文化庁と内閣府を中心としたAI戦略チームは、5月30日(火)に公開した議事資料「AIと著作権の関係等について」のなかで、AIによる学習・生成物と既存作品の著作権に関する考え方を示している。資料では適用条文が異なるためAI開発・学習段階と生成・利用段階を「分けて考える必要がある」としたうえで、類似性や依拠性が認められるAIイラストの公表・販売は一部の例外を除いて通常の著作権侵害と同様にあたるとの見解を示している。
議事資料は5月15日実施の第3回会議にて使用されたもので「著作権者の権利・利益の保護と著作物の円滑な利用のバランスが重要」とする点と、著作権が「思想又は感情を創作的に表現した」著作物を保護するものであり、単なる事実・データや作風・画風などのアイデアが含まれない点を著作権法の基本的な考え方として伝えている。
資料によるとAI開発・学習の段階においては平成30年の著作権法改正で新たに規定された条文が適用され、AI開発における情報解析などの工程において「著作物に表現された思想又は感情の享受」を目的としない利用行為は原則、著作権者の許諾なく利用できる。本条項はAI技術を悪用する人の方便としてもよく使われるが、資料内では「3DCG映像を作るために元の風景写真から“表現上の本質的な特徴”など必要な情報を抽出する」場合には“元の風景写真を享受する”ことが目的に含まれるため、本条項の対象とならない点が例示されている。
また、ケースごとの「必要と認められる限度」を超える場合や「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」も同規定の対象外となることが示されている。資料内では「情報解析用に販売されているデータベースの著作物をAI学習目的で複製する」場合を“利益を不当に害する”ケースとして例示している。
一方、生成・利用の段階ではAIを利用した画像の生成や生成した画像の公表、および生成した画像など複製物の販売について「通常の著作権侵害と同様にとらえる」と判断。既存の著作物との類似性や依拠性が認められた場合、著作権者は損害賠償や差止の請求が可能であるほか、刑事罰の対象になるとの見解を示した。
AI戦略チームは今後セミナーなどの開催を通じて速やかに上記の見解を普及・啓発していくほか、知的財産法学者・弁護士などを交えたAI開発・AI生成物の利用にあたる論点の整理や、コンテンツ産業など今後の産業との関係性に関する検討などを進めていく方針としている。