ウプサラ大学ゴットランドキャンパスの学生達が作るデベロッパーTeam Cliffsideは、柴犬が主役のアドベンチャーゲーム『Kato』をリリースした。対応プラットフォームはPC。Itch.ioにて無料で配布されている。ゲームはプロトタイプとされており、これ以上開発の予定は無いという。ただし、Nintendo Switchへの移植も望んでいるようだ。
『Kato』は災害によって半壊し、多くの住人が笑顔を失ってしまった小さな村が舞台だ。プレイヤーはそこに住むKatoと呼ばれる一匹の柴犬となり、残った人々の心にやすらぎを取り戻すために奔走する。人語を発せない柴犬だが、物を運び、走り、吠えることで感情を伝える。
災害で家を失った村長、壊れた風車を直すために尽力する女性、悪夢に苛まれる郵便配達員。住人たちの抱える問題は様々だ。柴犬が主役ゆえか、悩みを抱えたキャラクターは人間だけにとどまらない。願いを叶え彼らの笑顔を取り戻せば、「喜びのエッセンス」が手に入る。このエッセンスをたくさん集めることで、エンディングに到達できる。
柴犬であってもできることは多い。吠える、くわえる、跳ねる、穴を掘るといった、おおよそ犬ができそうなアクションは一通りこなせる。さらにKatoは、暗闇をランプで照らしたり、斧で木を切るといった賢い面も見せてくれる。多くの場面で人や物を探すことが主な謎解きになるが、場合によっては後ろから吠えてびっくりさせることで解決する問題もある。
そんな賢いKatoのことを知ってか知らずか、「どうして犬に向かって話しているんだ……」という妙にまともな反応をする人もいれば、「森で木を切ってきてくれ」と犬に無茶を言う住人もいるのが少しおかしい。悩み事をペットに話す飼い主は少なくないだろう。悩みを話しておけば、いつか解決してくれるかもしれない。
ある程度喜びのエッセンスを集めると、エンディング画面にアクセスできるようになる。悩みを抱える人すべてを幸せにする必要はなく、あくまで犬にできる範囲でということなのだろう。それでも、最後までこの村の人々の悩みに付き合ってみようと思うようなゲームだ。
戦闘はなく、大きな事件が起こるわけでもない『Kato』だが、開発チームの確かな実力を感じるゲームだ。言語は英語のみとなっているが、字幕が流れてしまうことは無いので英語が苦手でもじっくり取り組むことができる。日常生活に疲れて犬になりたいと思ったら、ぜひ『Kato』を試してみてほしい。
ライター/古嶋誉幸