世の中には、まだ発見されていない宝物が身近に数多く眠っているのかもしれない。先週の木曜日、新品未開封の北米ファミリーコンピュータ(NES)版『Kid Icarus』が9000ドル(約95万円)でオークションにて落札された。思わぬ幸運を手にしたのは、アメリカに住むスコット・エイモス氏と彼の家族だ。
『Kid Icarus』は、日本では『光神話 パルテナの鏡』として1986年にリリースされたディスクシステム用ゲームだ。NESではディスクシステム自体がリリースされていないため、ロムカセットの媒体で発売されている。
同作は主人公ピットを操作し、メデューサを倒しエンジェランドを救うために冒険する作品。縦、横スクロールアクション、シューティングなど1本のソフトにジャンルのステージが収録されている。ハートを通貨にしたアイテムの売買や、ステージで稼いだスコアやゲーム内の行動でピットの能力が成長するなど、RPGの要素も採用されている。
また、ゲームオーバー時の「ヤラレチャッタ」や、なすびに変えられる主人公、クレジットカードの存在など、ギリシャ神話をベースにした世界観ながらさまざまなコメディ要素が取り入れられたことでも有名。Nintendo 3DSでは続編『新・光神話 パルテナの鏡』が発売されたほか、ゲームに登場したピットと女神パルテナは『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズでファイターとしても参戦している。
海外メディアReno Gazette-Journalは、出品したエイモス氏についても報じている。それによれば、エイモス氏がこの『Kid Icarus』を発見したのは、幼少のころに過ごしたアメリカネバダ州リノの実家で、母親に頼まれて片付けをしていたときだという。レシートの日付は1988年12月7日。時期的にクリスマスプレゼントとして用意されたのでは、と考えられている。当時の価格で38.45ドル。今の貨幣価値に換算すると80ドルほどだ。
発見されたときは、エイモス氏はそれほど価値があるものだとは考えなかった。そのため、小さな娘たちの手の届くキッチンカウンターに無造作に置いたままだった。しかし、新品未開封ということでもしやと思い、翌日数人の専門家にどれほどの価値があるかメールで質問した。その中のひとりから、わずか30分ほどで「イースターエッグを見つけたようだね」とメールが返ってきた。
エイモス氏はすぐに妻に連絡し、ゲームを安全な場所へと移動した。幸いにも子どもたちのおもちゃにはならなかったようだ。
オークションなどで販売されるゲームの真贋や保存状態を保証する格付け会社WATA GAMESが『Kid Icarus』に与えた格付けは10点中8.0。新品未開封の状態を保証する格付けはA。新品または完全に近い状態であることを示している。Heritage Auctionsのページでは、現存する『Kid Icarus』の新品未開封品は全世界にわずか10本足らずしか確認されておらず、かつて同等品が12000ドルで取引されたことを紹介している。
なお、エイモス氏はこのオークションで得たお金を姉と半分に分け、来月にはディズニーワールドで休暇を取る予定だという。
他人の思わぬところから見つかった幸運を見れば、自分の部屋にも忘れ去られた宝物が眠っているのでは?と思うのが人情というもの。今週末は、部屋の片付けをしながらイースターエッグを探してみてはいかがだろうか。
ライター/古嶋誉幸