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美術館でレトロアーケードが遊べちゃう展示会「のこす!いかす!!マンガ・アニメ・ゲーム展」が開催中。『スペースインベーダー』『オペレーションウルフ』などのゲームのほか、アニメやマンガの歴史を肌で感じられる資料を展示。国立新美術館にて6月22日まで

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2025年6月14日から6月22日(6月17日は休館日)までのあいだ、東京・六本木の国立新美術館にて文化庁による展覧会「のこす!いかす!!マンガ・アニメ・ゲーム展 in Tokyo 2025」が開催される。

本展のゲーム部門は「のこす!いかす」というテーマのもと、レトロアーケードゲームを中心に構成されている。そのためか、アーケードゲームを題材とした作品の金字塔『ゲームセンターあらし』作者のすがやみつる氏による同作のイラストがキービジュアルに用いられた。

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アーケードゲームやゲームセンター文化に関心があるゲームファンにとっては、これだけでも垂涎の展覧会だが、アニメ部門でも『ゲームセンターあらし』のセル画展示などがあるので、すがやみつる氏のファンにとっても必見のイベントだと言えるだろう。

『ゲームセンターあらし』の作中で取り上げられた、『スペースインベーダー』の生みの親である西角友宏氏も本展に参画。再現筐体にすがやみつる氏と西角友宏氏の両名による直筆サインが刻まれていた。レトロゲームファンには見逃せない光景だ。

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さらに本展はなんと入場無料。会場である国立新美術館自体は東京メトロ千代田線の乃木坂から直結通路が整備されており、アクセスも良好だ。

開館時間は午前10時から午後6時まで (最終入館は閉館の30分前まで、6月22日のみ午後2時閉館)。昼前に立ち寄ったり、出かけたときの帰り際にふらっと見てみるのも良さそうだ。

本記事では、開催前日に実施されたメディア向け説明会の情報をもとに、マンガとアニメ部門の雰囲気を紹介しつつ、ゲーム部門の展示を中心に現地の模様をお届けしていこう。

取材・執筆/キック一郎
編集/恵那

セルアニメやマンガ雑誌を“歴史”として保存。作画資料から活版印刷の亜鉛印刷版まで、100年近く前の収蔵資料も多数

本展は、文化庁によるマンガ、アニメ、ゲーム関連資料のアーカイブ事業の一環である「文化庁メディア芸術連携基盤等整備推進事業」の成果を活用し、来場者とともに今後のアーカイブのあり方や意義について考えるために開催されたのだという。

同事業は、平成22年度に発足し、令和2年からは保存活用にまつわる「ネットワークの構築」「情報基盤の整備」「アーカイブの推進支援」といった3つの観点を主軸に進行。現在は「連携基盤等整備推進事業」のフェイズが終わり、その後続事業が始まっているという。

本展は、国立新美術館の2階にある展示室Bにて開催。入場口からの順路は、同事業の基礎情報、マンガ展示、アニメ展示、ゲーム展示の順番で構成されていた。

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まず本事業の概要や現在の推進支援に関する情報が壁面に掲載。その奥では、マンガ、アニメ、ゲームといった各メディアのつながりや、一般的な受容の歴史なども紹介されている。

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マンガ部門には、マンガ雑誌のような現行の収集物のみならず、100年近く前の収蔵資料も数多く並ぶ。当時のマンガ家が集めていた作画資料や印刷所の活版印刷の亜鉛印刷版など、読者にマンガが披露される前の段階の資料を中心に、当時の作家や事業者の重みも感じ取れるアーカイブが展示されていた。

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続いてアニメ部門では、テレビアニメのケースや資料を中心に、視聴者が目にするまでに、作画資料がどのような工程を経過するのか、そのほとんどが語られた情報を見ることができる。

現在、セル絵の具を使ったアニメは主流の商業ラインではほぼ製作されておらず、実際にセル絵の具を使っていた時代のアニメ資料は劣化散逸の瀬戸際にある。

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本展のアニメ部門では、作画のための大判用紙、筆記具、セル絵の具、トレス台など、実際の作業工程を来場者が精確に把握できるような展示が中心となっていた。

また、来場者が実際に触れてセル絵の具の乗り具合さえも確認できる『ゲームセンターあらし』の復刻セル画も展示。アナログ製作の過程を感じ取れる、非常に貴重な機会だと言えるだろう。

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▲手でめくって絵の具の部分に触れてもOKだ。今となっては知り得ないセル画が、一体どのような物かを実際に知るための展示だという。
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▲こちらは触れることができないが、本展示のキービジュアルとして制作された『ゲームセンターあらし』の中間制作物も展示されている。

このほかに、現代アニメの参考となる題材として、Production I.Gによって制作された2012年のアニメ『わすれなぐも』の資料も。

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『ゲームセンターあらし』の復刻セル画と同様、実際に来場者がペラペラとめくって確かめられる形でカット袋(作画や動画などの成果物が入った製作現場の袋)の再現品も展示されていた。

懐かしのアーケード筐体が多数展示。『スペースインベーダー』や『ペンゴ』などは実際に試遊も可能

ゲーム部門では、本事業で保存のノウハウが収集されてきたアーケードゲームの筐体がいくつも並んでいた。

来場者が触れることはできないものの、ピンボールの『Skylab』、セガの『アウトラン』、修理途中の様子を再現したテーブル筐体などがゲーム部門のエリアに入った人々を出迎える。

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周囲の壁面には、アーケード筐体のメンテナンスの難しさや修理の流れが記載された掲示もあり、完全に生産が終了したものを「のこす!いかす!!」ためにどうしたら良いかを深く考えさせられる。

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そこから奥に入ると、黒い壁で仕切られた試遊コーナーが出現。しっかりと稼働しているセガの『ペンゴ』『スペースハリアー』、タイトーの『オペレーションウルフ』があり、こちらは実際にプレイすることが可能だ。

美術館の中でアーケードゲームをプレイできるとは驚きだが、さすがに「レバーやボタンを強く叩かないようにお願いします」という注意書きがセットになっていたので、当時のゲームセンターのようにバチバチとはプレイしないようにしたい。

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試遊コーナーの外には、各作品の制作資料に加えて、当時の懸賞でプレゼントされた景品やゲームセンター内にあったインストカードなどの貴重な物品も展示されていた。

セガファンやタイトーファンにとっては卒倒もののコレクションが、まさか国立新美術館の中に展示されることになろうとは驚きだ。

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さらに奥には、壁面への投影映像でプレイできる『スペースインベーダー』の筐体も。前述した、すがやみつる氏と西角友宏氏の直筆サインは、ここで見ることができる。

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一方、本展で唯一の家庭用ゲームとして、当時のエニックスから発売された1994年の『ワンダープロジェクトJ 機械の少年ピーノ』の資料が出口付近に展示されていた。

この作品は制作から発売までのあらゆる資料が一手に残っていたとのことで、それらのほとんどがゲーム制作過程のモデルケースとして公開。エリアの中央には、3箱のダンボール箱が積み上がっている。

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こちらは『ワンダープロジェクトJ 機械の少年ピーノ』の続編である『ワンダープロジェクトJ 2』の全資料が保存されていたという段ボール箱で、3箱にすべてが収められていたという。ちなみに『ワンダープロジェクトJ 機械の少年ピーノ』の資料は1箱に収まっていたそうだ。

各メディアの貴重な資料を見ることはもちろん、美術館の中で『ペンゴ』『スペースハリアー』『オペレーションウルフ』『スペースインベーダー』を実際にプレイするという貴重な体験ができる「のこす!いかす!!マンガ・アニメ・ゲーム展 in Tokyo 2025」。入場無料なので乃木坂駅の近くを通った際には、ぜひ立ち寄ってみてほしい。

ライター
ゲーム、アニメ、マンガ、舞台など、イベントレポートやインタビューを含めたエンタメ系ジャンルを中心に活動するフリーライター。各分野の経験を活かして、ゲームの魅力を楽しくわかりやすくお届けします。
ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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