『コナン アウトキャスト』を開発したFuncomが、フランク・ハーバードのSF小説『デューン/砂の惑星』をゲーム化することを発表。権利を所有するLegendary Entertainmentと独占的パートナーシップを結んだことを明らかにした。今後6年間で、PCとコンソール向けに最低3つのゲームを開発し、そのうちひとつは「オープンワールドのマルチプレイヤーゲーム」としている。
「我々はフランク・ハーバートの『DUNE』の作品に基づいたビデオゲームを開発するためにLegendary Entertainmentとの独占的なパートナーシップを発表することにとても興奮しています。『DUNE』は、世界でもっとも有名なサイエンス・フィクション・ユニバースのひとつであり、個人的にも大好きな作品です。『DUNE』のゲームに取り組むという、我々、Funcomの夢が叶いました。近いうちに、この素晴らしいユニバースで何をするのか明らかにします。」――CEO ルイ・カサイス FUNCOM’S FOURTH QUARTER 2018 FINANCIALSより
フランク・ハーバートによって書かれた『デューン/砂の惑星』は1965年に発刊されたSF大河小説。SF小説のオールタイムベストの常連作品の一大銀河叙事詩だ。
西暦10091年という遥か未来。人類は自身が製造した思考機械の反乱を食い止め、以後、思考機械の製造を禁止した。人類は皇帝を頂点とし、貴族たちが各惑星を統治する強力な封建制度を銀河全体に敷いている。別名「デューン」(=砂丘)とも呼ばれる砂漠の惑星アラキスでは、不老長寿の妙薬であり、銀河をワープするのに必要な香辛料「メランジ」が採掘できる場所だ。
本作は、この貴重なメランジをめぐる砂の惑星の覇権争いを中心に据えつつ、救世主として覚醒するアトレイデ公爵のひとり息子ポール・アトレイデスを主人公とした壮大な群像劇になる。緻密な世界設定、専門用語の数々、人々の独特な精神世界と宗教観、想像力を駆使したSF的なヴィジュアルが圧巻だ。特に砂漠の惑星でうごめく巨大ミミズや、エコロジー的視点は、『風の谷のナウシカ』をはじめ、さまざまな作品に影響を与えた。
本作は小説だけではなく、映画化された作品も大きな存在だ。特に1975年、チリの芸術家であり映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーが映画化しようしたプロジェクトは、未完成作品でありながら大きな影響力を持っていたことが知られている。
ホドロフスキーは、『デューン』の映画化を「人類の意識の変革を目指す」と執念を燃やしたが、壮大過ぎる構想のあまり、莫大な予算がかかるため最終的には映画会社に見向きもされずに企画は頓挫した。ホドロフスキーは、俳優、デザイン、特撮、音楽、美術と各界の一流のキャストとスタッフを集め、作りこまれた絵コンテまで制作していた。この一連の動きは『ホドロフスキーのDUNE』としてドキュメンタリーとして内幕が明かされている。
「ホドロフスキーのDUNE」。彼が魂の戦士と呼ぶ仲間(メビウス、オバノン、ピンクフロイド、フォス、ダリ、ギーガー、ミック・ジャガー、ウド・キア、オーソン・ウエルズ)を集める件は「七人の侍」を観るようだ。彼の重力場があらゆるクリエーターを引き寄せる様に、我々観客をも魅了するはず。
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) April 2, 2014
このホドロフスキー版『デューン』のメンバーの中には、バンドデシネの巨匠・メビウス、さらには『エイリアン』のデザインで知られるH・Rギーガーと、脚本のダン・オバノンが在籍しており、直接的、間接的にさまざまなSF作品の礎となったのである。
その後、1984年に鬼才デヴィッド・リンチによって正式に映画化されたが、『スターウォーズ』の公開後ということもあり、評価はかんばしくなかった。だが現在は『デューン』の世界観をグロテスクに表現した特撮など見所も多く、カルト映画として再評価されている。2000年には全6話でドラマ化もされた。
実は『デューン』は、何度かゲーム化もされている。有名なのは1992年にAmigaなどから発売したアドベンチャーゲームとシミュレーションゲームを組み合わさた『DUNE』。開発はフランスのCryo Interactive、デヴィッド・リンチの映画版に準拠しており、3Dレンダリリングされた美麗なグラフィックや、当時としては先駆的だったボイス表現などが盛り込まれている。
この続編はWestwood Studiosが『DUNE II』として開発したが、これはゲーム史上でも重要な作品だ。厳密には最初のリアルタイムストラテジーではないが、『スタークラフト』や『ウォークラフト』など多くのリアルタムストラテジーの基盤となったことで知られている。2000年には同時期のドラマ版を準拠して、PS2でアクション・アドベンチャーとしてゲーム化されているが、こちらの評価は芳しくない。
『デューン』は、『ブレードランナー2049』も手掛けたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によって2020年に再映画化されることも決まっており、このFuncomのゲーム化もそのフランチャイズ展開に合わせたものだろう。上記のゲーム版は日本では未発売に終わったが、今回の再映画化はハリウッド大作映画であり、公開されると日本でも大きく話題になるはずだ。ぜひFuncomのゲーム版『デューン』も同じく日本展開をして欲しいところ。しばらく『デューン』の話題が尽きることはないだろう。
ライター/福山幸司