ゲーミングPC向けのビデオボード「GeForce」などの半導体製品を手がけるエヌビディアは日本時間9月16日(木)、アメリカのニュース雑誌「タイム(TIME)」が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に、同社の創業者でCEOのジェンスン・フアン氏が選出されたと伝えた。フアン氏は同日発売のタイム誌最新号で7種類存在する表紙のひとつを飾っている。
なお、別パターンの表紙モデルには米国大統領のジョー・バイデン氏やエネルギー関連事業を展開するテスラ社CEOのイーロン・マスク氏、歌手のビリー・アイリッシュ氏らが選ばれている。
日本国内で“世界で最も影響力のある100人”と呼ばれる「タイム100」は、有識者による議論のもと、タイム誌が2004年から毎年発表している人気企画のひとつ。選出された合計100名の人物は「アイコン」「パイオニア」「タイタン」「アーティスト」「リーダー」「イノベーター」の計6カテゴリに分類されており、フアン氏は“革新者”を意味する「イノベーター」カテゴリへ属する。
発表によると、タイム誌最新号へ掲載された記事ではスタンフォード大学のAI(人工知能)研究者であるアンドリュー・ン氏がエヌビディアとフアン氏の功績を以下のように述べているという。
この歴史ある週刊誌の最新号に掲載された記事で、NVIDIA は、「電話が質問に対して音声で答え、農場では作物ではなく雑草に農薬を散布し、医師が新薬の特性を予知する」という世界を実現するための改革を行っており、このような驚くべきことが今後も続々と起こる、とアンドリュー ン氏 (Andrew Ng) が述べています。
DeepLearning.AI の創設者であり CEO、そして Coursera の共同創設者でもあるアンドリュー ン氏は次のようにも述べています。「人工知能は我々の世界を変容させつつあります。かつては人間の知覚や判断が必要だったことをコンピューターにさせるソフトウェアは、ジェンスン フアンが実現させたハードウェアに大きく依存しています」
ン氏は以下のように説明しています。「2003 年、多くの人々が懐疑的な見方をするなか、フアンはNVIDIA を率い、グラフィックス プロセッシング ユニット (GPU) と呼ばれている、コンピューターの画面上で絵を描くためのチップを活用し、より汎用的なコンピューティング処理に適応させるようにしました」
「その結果として得られた進歩と強力なチップが、現在の AI の多くを支えているプログラムで、より大規模なニューラルネットワークに対応できる基盤となりました」と、ン氏は述べています。
フアンの戦略が見事に成功したのは、「世界で最も技術を見る目がある経営者だから」とも、ン氏は語っています。また、フアンは、「社員に対する思いやりが深く、科学技術およびテクノロジに関する教育を惜しみなく支援しています」とも述べています。
「新たな AI テクノロジが次々と登場し、より高い計算能力への果てしない要求が高まる中、フアンのチームは、今後の数十年間にわたってテクノロジの進歩を主導し続けるだろう」とン氏は結んでいます。
近年のエヌビディアは、AIが自ら対象物の特徴やデータを集めて学んでいくディープラーニング(深層学習)や乗り物の自動運転技術など、AI技術の発展を支えるソリューションを多分野にわたって展開している。
2021年8月には、同年4月に開かれた開発者向けイベントの一部シーンへ映る背景やフアン氏が3Dプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」で生成されたCGであると明かされ、視聴者に大きな驚きを与えた。
エヌビディアの公式ブログでは、放射線治療に用いるCT画像の効率的な分析や中国で試験運転を進行している自動運転の無人商用タクシーなど、さまざまな最新技術の活用例が紹介されている。
未来SFのような改革は、フアン氏とエヌビディアによって少しづつ現実へ近づいているようだ。