第一次世界大戦の終戦記念日100周年である2018年11月11日、同じく第一次世界大戦を舞台にしたマルチプレイFPS『Battlefield 1』にて有志のプレイヤーたちが銃を撃つことを止めた。海外フォーラムRedditではその様子を撮影した動画がプレイヤーのひとりの手によってアップロードされている。
この休戦はゲーム内でイベントの告知があったわけではなく、第一次世界大戦についてよく知る人々の手によって自然発生的に起きたものだ。
1914年にサラエヴォ事件を発端に、オーストリア=ハンガリーとセルビア王国で始まった戦争は、たった数週間で主要な列強国が全て参戦する人類最初の世界戦争となった。さまざまな国が同盟関係を結んでおり、連鎖的な戦争の勃発は防げなかった。
当初はクリスマスまでには終わると楽観視する声も多かったが、戦争の終結は完全な講和条約が結ばれる1919年まで、5年もの歳月を必要とした。
第一次世界大戦に参加した主要国が1918年11月11日を終戦、あるいは休戦記念日としているのは、その日にドイツと連合国の休戦協定が結ばれたことに由来する。
Redditにて公開された映像を見てもわかるように、銃撃を止めた兵士がいた一方で、複葉機のパイロットや数名の兵士は戦いをやめなかった。動画の撮影者も動画の最後では背後から刺殺されている。この状況は、現実の第一次世界大戦で起きたクリスマス休戦を思い起こさせる風景だ。
クリスマス休戦とは、戦争が始まった1914年に一部の戦場でクリスマス頃に起きた非公式の停戦状態を指す。ある将校の話では、クリスマスの日に敵兵士がこちらに手を振る様子を見て自然と停戦条体になったという。
夜、敵の塹壕に光が見え、よく見るとそれはクリスマスツリーで敵の陣地からは「きよしこの夜」が聞こえてきた。こちらも「きよしこの夜」を歌い朝には自然と停戦状態になったと言う話も伝わっている。
しかし、クリスマス休戦はどこでも見られたおとぎ話ではない。クリスマス休戦については多くが前線にいた兵士たちの証言であり、公式な停戦ではないので戦地によって様相はまったく違っていた。停戦状態になったのは全体の中のごく一部だったという。『Battlefield 1』での映像と同様に、クリスマスを祝おうとして塹壕から出た者が殺害されたという話も残っている。
戦友や家族を殺された兵士だけでなく、士気の低下を恐れた高官もこの停戦を快く思わず、主にクリスマス休戦を行ったイギリス軍やドイツ軍では、クリスマス休戦を認めないことを厳命している。1915年以降はクリスマス休戦は発生していない。
https://twitter.com/JanDavidHassel/status/1061598282177224704
※DICEの開発者Jan David Hassel氏もこの休戦状態についてのビデオに気が付き、11日にはツイッターでそのことを紹介している。
戦争を題材にしたゲームを楽しむということは、戦争についてもっとよく知る機会を得るということにほかならない。あなたの好きなゲームがもし現実の出来事を題材にしているのなら、そのことについて調べてみるとゲームをより深く楽しめるようになるかもしれない。
文/古嶋誉幸