「自分が開発しているゲーム・ジャンルをプレイするのが苦手」な開発者たちが海外で話題に。『ダクソ』が嫌いなソウルライクゲーム開発者、自分が作った対戦ゲームでボコられる開発者など

 「ゲーム開発者は、自身が作っているゲームやそのジャンルの上級者だ。なぜならそのジャンルを完全に理解し、ゲームを作るほどの知識も持っている。自分が作ったゲームをクリアできないゲーム開発者などいるだろうか」……というのは、完全な誤解だったようだ。Twitter上でさまざまなゲーム開発者たちが、自身の「ゲーム苦手話」をシェアしている。

 きっかけは、ゲームジャーナリストのパトリック・クレペック氏。氏は一人称視点パズルゲーム『Manifold Garden』の開発者にインタビューし、そこで「実はパズルゲームが苦手」という答えを受けて驚いたという。

 そこで「実はゲーム開発者にもゲームが苦手な人は多いのでは」と考えた氏はTwitter上で、同じように自分が作っているゲームやそのジャンルが苦手な開発者がいないかどうか質問し、多数の回答を得ている。

 最初に紹介したいのは、『Mortal Shell』『Ashen』といった『ダークソウル』に影響を受けた高難度アクションゲームを作ったPatty!ことパティ・シャノン氏の回答だ。氏は、8月18日にリリースされた『Mortal Shell』の戦闘デザインを手がけている。「私はふたつのソウルライクゲームに取り組みましたが、『ダークソウル』やそのジャンルに憎悪を抱いていて、ゲームをクリアしたことはありません」と語る。

 とはいえ「ソウルライクジャンルが嫌いな人間としての視点でゲームをデザインするのは大好きだ」とも追記している。嫌いな人間の視点から、人々がそのジャンルの何が好きかを考え、より利用しやすくしていると語っている。

 歯ごたえのある戦闘が楽しめる『Mortal Shell』だが、ジャンルが嫌いな開発者が怒りを込めてデザインされたといわれると納得できる部分もある。何が嫌いかを分析すれば、何がおもしろいかを導くことができるようだ。

 一方、同じく2Dのソウルライクゲームを開発するペドロ・マチャド氏は「ソウルライクジャンルが苦手だったが開発中に何度もプレイテストを行うので、最終的には上達する」と語った。

 自分やテスターがどんどん上達する中で彼らの意見を反映し続けた結果、最終的に“とんでもなく難度の高いゲーム”ができあがるという話を聞いたことがある方もいるかもしれない。自分の上達に合わせすぎたゲームの難易度設定は危険だろう。

(画像はMortal Shell』公式サイトより)

 このほか「ホラーゲームが苦手」だというホラーゲーム開発者も多い。たとえばアレックス・ドリスコール氏は「ホラーシューターを作っているが、実際は簡単にパニックに陥るためホラーゲームはプレイできない」と明かしている。

 『ボーダーランズ3』のゲームデザイナーであるガブリエル・バジーナ氏は「ホラーゲームを作るのは私の人生でやりたい100のことリストに入っています」と語った。ただし「自身を史上最悪のゲームプレイヤー」であるとも形容しており、一人称視点のホラーゲーム『P.T.』「最終的に頭をシャツの中に隠してプレイした」と語っている。

 また、HYACINTH氏はホラーゲームは問題ないが、ホラーゲームに良くあるパズルがあまりに苦手だ。ホラーゲームを作るかたわら、ほかのホラーゲームをプレイするストリーミングを毎週一度配信しているものの、常に「ほかの人にガイドしてもらっている」という。

 ホラーゲームはよく「怖がりな方が楽しめる」と言われるが、ゲーム開発も似ているのかもしれない。特に個人開発者の場合、多くは開発者自身がプレイテスターにもなる。ホラーゲームが苦手だとプレイテストはかなりの苦痛を伴いそうだ。

 対戦を主眼に置いたゲームでは、この傾向は顕著だろう。『フォートナイト』の品質保証やプレイテスターを率いるライアン・ラインバーガー氏は、2016年からゲームをプレイしているがいまだに一度もビクトリーロイヤルを拝めていないという。

 DICEで『バトルフィールド』シリーズなどの開発に携わったファウジ・メスマー氏は「『バトルフィールド』のプレイヤーは本当に、本当に上手です……」と言葉少なげに語っている。

 リアルタイムストラテジー『コマンド&コンカー 3』『コマンド&コンカー 4』のリードデザイナーを務めたサミュエル・バス氏は、ゲームの発売から数時間後にはマルチプレイ対戦でほかのプレイヤーにボコボコにされていたことが、ゲーム開発でもっとも楽しかった経験だという。

 ヒーローシューター『Paladins』や忍者TPS『Warframe』の開発に携わったアンドリュー・ヨーダー氏は、このような現象は「対戦ゲームを作る開発者にとって一般的なもの」だと考察。eスポーツプロほどゲームがうまい開発者はほとんどいないが、おもしろい対戦ゲームを作る事と対戦ゲームがうまいことは必ずしも関連しないとしている。

(画像はSteam『バトルフィールドV』より)

 ゲームの開発が大規模化し、分業が当たり前となった昨今ではこれも当然といえるだろう。高難度アクションゲームのシナリオライターが自分の参加したゲームをクリアできない、というのは想像しやすい。
 『Mortal Shell』の戦闘をデザインするソウルライクの嫌いなゲーム開発者や、ホラーゲームが苦手なホラーゲーム開発者といった、ある意味で自分の強みを活かしたゲーム開発者もいる。これもゲーム開発のアプローチの多様性を示しているといえるだろう。

 上記のような意見に対し、少数ながら「ゲームが得意だ」という開発者の証言も投稿されている。Electronic Arts(EA)でゲーム開発を行ったジェームズ・バーグ氏は、2010年に発売された『NBA JAM』の開発者は自分たちが作ったゲームが得意で、氏を含む開発チームの動きはゲームの最高難度のAIに反映されていると語っている。

 趣味でゲームを開発するというD. W. O’Boyle氏は「一般的にゲーム開発者のゲームの腕は平凡」で、プレイヤーが発見する高度なトリックは多くの場合で「意図したのではなく、幸福なアクシデントに基づく」としている。
 前述のペドロ・マチャド氏もこれに同意し、ストリーマーやゲームのジャーナリストは平均して開発者よりゲームがうまいと認めている。

 最後に、ゲーム苦手話の中でも特に印象に残ったふたつのツイートを紹介したい。ひとりは「いちゃいちゃするゲームを作った“あと”に、現実でイチャイチャする方法を知った」そうだ。

 もうひとりのPatrick Klug氏は、「ゲーム開発が苦手なのにゲーム開発シミュレーションゲームの『Game Dev Tycoon』を作った」と自虐してみせた。

 どちらも笑って良いのか悲しんで良いのか分からないが、最後のまとめにはもってこいの「ゲーム開発者はゲームが苦手」話だ。ゲームジャーナリストのパトリック・クレペック氏はこれらの回答をまとめて海外メディアViceにて公開しており、他の意見が気になる読者はチェックしてみてほしい。

ライター/古嶋誉幸

ライター
一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
Twitter: @pornski_eros
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