韓国トッププロ棋士の李世ドル(イ・セドル)九段が現役引退を表明したことを、韓国メディアYonhap News Agencyが報じている。李九段は2016年にGoogle DeepMindが開発した囲碁AI「アルファ碁」と対戦した。1-4で敗北したものの、AIプレイヤーに勝利したのは李九段だけの快挙だ。
引退に際し李九段は、Yonhap News Agencyに対し「必死に努力してナンバーワンになっても、自分がトップではないことに気付きました。私がナンバーワンになっても、打ち負かすことのできない存在があります。」と語っている。
東亜日報によると、今年3月には中国の棋士柯潔(コ・ジェ)九段に敗北したあと、「おそらく今年が最後になるだろう。」と引退の意向を示していたという。勝負の世界を去っても囲碁界でやるべきことはたくさんあると、一線を離れた今後も囲碁との付き合いは絶たないようだ。
引退を記念した対局として、12月には韓国NHNが開発した囲碁AI「ハンドル」と三番勝負に臨む。ハンドルはNHNが『ハンゲーム』の囲碁で培った技術とデータを利用したソフトウェアだ。
李九段は1995年に12歳でプロに昇格し、プロ引退までの24年間に世界大会で18度、韓国大会で32回の優勝を果たしている。韓国棋院の公式集計によると、生涯獲得賞金は約9億円になるという。
アルファ碁を製作したDeepMinedのCEOデミス・ハサビス氏は李九段の引退に対して海外メディアThe Vergeに「九段はアルファ碁との対戦で”真の戦士の精神”を示しました。今後の活躍を願っています。世界最高の囲碁プレイヤーとして記録されることは間違いありません。」と語っている。
ライター/古嶋誉幸