ゲームを開発するXPLORER SIXは、2000年前後の日本のインターネットをテーマにした『餓史シャチの幸』をSteamで5月4日(火)にリリースする。3月にVectorにてフリーゲームとして配信されていたが、Steamでもリリースとなる。すぐにでもプレイしたいという方は、Vectorからダウンロードして遊んでみてほしい。もちろん日本語対応だ。
『餓史シャチの幸』は、謎のホームページ「餓史シャチの幸」を始点に、現実には存在しないページをネットサーフィンしながら謎を解くパズルゲームだ。この「餓史シャチの幸」にはさまざまなコンテンツのURLがリンクされており、それらを探索しながらインターネットのさらに深い場所へと足を踏み入れることになる。
2000年前後のPCやインターネットを知る特定の世代にとっては、上記のスクリーンショットを紹介するだけでおおよそのゲームプレイは理解していただけるだろう。デスクトップ風の背景も含め、すべてゲーム画面だ。
ゲームは主に架空のウェブブラウザ「Internet Xplorer」上で行われる。ページ内のリンクをクリックしたり、アドレス欄に直接URLを打ち込むことでほかのウェブサイトにアクセスできる。戻るや進む、ホームなど、「Internet Explorer」とよく似た機能をいくつか持っている。
たとえば、「全知ドア」というウェブサイトにアクセスすると、扉の画像が中央に置かれているだけのウェブページが表示される。ドアをクリックすると、「ディン」というあまりにも懐かしいエラー音とともに問題を伝えるポップアップメッセージが表示される。
こうした謎に対応したキーとなるアイテムを、さまざまなページから探し出すことがパズルを解くことにつながる。アイテムをピックアップするのはスポイトツール。スポイトツールで獲得したアイテムを正しい場所で使うと、隠しページにアクセスできる。「全知ドア」のページをよく探してみてほしい。ドアを開けられそうなアイテムが置かれていないだろうか。
本作は見た目にもまさに2000年代のインターネットという雰囲気だが、同じかそれ以上に力が入っているのがサウンドエフェクトだ。エラー音の懐かしさは前述の通りだが、耳を澄ましてみると、時折「ぶうううううん」というハードディスクが回る音が聞こえるのにも気がつくだろう。
ゲームの画面サイズは今では珍しい4対3の1024×768のみに対応。これは2000年ごろの一般的なモニタサイズと同じだ。ゲームを起動するとOSのログイン画面が表示される。そして、一部の画像は右クリックからデスクトップの画像に設定することが可能。こういった細かなリアリティの積み重ねが、特定の世代に突き刺さるノスタルジーを作り上げている。
隠しページを探すという行為自体も懐かしく、なまじ当時の雰囲気を完全に再現しているだけに「tabキーで隠してあるボタンを見つけたい」や「ソースを読みたい」という欲望もわき上がってくる。残念ながら、「Internet Xplorer」はこれらの機能に対応していない。
2000年のインターネットは、今のインターネットでは失われた「アングラ」感があったように思う。SNSほど近くはないが、現実世界ほど離れてもいない。独特の距離で感じる他人の存在は、『餓史シャチの幸』でも確かに感じられる。当時を知る人も知らない人も、一度味わってみてほしい感覚だ。
ライター/古嶋誉幸