サンドボックスゲーム『マインクラフト』のJAVA版に向けて、マップ「The Uncensored Library」(検閲なき図書館)が「世界反サイバー検閲デー」である3月12日に発表された。
「検閲なき図書館」は、ロシアやインドネシアなどによって検閲された情報や作品を『マインクラフト』を通じて閲覧できる巨大図書館のようなマップだ。『マインクラフト』でさまざまなコンテンツを展開するスタジオBlockworksが、言論の自由を求めるジャーナリストの非政府組織「国境なき記者団」と協力して制作した。
現在多くの国で政府に不利な情報や見解を示すウェブサイトやSNSをブロックするインターネットの検閲が行われているが、『マインクラフト』はそういった国でも規制されずに遊ぶことができるゲームのひとつ。それを逆手に取り、『マインクラフト』内に政府が検閲するような文章をまとめた図書館を作り、誰もがアクセスできるようにするのが「検閲なき図書館」プロジェクトである。
国境なき記者団は発表で、政府に有利な情報のみを流す国で育った若者であっても、『マインクラフト』のファンは多いと語っている。そういった人々が慣れ親しんだシステムで、検閲され通常では入手できない情報にアクセスできる場を作るのが狙いだという。
マップ「検閲なき図書館」は、ロシア、ベトナム、サウジアラビア、メキシコ、エジプトの5カ国と国境なき記者団の6つのセクションに別れている。各国のセクションにはそれぞれの国によるジャーナリズムへの検閲や攻撃をイメージした装飾がなされており、たとえばメキシコであれば殺害されたジャーナリストの遺影が飾られている。国境なき記者団の集計によれば、ジャーナリスト投獄数が世界3位というサウジアラビアのセクションには、中央に巨大な牢屋が鎮座している。
各国のセクションの入り口には、その国の検閲の状況と世界報道自由度ランキングが記された本が設置されている。メインフロアでは各国で検閲されたジャーナリストの作品の英語版とその国の言語版を読むことができる。右から左へと綴るアラビア語は音声再生によるオーディオブックが設置されており、どの国のユーザーであっても現地の言葉で情報にアクセスする配慮がされている。
BlockWorksはこの図書館を製作するため、16か国から24人の『マインクラフト』ビルダーが3ヶ月を掛けたという。1250万ブロック以上が使用されており、メインドームの幅は約300メートル。デザインには新古典主義の建築様式が用いられている。古代ローマとギリシャに原点を持つ新古典主義建築は、世界中の図書館や美術館などで用いられる、文化や知識を表すためによく使用される建築様式だという。
「検閲なき図書館」はJava版『マインクラフト』バージョン1.14.4用に制作されており、国境なき記者団がホストするサーバーにはこのバージョンでなければ接続できない。「Minecraft Launcher」の起動構成から過去のバージョンをインストールことが可能だ。
図書館にアクセスする方法は、Java版『マインクラフト』バージョン1.14.4から「visit.uncensoredlibrary.com」サーバーに接続するか、公式サイトからマップをダウンロードする2種類がある。
ダウンロードしたファイルを『マインクラフト』のセーブフォルダにフォルダごと入れるとオフラインでもマップを見て回ることが可能だ。詳しいインストール方法は、付属のpdfファイルに記されているのでそちらを参照してほしい。なお、マップをダウンロードした場合、動作の保証外ではあるが最新のバージョン1.15.2でもマップを見て回ることができる。
インターネットが検閲されている国民は、一般的にVPNやTorなどの技術で政府に検閲された情報にアクセスしている。しかし、中国やロシアなど世界各国で、VPN接続の規制強化や違法化が幾度となく報じられている。検閲を行う国家がこういった技術を見逃すことはないだろう。そういった状況で『マインクラフト』に目をつけたのは面白いアイデアだ。とはいえ、この動きも広く知られれば国家に目をつけられることは間違いなく、『マインクラフト』の排斥が起きないことを祈るばかりだ。
ライター/古嶋誉幸