわかりやすい、そしてつまらないストーリーを作って満足するとは思えない。すでにゲームは最初から最後まで通してプレイできるという本作への不満は、もはや発売日が今日でないことくらいしか残っていない。
2013年に公開されたティーザートレイラーから5年以上が経ち、待ちに待ったゲームプレイ映像が一般にも公開された『Cyberpunk 2077』の今後の情報に目が離せない。
文/古嶋 誉幸