ソニーとMicrosoftは5月16日、消費者向けエンターテイメントプラットフォームとAIソリューションを強化するための戦略的提携を結ぶことを発表した。
発表によれば、両社は互いのコンテンツストリーミングサービスを支援するため、Micorosoftのクラウドプラットフォーム「Azure」におけるクラウドソリューションの共同開発を進めていく。また、ソニーのゲームとストリーミングサービスにAzureのデータセンターベースを使用するか検討していくという。
さらに両社は半導体とAIの分野での提携も模索しており、ソニーの最先端のils(インテリジェントイメージセンサ)とマイクロソフトのAzureにおけるAI技術をクラウドを通じて統合し、そのソリューションを企業向けに提供していくとしている。直感的でユーザーフレンドリーなAI体験を実現するため、MicrosoftのAIプラットフォームおよびツールにソニーのコンシューマー製品を組み込む。
ソニーのCEOである吉田憲一郎氏は、「PlayStation自体、創造性と技術の統合を通じて生まれました」とコメント。クラウド環境でいつどこでも楽しめるエンターテイメント体験を提供し続けるため、プラットフォームを継続的に進化させなければならないと伝えた。また、両社がいくつかの分野で競合してきたとしつつも、クラウドの共同開発はインタラクティブコンテンツの進歩に大きく貢献すると信じているとしている。
MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラ氏も、「我々のパートナーシップはAzureとAzure AIの新たな力をソニーにもたらし、顧客に新たなゲームとエンターテイメント体験を届けることになる」と、戦略的提携へのコメントを伝えた。
Microsoftはクラウドを通じたAIや物理演算のテクノロジーを追求し続けており、また今年3月にはクラウド技術とゲームストリーミングを押す開発エコシステム「Microsoft Game Stack」を正式発表している。一方でソニーには長年築いてきたPlayStationブランドや多数のシリーズタイトルが存在するほか、業界でトップの技術力を誇るCMOSイメージセンサーも有する。今回の提携は、クラウド技術とコンテンツ双方が求められるストリーミングゲームはもちろん、開発システムや技術においても両社の利益になると目される。
また、情勢的な理由もある。2015年、ソニーは3億8000万ドルで買収したGaikaiをもとにゲームストリーミングサービス「PlayStation Now」をスタート。またMicrosoftも、タブレットやスマートフォンでもXboxのゲームが遊べる「Project xCloud」を2018年に正式発表している。しかし今年3月には、Googleが対抗馬になると目される「Stadia」の存在を明かしており、2019年内にサービス開始と公表された。また、ダウンロード形式ではあるものの、定額ゲームサブスクリプションサービスにはAppleも「Apple Arcade」を年内に開始予定としている。
パッケージを買うこともコンテンツデータをダウンロードすることも必要ないクラウドゲーミング。新たなゲームの未来として定着するのかはまだ定かではないが、業界内の動きは急速に加速している。
文/ishigenn