「ドリフト走行」とは、ステアリング、アクセル、ブレーキ、サイドブレーキ、クラッチを巧みに操作し、車体を横滑りさせて走らせるテクニックだ。ドリフトは車体やコースを痛めることにもつながるが、なによりも見た目がかっこいい。
そんなドリフト走行をテーマにしたレースゲーム『Inertial Drift』は、ハンドルコントローラーでは操作不可能、コントローラー操作に特化した「ツインスティックレースゲーム」だ。
パブリッシャーのPQube Limitedは、Level 91 Entertainmentの開発するドリフトレースゲーム『Inertial Drift』の無料体験版『Inertial Drift: Sunset Prologue』をSteamにて配布中だ。本編は2020年9月11日(金)に発売される予定。海外メディアのAlpha Beta Gamerがこの話題を報じている。
タイトル通りドリフトをテーマにしたゲームだが、ストアページに「今知っているドリフトについての知識は、一旦すべて忘れてください」と注意書きされるほど既存のレースゲームとはことなるドライビング体験を提供する。
筆者は実際に体験してみたが、既存のレースゲームとは大きく違う操作感に戸惑った。しかし、簡単操作でドリフトが堪能でき、なおかつレースゲームとして競い合うことを念頭に置くとなるほどこの操作は理にかなっているとも思う。
普通のレースゲームであれば、ドリフトをしようと思ったらいくつかの段階を踏んだ操作が必要になるが、本作では右スティックを左右に動かすだけで後輪をその方向に滑らせられる。右コーナーを的確に曲がりたければ、後輪を左に振ってやれば良い。ドリフト走行自体はかなり簡単な操作でできる。
その一方で、左スティックによるステアリング操作ではほとんど曲がれない。せいぜい直線路を反対車線に徐々に移動できる程度と、「直線番長」と呼ぶにふさわしいコーナリング性能しかない。
つまり、レース中ほとんどのコーナーでドリフトを利用することになる。また、ドリフト中にアクセルを離す、あるいはブレーキを踏むとより素早く大きく後輪をスライドできるので、どのタイミングでブレーキを踏むか、アクセルを離すかといったテクニックが重要となる。
タイトルのInertial Driftとはドリフトテクニックのひとつ、ステアリング操作のみでドリフトを行うテクニックである慣性ドリフトから来ている。ゲームの内容を端的に表したタイトルだといえる。
このプロローグ版で利用できる車種は初心者向けの「Coda Gecko」と、基本性能は高いがドリフト性能がピーキーな「HPE Dragon」の2種類。コースは比較的走りやすい「Lakeside Loop」と、テクニカルでスピードを大きく落とすダートもある「Sunset Sea Circuit」の2種類が存在する。
車両によってドリフトのタイミングが全くことなるので、コースと車両によってプレイフィールが大きくことなる。特に「HPE Dragon」は、ドリフトのタイミングがつかみにくいので上級者向けだ。
アーケードスタイルのレースゲームということで、グラフィックはアニメと実写の中間あたりに位置するようなスタイルになっている。ゲームの全体的なイメージは90年代のレトロフューチャーがモチーフで、ネオンサインきらめく都市やその周辺でのレースとなる。
セルシェーディング風の車両は、アニメ版『頭文字D』のレースシーンも意識しているだろう。そしてもちろん、ブレーキを踏めば映画『AKIRA』の様にテールランプが尾を引く演出も搭載済みだ。
アニメ化を見越しているのかは分からないが、トレイラーにはアニメがふんだんに使われている。本編ではストーリーにも力を入れるようだ。
通常のレースゲームとして遊ぼうと思うと全く異なる感覚に戸惑うかもしれないが、本作はドリフトアクションゲームというべき内容だ。ちょっと変わったレースゲームに興味がある方、ドリフトが大好きだけどレースゲームは苦手という方にはぴったりだ。
ライター/古嶋誉幸