香川県が4月1日に施行した「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」(以下、ゲーム規制条例)は憲法に違反しているとして、県内の高校生とその母親が香川県を相手取り損害賠償を求めて、高松地裁に提訴した。NHKなどが報じている。
本日香川県を相手取り提訴致します。
— わたる【ゲーム条例裁判】 (@n1U5E6Gw119ZjGI) September 29, 2020
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このゲーム規制条例は、18歳未満の子供を持つ親を対象に、ゲームやスマートフォンの利用時間を家庭内で制限するルール作りを推奨する条例。ゲームであれば平日は1時間、休日は1.5時間。スマートフォンの利用は22時以降は使用を禁止を推奨するなど、具体的な数字が数字が出されている。
しかしこの条例にはさまざまな問題点が指摘されている。
まず成立プロセスに疑念が寄せられており、条例検討委員会で議事録が作成されなかったり、会議が一般に公開されなかった点などから、透明性と公平性に問題があったとしている。さらに条例制定の根拠のひとつとなっているパブリックコメントには、似たような文言や同じタイプミスが見受けられ、同一人物によるものではないかと指摘されている。
さらに政府は今年2月に「ゲーム依存症の発症を防ぐためのゲーム時間の制限に係る有効性及び科学的根拠は承知していない」と答弁し、ゲーム規制条例の科学的根拠を認識していない見解を示した(参考リンク)。
今回、高校生とその母親が問題にしているのは、上記のパブリックコメントの疑念と議事録の問題に加えて、ゲームの利用時間の策定の根拠となっている資料に、高校生が調査対象に含まれていないこと。さらに憲法13条の自己決定権を侵害している可能性が高いことを論点としている。
提訴した高校生の渉さんは、以前にも595通の反対署名を提出した人物。今回の提訴については事前にその費用をクラウドファンディングで集め、のべ1844人の支援者から500万円を目標のところ、612万1500円を集めることに成功した。
この裁判をして、仮に条例の立法目的に正当性が認められたとしても、親や子供の基本的人権を必要以上に制限されていることを主張する狙いがあるという。
今回の件は、現役高校生が県を相手取り裁判を起こすという、とても社会的なインパクトのある出来事といえるだろう。また今後の日程は裁判所の判断だが、どのような判断や情報が出てくるか、とても要注目の裁判といえそうだ。
ライター/福山幸司