デジタルカードゲーム『Hearthstone』のアジア・パシフィック大会における試合後のインタビューにて、香港出身のChung Ng Wai選手(プレイヤー名、Blitzchung)が、7月から香港で続く政府に対する大規模な抗議運動へ便乗する形で、同地域の解放を訴えた。
eスポーツメディアIven Globalによると、グランドマスタートーナメントに出場したBlitzchung選手は、試合後に台湾の『Hearthstone』公式生放送にガスマスクを着けて出演。選手インタビューの中で、香港における自由と革命を促す政治的なパフォーマンスを行った。この間、番組を進行していた2人の司会者は、自らの顔を伏せることで関与を否定していたとみられる。その後、生放送は急遽コマーシャル映像へと差し替えられた。
[BREAKING] Hong Kong Hearthstone player @blitzchungHS calls for liberation of his country in post-game interview:https://t.co/3AgQAaPioj
— ? Inven Global ? (@InvenGlobal) October 6, 2019
@Matthieist #Hearthstone pic.twitter.com/DnaMSEaM4g
Blitzchung選手は同メディアの取材に対して、香港で起きている抗議活動には自身も並々ならぬ貢献を続けており、その情熱は『Hearthstone』の大会出場に専念できなかったほどだと語っている。また、公式生放送における抗議がおよぼす影響は理解していると説明した上で、それでも香港デモに言及することが自分の使命だったと、胸の内を明かした。
『Hearthstone』および同大会を運営するBlizzard Entertainmentは10月8日、本件に関する公式声明を発表した。その中で、Blitzchung選手のパフォーマンスを大会規定の一部に違反する行為と判断。同選手のグランドマスター資格と報酬を剥奪した上で、2020年10月5日までの12か月間、『Hearthstone』における公式大会への出場停止を課した。また、司会者の2人に関しても、同社との契約を即座に打ち切ったことを明らかにしている。
香港では、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案をめぐって、中国政府の香港統治を警戒する民衆による大規模な抗議運動が、7月1日から続いている。10月5日には、香港政府が緊急状況規則条例を発動し、議会の審議を通さずに「覆面禁止法」を制定。デモの参加者が警察の許可なくマスクなどで顔を覆うことを禁止した。これに対して、多くの香港住民がマスク姿で抗議。政府とデモ参加者との衝突が激化している。
Blizzard社は大会規定の中で、大衆の一部もしくは団体に対する攻撃、および同社のブランドイメージを傷つけているとみなされる、いかなる行為も禁止すると明確に記している。今回のBlitzchung選手によるパフォーマンスは、イデオロギーの対立をeスポーツの場に持ち込む行為であり、大会が定めた規定違反に該当する。同社は事態を深刻に受け止め、同様の事案が発生しないよう務めていくと、声明の中で強調している。
ライター/Ritsuko Kawai