ゲームクリエイター・グラフィックデザイナーとして活動する「よろず工房たまや」代表の“たまさん大王”こと玉谷純氏が、自身のデザインした『ドラゴンクエスト』シリーズに登場する「ロトのつるぎ」や「天空の剣」などのデザイン画をTwitter上で公開し、話題となっている。
#コロナばっかりで気が滅入るからカッコいい武器貼ろうぜ
— たまさん大王「よろず工房たまや」代表 (@tamasan_daiou) March 16, 2020
私が色んなゲームのためにデザインした剣を見てやってください。 pic.twitter.com/EZF7IrafSp
玉谷純氏は、『プリンセスメーカーQ』、『綾波育成計画』で監督、『電脳学園』、ゲーム版『ふしぎの海のナディア』でグラフィック監督、また『ドラゴンクエスト』シリーズや『プリンセスメーカー』シリーズでコスチューム、武器、アイテムデザインを担当したことがある人物。最近では、テレビドラマ『勇者ヨシヒコと導かれし七人』に登場した「トドメの剣」も玉谷氏がデザインしたものだという。
ことの発端は、Twitterユーザーの間でも盛り上がっていたハッシュタグ「#コロナばっかりで気が滅入るからカッコいい武器貼ろうぜ」で、玉谷氏が自身のデザインした「ロトのつるぎ」のデザイン画を投稿したことだ。ロトのつるぎを玉谷氏がデザインしたことは『ドラゴンクエスト』シリーズのファンでもほとんど知られていなかったため、この投稿には大きな反響があった。
これに伴い、玉谷氏からなぜ「ロトのつるぎ」のデザインをすることになった経緯が語られることになった。
④アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画『コナン・ザ・グレート』でコナンが、狼から逃げるために入り込んだ墳墓で手に入れた剣。別名「アトランティスソード」でした。実はこの剣だけ市販されてるレプリカグッズだったのです。 pic.twitter.com/LhLQaEqUAl
— たまさん大王「よろず工房たまや」代表 (@tamasan_daiou) March 19, 2020
当時、特撮グッズなどを製造、販売していたゼネラルプロダクツに所属していた玉谷氏は、ある日、映画評論家の中子真治氏が集めていた海外特撮映画のコレクションを見に行くことに。そこにあったのが映画『コナン・ザ・グレート』のコナンソードだ。この剣はユニバーサルスタジオで市販されていたレプリカグッズで、コレクションを拝見した玉谷氏を含むゼネラルプロダクツのメンバーに強く印象に残ったという。
この『コナン・ザ・グレート』のコナンソードの記憶もあり、ゼネラルプロダクツが次に販売するソフトビニール製のグッズを企画するときに、自然と「剣」を制作することが決定。さらに知名度からコンピューターゲームRPGを牽引していた『ドラゴンクエスト』シリーズの「ロトのつるぎ」に決まったという。
⑲次の大きな仕事の前に「1/1ソフビキット ロトの剣」が発売!パッケージもマニュアルも私が制作しました。丁寧に作れば芸術品の味わいがありますね。 pic.twitter.com/EFO1McOZQ5
— たまさん大王「よろず工房たまや」代表 (@tamasan_daiou) March 19, 2020
しかし、当時「ロトのつるぎ」は公式のデザインが存在していなかったため、玉谷氏がデザインすることに。やはり最初にインスピレーションがあったコナンソードを参考にして、刀身に書かれていた呪文のような文字も踏襲しつつ、SF作家の菅浩江氏からいただいた「ルーン文字解読表」を参考にしつつ、デザイン。他のアイテムなどのデザインと一緒に企画書にしてエニックスに売り込んだという。
玉谷氏が聞いた話によると、他のメーカーは鳥山明氏の絵のグッズを作りたい企画だったところ、アイテムを自分たちでデザインして持ちこんできた会社は珍しいとして、エニックスから喜ばれたという。そこから玉谷氏は、他にも『ドラゴンクエスト』シリーズのアイテムデザインをまかされ、エニックスと堀井雄二氏とキャッチボールしながら、完成させていったという。
一応デザインしてますが、掲載時に変更されてる部分もあるので・・・ pic.twitter.com/CO9mSvfJCh
— たまさん大王「よろず工房たまや」代表 (@tamasan_daiou) March 18, 2020
会社(ガイナックス)で請けた仕事なのでので名前出てないんですけどね。#ドラゴンクエスト では、初期の頃のアイテムはほとんどデザインしました。出版されたときのクリンナップは別の方がされてます。 pic.twitter.com/1BN5hwePer
— たまさん大王「よろず工房たまや」代表 (@tamasan_daiou) March 17, 2020
こうして、もともとはソフトビニール製の「ロトのつるぎ」のグッズから始まった企画だったが、玉谷氏は他にも「やみのランプ」、「キメラのつばさ」、「ロトのしるし」、「ルビスの守り」などのデザインを手掛けることとなり、初期の『ドラゴンクエスト』シリーズを象徴するアイテムデザインの一翼を担うこととなった。こうしたアイテムは、『ドラゴンクエスト』の公式ガイドブックで、イラストレーターの近藤ゆたか氏や漫画家の加藤礼次郎氏などが清書した形で見ることができる。
誰かまとめてくれないかなあ、と思ってたら、もうまとめられてた。
— たまさん大王「よろず工房たまや」代表 (@tamasan_daiou) March 20, 2020
「ドラゴンクエストでは、初期の頃のアイテムはほとんどデザインしました」たまさん大王さんによる『ロトの剣』デザイン制作秘話。 #ドラゴンクエスト #ロトの剣 – Togetter https://t.co/lYiXGMGQJO @togetter_jpから
こういったことは会社で請けた仕事のため、これまで玉谷氏の名前は表には出てこなかったという。玉谷氏は『ドラゴンクエスト』シリーズの数々のアイテムのラフ画や、『ドラゴンクエスト ファンタジアビデオ』の裏話も披露しており、togetterでもまとめられている。まさに「人に歴史あり」な内容だが、より詳細な経緯を知りたければ、実際に玉谷氏のツイートを参考にしてみて欲しい。
ライター/福山幸司