米国ツイッター社は4月4日(火)、同社が運営するソーシャルメディア「Twitter」におけるウェブブラウザとPCアプリ向けサービスのアイコンを青い鳥から柴犬に変更し、事情を知らないユーザーらから困惑の声が上がった。また、以前から存在していた「コナミコマンド」でアイコンが1回転するサービスの隠し機能も再び話題となっている。
ツイッター社では2022年10月末、自動車メーカーのテスラや電子決済サービスの「PayPal」など6社に携わった起業家のイーロン・マスク氏が全株式を買収し、ツイッター社の最高経営責任者(CEO)として就任。全社員のおよそ半数におよぶレイオフ(一時解雇)や公式アカウントの認証マーク・Twitter APIの有料化など数々の改革案を実行。しかし、いずれの改革案もいたずらに混乱を招いており、2022年12月に実施したユーザー投票の結果、運営の後任者を見つけたうえでCEOを辞任し、エンジニアリングチームの統括に専念する方針を示している。
今回登場した柴犬のアイコンは海外で人気になったネットミーム「Doge(ドージ)」と呼ばれるもので、マスク氏は2022年3月にTwitter上で「Twitterを買収して。それから鳥のロゴをDogeに変えて」と求めたユーザーとのやり取りを画像に収めて「約束通り」とコメントしているようだ。ただし、今回の変更はたちの悪いジョークではなく、ほかにも要因となる背景が存在する。
As promised pic.twitter.com/Jc1TnAqxAV
— Elon Musk (@elonmusk) April 3, 2023
海外では「Doge」を利用した二次創作コンテンツも数多く生まれており、2013年12月には暗号通貨の一種である「Dogecoin(ドージコイン)」が登場した。ネット上ではDogecoinの愛好家としても知られるマスク氏だが、ロイター通信をはじめとした海外メディアによる2022年6月の報道によると「マルチ商法まがいのやり方でDogecoinの購入を扇動し通貨の価格を不当につり上げた」として、投資家から2580億ドルの支払いを求めて訴訟を起こされている。
また、ロイター通信による2023年4月4日の続報によると、マスク氏は訴訟の棄却に関する請求の書類を裁判所へ提出しており、今回のアイコン変更にはDogecoinへの関心を高める狙いがあるものとも考えられる。実際にアイコンがDogeへ変更されてからDogecoinの価値は大きく上昇しており、過去1年で最低1コイン7円台まで下落していた価格は記事の執筆時点で13円前後まで回復していた。
一方、Twitterを利用するユーザーの多くは当然そんな背景を知ることもなく、「何これ」と困惑するユーザーや純粋に「かわいい」と反応するユーザーらの声であふれかえった。また、2014年6月ごろに実装されていた「コナミコマンド(↑↑↓↓←→←→BA)」を入力するとアイコンが回転するイースターエッグ(隠し機能)を使い、Dogeアイコンを回転させて楽しんでいるユーザーも居るようだ。
我々の想像をはるかに上回るレベルのユーモアと戦略によって日本のTwitter上にも君臨したDogeアイコンだが、本ミームのモデルとなった元保護犬の「かぼす」ちゃんは千葉県で暮らす16歳のやまとなでしこ。ミームの元となった画像は、家族との暮らしを綴ったブログ上にて2010年に公開された1枚である。
柴犬になったツイッターアイコン、PC版だとコナミコマンド「上上下下左右左右BA」で回転するんだけど、これ2014年に一瞬組み込まれてすぐ消えた機能だ…!!https://t.co/lt89gZ4t54 pic.twitter.com/JkESQj6x9X
— 吉永龍樹(ヨシナガタツキ@僕秩) (@dfnt) April 4, 2023
かぼすちゃんは2022年の末に「急性胆管肝炎」と「慢性リンパ腫白血病」の診断を受けて危険な状態へ陥っていたものの、家族の献身的なサポートと数ヶ月にわたるリハビリを経て奇跡的な復調を見せている。
エイプリルフールにしては遅く、ジョークにしても意味不明な今回のアイコン変更。Twitter APIの有料化にともなう連動サービスの終了を筆頭にまだまだ混乱は続きそうだが、ちょっとした癒しにはなっただろうか。