映画芸術科学アカデミーは「第93回アカデミー賞」について、一人称視点シューティングゲーム『メダル・オブ・オナー:アバブ&ビヨンド』のために撮影されたドキュメンタリー映画『コレット』をアカデミー短編ドキュメンタリー賞にノミネートした。結果は4月26日(月)に開かれるアカデミー賞受賞式の場で発表される予定だ。
On behalf of everyone at @Respawn, we are incredibly honored that "Colette," the documentary short that was shot for Medal of Honor: Above & Beyond, has been nominated for an Academy Award for Documentary Short Subject. pic.twitter.com/HQKpZtd0kA
— Medal of Honor (@medalofhonor) March 15, 2021
Oculus Rift、SteamVR向けなどVR専用タイトルとしてリリースされている『メダル・オブ・オナー:アバブ&ビヨンド』は、昨年12月に発売したFPS。『タイタンフォール』や『Apex Legends』で知られるRespawn Entertainmentが開発しており、第二次世界大戦中のヨーロッパが舞台だ。プレイヤーはレジスタンスを支援する工作員となりナチスドイツとの戦いに身を投じていく。
本作には、8人の生き残った退役軍人に関する短いドキュメンタリーがいくつか収録されており、ゲームを進めて行くとアンロックされて視聴が可能となる。このドキュメンタリーは退役軍人を支援する非営利団体「Honor Flight」とRespawnが協同して制作したもので、退役軍人を実際に戦闘や悲劇があった場所に連れて行き、そこで何が起こったのかを証言してもらうという内容となっている。
今回、アカデミー短編ドキュメンタリー賞にノミネートされたのは、24分の『コレット』という作品。レジスタンスに所属し強制収容所で兄を殺されたことがあるコレット・マリン・キャサリンさんにフォーカスをあてた作品だ。現在90歳となるこの女性は、戦後74年もの間、ドイツを訪れるのを拒否していたが、歴史を学ぶ学生・ルーシーさんと出会うことにより心境が変化していく。コレットさんは兄の死と向かい合い、ルーシーさんを通して戦争の重要な教訓を観る人に教えてくれるものとなっている。
この短編ドキュメンタリーは、イギリスの大手メディア「ガーディアン」が観客から寄付を募る形でYouTubeにて無料公開をしている。日本語字幕はついていないが、ゲーム本編を持っていない人でも視聴できるので、英語がわかる人は視聴してみて欲しい。視聴した人からは「感動的で尊厳がある作品」、「涙がとまらなかった」、「心が痛いが、なんて力強い女性なんだ」といった賞賛の声が寄せられている。
本作には他にも、ノルマンディーの農場に墜落した落下傘部隊に所属していた元兵士が、現在その場所に戻ってみると、それを目撃したことがある年老いたフランス人と出会うエピソードや、親友が殺された場所に戻って元兵士に証言をしてもらう内容など、戦争の生々しい証言が記録されたドキュメンタリーが収録されている。
ビデオゲームの中にドキュメンタリーが収録されているのは、アラスカ先住民の少女を描いたゲーム『Never Alone (Kisima Ingitchuna)』などがあり、また第一世界大戦を題材にした『バリアント ハート ザ グレイト ウォー』では、戦争の写真などの実際の資料をゲーム内で閲覧することができた。
こうしたゲーム内のアーカイブが独立してアカデミー賞にノミネートされることは初めてで、ノミネート自体がビデオゲーム史に残る出来事といえる。第93回アカデミー賞の受賞結果は4月26日発表だ。