Epic Gamesが提供するUnreal Engineの公式ブログにて、人気テレビアニメ『ヒーリングっど プリキュア』での利用例を紹介する記事が掲載された。
『プリキュア』シリーズは2004年の『ふたりはプリキュア』から現在まで続く大人気テレビアニメシリーズ。基本的には2D作画を利用しているが、エンディングアニメや映画の一部などで3DCGを採用している。
シリーズが初めて3DCGのエンディングを採用したのが、2009年放送の『フレッシュプリキュア!』。ダンスをテーマにした『プリキュア』ということでエンディングもダンスとなったが、以降のシリーズでもエンディングでは3DCGのダンスアニメが定番となった。
3DCGを使用したアニメとしては日本屈指の知名度と人気を誇り、CG・映像専門誌「CG World」でも継続して紹介されている。2Dアニメとほぼ同等の3DCGが踊る『フレッシュプリキュア!』の衝撃的な3Dダンスアニメから10年が経ち、日本でトップレベルの3DCGアニメーションを使用するシリーズとして知られるようになった。
最新作『ヒーリングっど プリキュア』では、東映アニメーションとエンターテインメントテクノロジーグループのGUILD STUDIOが協力。シリーズで初めてUnreal Engine 4(以下、UE4)をアニメーションに採用した。
このプロジェクトでは、リアルタイムレンダリングで作られたシーンが、従来のプリレンダー映像に並ぶクオリティであることが求められた。おもにゲームやVRで実績を上げてきたGUILD STUDIOは、これまでの『プリキュア』エンディングと同等の映像表現を実現しつつ、将来的にVRやゲーム分野などマルチプラットフォームでの展開を目指しているという。その前哨戦ともいえるのが、UE4を使ったエンディングアニメーション制作だ。
アートディレクターの角田氏はEpic Gamesに対し、「UE4 で作ったと言わない限りは、いつものプリキュアエンディングCG と思って頂けたら成功です」と語っている。
UE4を使いリアルタイムレンダリングで映像を作る利点は、ほぼ最終ルックの絵を見ながらブラッシュアップできることだという。また、新型インフルエンザの感染拡大によるリモートワークにも、UE4の利点が生きた。チーム間のミーティングはSlack のチャットやビデオ会議を利用しつつ、プロジェクトの共有はUE4のソースコントロールで常に最新のプロジェクトファイルを共有。同社初のリモートワークだったというが、氏は大きな混乱もなく乗り切れたと振り返っている。
日本のアニメシリーズとしてUE4を採用した例として、『ガールズ&パンツァー 最終章』が挙げられる。戦車戦に3DCGが多用されるシリーズだが、『ガールズ&パンツァー 最終章』第2話では、制作者も「地獄だった」と振り返るジャングル戦をUE4で描ききった。
アニメの制作に携わったSTUDIOカチューシャから柳野啓一郎3D監督が、「CGWORLD 2019 クリエイティブカンファレンス」にて講演。「安易にゲームエンジンを使うのは危険!」と、楽をするのではなく、戦車ファンを満足させる映像を作る手段としての採用例を紹介している。
この講演の続編として、5月20日20時より「UNREAL FEST EXTREME 2021 SUMMER」内で柳野3D監督が「『ガールズ&パンツァー 最終章』第3話 アニメとゲームエンジンの融合(ジャングル完結編)」という講演を行う予定だ。YouTubeでも視聴できるので、興味がある方は5月20日を楽しみに待ってほしい。