イギリスのダグラス・チャップマン下院議員が、自動化プログラムを使ったゲーム機の高額転売を規制する法案「ゲーミングハードウェア(自動購入および再販)法案2019-21」を下院に提出した。イギリスのニュース専門チャンネル「Sky News」が報じている。
この法案では自動化プログラム(BOT)によって複数のゲーム機を手に入れ、それをオークションサイトなどで高額で販売する行為の規制を目的としたものだ。消費者がゲーム機やコンピューター部品を、メーカーの定めた価格以下で購入できる市場を目指す。イギリスではこの行為は違法ではないが、チャップマン下院議員はそれらを犯罪だと見なしている。
ただし、議員はこの法案が成立する可能性が低いことも認識している。真の狙いは問題提起にあり、政府がこの問題について「責任を取る」ように圧力をかけるのも目的だとSky Newsに対してコメントしている。
2020年11月に相次いで発売された次世代ゲーム機は、十分市場に出回っているとはいいがたい状況だ。日本を含む世界中で、ゲーム機を求める人々が抽選や突発的な店頭販売などに望みを託している。
ニューヨークタイムズは、Xbox Series X|Sの広報責任者であるマイク・スペンサー氏が、少なくとも2021年6月までは品薄の状態が続くと発言したことを報じている。
需要が上がれば値段も上がる。誰もが欲しがるものを手に入れ、高額で転売する行為も横行している。上記のスクリーンショットは海外向けオークションサイトebayの状況だが、小売価格の2倍以上の値がついているものもある。
大きな利益が見込めるため、こうした転売行為は組織的に行われることもある。ある転売グループはツールを使って3500台以上のPlayStation 5を入手し、大きな利益を上げていると主張していることが報じられた(参考リンク:Gaming Bible)。「ゲーミングハードウェア(自動購入および再販)法案2019-21」が規制しようとしているのは、こういった悪質な転売行為だ。
各小売店も転売対策に尽力しており、同じ住所からの複数購入を禁じたり、日本では会員やお得意様に販売するといった方法も採られている。一方、対策されているにもかかわらず、抜け穴を見つけ出し転売が横行しているのも事実だ。ある調査によると、PS5の転売市場は150億円規模だと試算されている(参考リンク:DEV)。
PS5を販売するソニー・インタラクティブエンタテインメントも、日本の大手マーケットサイトメルカリを運営するメルカリ社に転売防止の協力を要請するなどといった動きを見せている(参考リンク:ITmedia News)。
イギリス同様日本でもゲーム機の転売自体は合法だ。しかし、イギリスにはこの状況をよしとしない議員が複数いることも間違いない。「ゲーミングハードウェア(自動購入および再販)法案2019-21」に、チャップマン下院議員を含めた32人の議員が署名している。
ライター/古嶋誉幸