任天堂は、ファンが製作した非公認のハックROMゲーム『The Legend of Zelda: The Missing LINK』(ゼルダの伝説 ミッシングリンク)が著作権を侵害しているとして、開発チームに公開を停止するよう求めた。海外メディアTorrentFreakが報じている。すでに『ミッシングリンク』公式サイトと、ファイルのミラーリングを行っていたgithubのページは閉鎖されている。
ハックROMとはコンソールゲームなどの内部データであるROMファイルを改造した、異なるゲームファイルを指す。『ゼルダの伝説 ミッシングリンク』はパッチとしてインターネット上で配布されており、ゲームを遊ぶにはNINTENDO64の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のROMファイルが必要とされていた。
『ゼルダの伝説 ミッシングリンク』(以下、ミッシングリンク)は、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』と『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』のあいだを描くゲームとして、複数のファンが数年にわたって製作を続けてきた。
ゲームのプレビューを今年7月に掲載した海外メディアEurogamerによると、ゲームには時の砂時計が登場し、リンクの時間を10秒間巻き戻すことができたのだという。たとえば、ジャンプでは戻れない低い場所にスイッチがあった場合、飛び降りてからスイッチを押し、時の砂時計の力で10秒前の元いた場所に戻るというような使い方ができる。
TorrentFreakによると、任天堂はこの申し立てで『ミッシングリンク』を配布することは「フェアユース(公正利用)にはあたらない」との考えを示していたという。
アメリカ合衆国の著作権法107条では、著作物を権利者の許諾を得ずに使用しても、その理由や目的、権利者の売上や利益の減少をさせるかなどによってはフェアユースであると認められ、権利の侵害にはあたらないとされている。
また同サイトは、『ミッシングリンク』の開発チームに対する訴訟も予定されていないものの、ファイルを削除するDMCAテイクダウン(ノーティス・アンド・テイクダウン)が適応されている状況だと報じた。
※ノーティス・アンド・テイクダウンとは、権利侵害を主張する者からの通知により、プロバイダが、権利侵害情報か否かの実体的判断を経ずに、当該情報の削除等の措置を行うこと(参考リンク)。
2020年に入り、インターネット上では任天堂の著作物が幾度かリークされている。これまで『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』や『スーパーマリオ64』、NINTENDO64本体のソースコードや『ポケットモンスター 金・銀』の体験版とされる無数のファイルがオンライン上で拡散された。
だが任天堂は自社の著作物を使った作品や二次創作に対して厳正な対処を続けている。ソースコードを使い、『スーパーマリオ64』のPC版をファンが製作しようとしたファンの非公認プロジェクトも、任天堂によって著作権侵害の警告により削除された。
また、『スーパーマリオブラザーズ35』に先駆けて『スーパーマリオブラザーズ』をバトルロイヤルに改造した『Mario Royale』や、ポケモン風のゲームを作成できるツール『Pokémon Essentials』など、ゲームのファイルを流用・改造するような類のものでなくとも権利を侵害するゲームの公開を停止させている。
なお今回の『ミッシングリング』のように、任天堂が「フェアユース」にまで言及して作品を削除しようとする例はほかでは見られなかった。インターネット上ではファンゲームという名のもと、多数の作品が公開され世に出続けている。
ライター/古嶋誉幸