ゲームの小売り販売においてストア側の利益配分30%は業界標準。海外メディアがレポートを発表

 Epic Games Store(以下、EGS)のデビュー後、特に注目が高まっているデジタル小売りサービスの利益配分割合。30%の是非を問う議論はファン、開発者問わず行われている。

 そんな中、海外メディアIGNは、実店舗を含む複数の小売りサービスの利益配分を調査。「Steamの30%の取り分は業界標準」と結論づけるレポートを発表した。

(画像はIGN 「Report: Steam’s 30% Cut Is Actually the Industry Standard」より)

 EGSがデビューしたのは2018年12月。上記の図を見てもわかるとおり、ストア側の利益配分は業界でも最安値といえる12%であることが大きな話題となった。また、この利益配分の中にはUnreal Engineのライセンス料も含まれている。
 これよりも少ない利益配分比率を持つストアはitch.ioや、ここには書かれていないKartridgeDiscord Storeなどが知られている。

 itch.ioは売り上げに関わらず0%から販売者が小売店への配分比率を決定できる。Kartridgeは1万ドル以下は0%、それ以降は最大30%まで売り上げに応じて段階的に比率が大きくなっていく。Discord StoreでのDiscordの配分は10%だ。ただし、9月にDiscordはストアとしての機能を各サーバーへと分散したことを発表している。

 出自からしてほかと少し異なるHumble Storeはストア側の取り分は25%だが、実際にHumbleが受け取るのはその中の15%。残りの10%はチャリティかユーザーにストアクレジットとして返却される。
 IGNによれば、GOG.comは基本が30%ではあるが、実際にはゲーム個別に利益配分を話し合っているという。他のプラットフォームとのリリースタイミングやストアクライアントGOG Galaxyとの連携などの条件によって比率は変動する。否定されていないのでおそらく事実だが、顧客はGOG側に連絡して収益を回収する必要があるとされる。この手動プロセスは、Steamの通常の自動支払いよりも時間が掛かるとされている。

(画像はSteamストアよりキャプチャ)

 PCゲーム市場においては多くのデジタル小売りサービスが誕生しているが、SteamとEGSの動向にもっとも注目が集まっているのは間違いない。片や10年以上の歴史を持つ不動の1番手のSteam、片や『Fortnite』によって巨万の富を得た新進気鋭のEGS。この両社が現在市場の覇権を争う主要なプレイヤーだと言っても過言では無いだろう。

 上図にも記されているが、Steamも利益配分については見直しを行っている。1千万ドル(10億円)以上の売り上げでValveへの配分は25%、5千万ドル(53億円)を超えると20%と段階的に割合が下がっていく。ただし、額面を見ればわかるとおり、これはAAAタイトルを世界中で売る開発会社に対してのみに適用されるもので、Valveの顧客の多くの割合を占める小中規模デベロッパーに対しては無関係の数字だ。

 また、2018年後半にはSteamの類似品タブのアルゴリズム変更により、そのページのゲームとの関連性より売り上げが重視されていた疑惑が浮上。2018年12月にValveはバグとして処理したと発表したが、同時期に発表された上記の利益配分の件もあり、特に小規模開発者からValveへの失望感が高まっていた。

(画像はSteamストアよりキャプチャ)

 今年に入ってはSteamサマーセールで行われたレースイベントでも、小規模開発者からを中心に批判が起きた。勝利チームの参加者に、抽選でウィッシュリストで最も人気のタイトルがプレゼントされるという賞品付きのイベントだ。このイベントはユーザーのウィッシュリスト整理を推進させ、どうせなら高いゲームが欲しいという人情も相まってか、特に低価格帯のゲームがウィッシュリストから通常では考えられない量が削除されたことを開発者が報告していた。

 これも意図せぬこととValveは修正しているが、Steam離れといえる現象に対してValveが小規模開発より大規模開発に目を向けた施策を打つというイメージは、より強固なものとなっていると言わざるを得ない。

 Steamの持つフォーラムやレビューを統合した便利なストアフロントはユーザーフレンドリーだが、一部の開発者からは失望されていることもまた事実だ。

(画像はEGS公式ツイッターより)

 一方、一部のゲームファンを中心にEGSへの悪感情も高まっている。特に独占を主な武器とした販売手法に対する嫌悪感は根強い。特に『Metro Exodus』『Anno 1800』など、もともとSteamで予約販売していたゲームを独占するという強硬な手法への批判は、不買運動や開発者自身への批判として噴出することもあった。

 独占を主とした戦略は、ユーザーだけで無く開発会社からも批判されることもある。バンダイナムコエンターテインメントヨーロッパはEGSを素晴らしいストアとしながら、多くの人にゲームを届けるというビジョンでは独占を続ける限りはゲームを販売する予定は無いと語っている。

 また、遅々として進まないストア自体の使いやすさ向上も問題視されている。Epic Gamesは今後追加予定の機能を公開しているが、これまで1ヶ月や半年と期限が指定されていた項目が削除された。現在は「次回」と「今後」というざっくりとした期限に変更となった。これによって開発が遅れると言うことはないだろうが、欲しい機能がいつ追加されるのかが分からなくなったことで批判を受けている。

 しかし、開発者を中心にEGSを支持する声は少なくない。独占販売契約によるEpic Gamesからの支援は大きく、「ゲームを1本も売らなくても利益が出る」とまでささやかれている。事実は不明だが、数年の開発期間と売れた分だけ利益を得るという不安定なゲーム開発という職業を続けるには、この安定性は何ものにも代えがたい特徴だ。他にも、毎週変わる無料のゲームもユーザーにとっては大きな利益だ。

(画像はPixabayより)

 ここまで振り返って分かるのは、単純に利益配分率だけで現在の市場を分析するのは難しいということだ。もしあなたがゲームを開発して売ろうと思ったなら、どういった戦略を採るべきか考えてみるのも良いかもしれない。

ライター/古嶋 誉幸

ライター
一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
Twitter: @pornski_eros
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