海外向けに『沙耶の唄 リマスター』がSteamで7月中に発売決定。クトゥルフ神話と美少女ゲームを融合させた虚淵玄氏による不朽の名作

 ロサンゼルスで7月4日から7日にかけて開催していたAnime Expo 2019のJAST USAパネルディスカッションで、『沙耶の唄 リマスター』が発表された。TNMnoisy pixelといった複数の現地メディアが報じている。プラットフォームはSteamで、発売は7月だという。現段階では日本向けの発表はされていない。

(画像はニトロプラス『沙耶の唄』より)

 『沙耶の唄』は、2003年にニトロプラスから発売された18禁ノベルゲーム。シナリオを虚淵玄氏が担当しており、ボリュームは中篇といった趣ながら、虚淵玄氏の最高傑作に挙げる人がいるほど、人気が高い作品だ。

 交通事故によって生死の淵を彷徨い、生還した主人公・郁紀。しかし事故の後遺症で、周りの風景は内臓が露出したような肉の塊に、人間の姿は腐臭を放つ異形の化け物に見えることになった。なんとかこの狂気的な状況を耐えて、日常生活を送っている状況のなか、そんな主人公の元に、唯一まとに見える美少女・沙耶が現れる。

 2003年の発売以降、口コミ的に人気が広がり、虚淵玄氏がアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のシナリオで名声が高まると、さらに本作が注目された。近年では、星海社FICTIONSからノベライズで続編が出ることも発表されており、12月14日に発売が決定している。

(画像は最前線『沙耶の唄』より)

 本作の誕生のきっかけとして、鋼屋ジン氏がシナリオを担当した『斬魔大聖デモンベイン』がある。虚淵玄氏は鋼屋ジン氏にクトゥルフ神話を紹介し、結果的にできあがったのが邪神の信者や、その眷属と戦うクトゥルフハンターものを取り入れた『斬魔大聖デモンベイン』だった。

 虚淵玄氏はこのオーガスト・ダーレスからの流れである、人間と邪神の眷属が戦うクトゥルフハンターものではなく、抗えない恐怖と沈み込んでいく狂気が特徴の本家H・P・ラヴクラフトのクトゥルフ神話ものを描きたいと思い、『沙耶の唄』を制作したという。

 とはいえ本作はそういったH・P・ラヴクラフトからのクトゥルフ神話ものでありながら、美少女ゲームの様式も守っているので、ミステリアスかつ、耽美でありながらグロテスクという独自の世界観を築き上げている。

 海外では、2009年に有志による非公式翻訳パッチが出さたのをきっかけに、ファンの後押しもあり、JAST USAからその有志翻訳を改良する形で公式に英語版が2013年に発売された。2010年にはアメリカの出版社IDWよりアメコミ化もされるなど、海外でも広がりを見せている。

(画像は「ニトロプラスオンラインストア『[IDW]Song of Saya #3(アメコミ版 沙耶の唄』より)

 『沙耶の唄 リマスター』の詳細は明らかではないが、『沙耶の唄』は、2017年に『沙耶の唄 Nitro The Best! Vol.2 Windows 10対応版』として再発売しており、このとき、解像度を800×600から1280×960に拡大している。本作はそのSteam英語版の可能性もありえる。

 続編のノベライズが発売され、海外ではさらに展開する『沙耶の唄』。不朽の名作であることは間違いないので、本作にまだ触れたことがない人は、この機会に遊んでみて、狂気の世界に耽溺していってはいかがだろう。

ライター/福山幸司

ライター
福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman
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