NVIDIAは11月12日、気候変動の予測に特化した強力なAIスーパーコンピュータ「Earth-2」を開発すると発表した。
「Earth-2」は、現実の出来事を仮想空間で忠実に再現するデジタルツインを実施するためのNVIDIAのツール基盤「Omniverse」(オムニバース)を使用し、地球の未来の気候をシミュレートする気候変動予測システムだ。デジタルツインとは、現実世界から集めたデータをもとに仮想世界を再現し未来を予測する技術のことで、近年注目を集めつつある。
「Earth-2」による気候変動の予測は従来の大気物理学に基づく天気予報とは異なり、大気、水、氷、土地、人間活動の物理学、化学、生物学モデルとし、地球規模の水循環の変化、宇宙空間での太陽光の変化を予測して気候のシミュレーションを行うという。
宇宙空間での太陽光の変化を予測するには現在の数百万から数十億倍のコンピューティングパワーが必要になり、通常のコンピュータの進歩では数十年かかると考えられている。
しかしながら、GPUによる加速コンピューティング、ディープラーニングと物理情報ニューラルネットワーク、AIスーパーコンピュータを活用し、膨大な量の観測データとモデルデータからの学習を実施すれば100万倍のスピードアップが可能になるという。
上記の技術を活用することで数十年先の地域の異常気象を予測することが可能になり、世界各地で被害をもたらす近年の異常気象や災害を予め察知し、インフラの回復力を高めることができるだろう。
「Earth-2」はNVIDIAが培ってきた技術を総動員したものとなり、同社の技術のもっとも重要な活用になるという。
近年では、ゲームに関連した技術がゲーム以外に活用されるケースは少なくないが、いささかスケールの大きいプロジェクトである「Earth-2」の行末に、興味がある読者は期待して注目しよう。