マンガで食えない漫画家がインディーゲームでヒット作を生み出すまでの軌跡──漫画家・木星在住が明かす”マンガを描き続けるための生存戦略”とは

 木星在住という漫画家がいる。彼はもともと同人界隈で活動していたが、あることをきっかけにオリジナル作品を描きはじめた。
 『機械人形ナナミちゃん』(以下、ナナミちゃん)と名付けられたその作品は運よく出版社の目に留まったが、1年間に渡り修正を含め600Pものネームを描いた末、ボツとなってしまった。

(画像は木星在住より)

 彼はその作品をネット上で無料公開し、新しい取り組みを行うことにした。ゲーム開発である。
 『DEAD OR SCHOOL』という横スクロールのアクションゲームで、美少女とゾンビがモチーフのいわゆるハクスラ系だ。チームはたったの3名。もともとフリーランスだった彼以外は本業を退職して開発に臨んだため、生活費や開発費は日雇いのアルバイトなどで稼いだ資金が充てられた。

 しかしそれだけでは開発費を賄うことはできなかった。そこで彼は、どういうわけか東京・高円寺に飲食店を作るべく、たったひとりで3,000kgのコンクリをひたすらこね、1年かけてたったひとりで「Bar365」をオープンさせた。

「Bar365」東京都杉並区高円寺北 3丁目24-8-2F

 また目標には達しなかったが、クラウドファンディングも2ヵ所で実施し、あの手この手で開発費を集めていった。

 その甲斐あってか、何とかゲーム開発は進み、2018年7月、ようやくSteamで『DEAD OR SCHOOL』をリリースすることに成功する。早期アクセスではあるが評価は上々で、1日で100万円、1週間で約1万本を売り上げたのだから驚きだ。

 本稿は、そんな木星在住氏の半生と、今後に迫るインタビュー記事である。

文・取材/クリモトコウダイ


導入マンガを描き続けるために選んだ道は“マンガの広告媒体化”

木星在住氏

──私の中で木星在住さんは、同人作家や漫画家というイメージがあるのですが、なぜいまゲームを作られているのでしょうか。

木星在住氏:
 マンガで収入が確立できなかったからですね。とはいえマンガを描くのは辞めたくなかった。そこで色々考えた結果、マンガを自分の広告媒体にすればいいと思いついたんですよ。

──マンガを広告媒体にする……ですか。

木星在住氏:
 いま『ナナミちゃん』というオリジナル作品を「マンガごっちゃ」さんなどのwebサイトで連載していて、単行本も3巻まで発売されていますが、自分の実力では“生活が保障できるほど稼ぐ”ことができなくて……。

 そこで“どうにかしてマンガを書き続けられる環境を作れないか”と考えた結果、自分のマンガは無料で読めますから、好きな方はたくさん読んでください。そして好きになってくださった方は、そのマンガを題材としたゲームがありますので、よろしければそちらを買ってください──とすれば、収益化できると思いまして。

──つまり、無料で読めるマンガという媒体にまずは人を集め、そこからファンを作って、ゲームを購入してもらって収入にする、と。

木星在住氏:
 その通りです。マンガの単行本の場合、利益は1冊あたり60円ほどしか入りませんが、ゲームでしたら1500円のうち1200円ほど入ってきます。もちろんチームで作っているから、そのままの額が自分に入ってくるわけではありませんが、それでも一本売れたときの単価が違うじゃないですか。

──なるほど。もしかして飲食店を運営されているのも、同じような試みなのでしょうか。

木星在住氏:
 元々はゲームの開発資金を稼ぐためでしたが、その意味合いはもちろんあり、現在はそのように機能しています。

 手前味噌ではありますが、マンガを1話公開すると3万人から5万人の方は読んで下さるので、その中から「この人に会ってみたいから、お店に行ってみよう!」という方が何人かは現れてくれますよね。
 そういう意味でもマンガは、お店の広告にもなっているわけです。

 その結果、自分の目標だった「マンガ・飲食を広告媒体にしてゲームで金を得る」という仕掛けを作ることができ、マンガを止める理由がなくなったんです。最近は『ナナミちゃん』の後に自伝的なマンガは描いているんですよ。

そもそもなぜゲームを作ることができたのか

──そういう経緯があったんですね。“ゲームを作る”って簡単なことじゃないのに、それを実現させたのがすごいです。

木星在住氏:
 僕は28歳で同人誌を辞めて以降、収入源が不安定になりまして……そこで、自分の他にプログラマーとデザイナーの2人を集めて同人ゲームを作り始めたんです。それが上手くいき、かつチームとしてもかなり強力だったので「このチームでもっとゲーム作りたいね」となったんです。

 実は前々からゲームは作っていて、本作でもメンバーは変わっていないんですよ。

 もう、このメンバーというのが本当に尊敬できる面々でして……しかも2人とも頭がいい。プログラマーは大手ゲームメーカーでバリバリ仕事をしていた人で、何かをやろうって言ったときにその人が「No」と言ったことがない。「時間さえもらえばできる」と言うんです。ゲーム業界の中でも、技術力は相当上の方のはずです。

 そしてデザイナーの方もすごくて……この2人をチーム発足時に引き当てたとき、「絶対に同人で終わらすのはもったいない」と、ずっと思っていたんです。

──となると、次回作も?

木星在住氏:
 実はあと3本企画しています。僕は『Fallout』シリーズと『The Elder Scrolls』シリーズが大好きなのでそれでたとえますが──『Dead or School』が『Fallout』シリーズだとしたら、『The Elder Scrolls』シリーズのようなファンタジーテイストのゲームを次に出す予定で、タイトルは『不思議な戦場のアリス(仮)』です。そして『Dead or School 2』を出し、最後に『不思議な戦場のアリス2(仮)』を出す、と。いずれも根っこのゲーム性などは変更ありません。

 また、『Dead or School 2』は前作同様に『ナナミちゃん』の世界感でやりますが、『不思議な戦場のアリス(仮)』の2作品はまったく別で、僕は企画だけ担当して、グラフィッカーも別の方が担当します。
 かなり優秀な方ですので、こちらもご期待ください。

──ちなみに現在はSteamのみですが、購入しているユーザーはどの国が多いのでしょうか。

木星在住氏:
 7割が日本ですかね。

──そうなんですか? 内容的に“海外受けがいい”と思っていたので、意外です。

木星在住氏:
 我々も海外ユーザーをメイン層に考えていまして、地下鉄を使って都内をぐるぐる回ったりとか、ゾンビ×美少女だったり、自分たちの中では多少の理屈固めはしていたんです。が、フタを開けてみれば海外のユーザーが全然いなくてショックでしたね。

 原因としては、そもそも言語対応ができていないのと、宣伝不足だと思っています。

──日本のユーザーだけで、これだけ売れたというのは逆にすごい気もしますけれどね。今後はコンシューマーでのリリースも予定されているのでしょうか。

木星在住氏:
 すでにパブリッシャーが見つかっており、具体的な話を進めている段階です。2019年3月か4月には、おそらくPS4とNintendo Switchでダウンロード版を出せる予定です。国内と海外でパブリッシャーさんが違いますが、それぞれで宣伝していただけると伺っていますので、これがきっかけとなって海外でも認知されればな、と。

──パッケージ販売の予定もあるのでしょうか。

木星在住氏:
 ありますが、恐らくマンガの単行本同様に“コレクターズアイテム”的な立ち位置になると思います。
 と言うのも、インディー規模の我々が出すパッケージの小売価格は、3,900円になる見込みなんです。そこからパッケージそのものを作る費用や流通さんへお支払する費用を差し引くと……。

 ところがダウンロード販売なら、プラットフォーマーのストア元に3割支払えば終わりなので、我々の規模だったらダウンロード専売の方が利益率は高いんです。何より在庫を抱える必要もありませんしね。

 

──では、今後もインディーとして活動されていくのでしょうか。

木星在住氏:
 そうです。インディーにはインディーの場所といいますか、ちゃんとした立ち位置があると思っていまして、インディーが2軍でメジャーは1軍──ということではないと考えています。ですから我々の名刺には「We love indies」と書いているとおり、「インディーであることがゴールだよ」と、常に皆で言っているし、「インディーでも、ここまでできるんだ」と示したいですね。

──ジャンルは違いますが、『カメラを止めるな』もインディーなのに大ヒットになり、かなり話題になりましたよね。

(画像は映画『カメラを止めるな!』公式サイトより)

木星在住氏:
 『カメラを止めるな』は単体でも面白いですが、あの作品ができるまでのバックボーンが武器であり、それ自体が付加価値のあるエンターテインメントなわけですよね。そういうのが成立するんだ──という意味で、彼らからかなりの勇気をもらいました。

──その意味では『Dead or School』もバックボーンが面白いですよね。「日々の生活費や開発資金を捻出するため、飲食店を開いたり、日雇いのアルバイトなどを兼業して日銭を稼いだりすることで、ゲーム制作を継続してきました」とか。

木星在住氏:
 こういう見せ方は、けっこう狙ってやっています。
 ほんと……漫画家になろうと思って、ずっとアシスタントをやっていて、でもダメで……そんな自分が身に着けた術が、この見せ方なんです。

『新宿スワン』に「俺はもう何の価値もないんだ」という衝撃を受ける

『Dead or School』のキャラクターたち

──アシスタント時代、ですか? その話も伺いたいですね。

木星在住氏:
 もともと漫画家になりたくて。高校卒業後の16歳から22歳まで漫画家のアシスタントをやっていたんです。でも結局、読み切り止まりで……。連載の選考会のようなものがあるんですけれど、その選考会を通らなくて、23歳になったときにいよいよ「ヤバいな」って(笑)。

 この6年間に、あまり結果が芳しくなかった……だけではなく、同年代は大学を卒業して就職する時期でもあったので、そういう人たちとも横並びになってしまう、と。

──どうしても危機感というか、このままじゃダメだって思ってしまいそうですね。

木星在住氏:
 なんたって、それまでは「マンガのアシスタントをしていれば漫画家になれる」というテンプレ思考を持っていましたから。でも現実は、そんなに甘くはなかった。

 そんなとき、「歌舞伎町でスカウトをやっていた人が漫画家になった」という話題を目にしまして。

──『新宿スワン』の和久井健さんですね。

(画像は新宿スワン(1) (ヤングマガジンコミックス) | 和久井健 | 青年マンガ | Kindleストア | Amazonより)

木星在住氏:
 ええ。当時、和久井先生は新人だったわけですけれど、その人生経験がものすごく豊富で、その経験を漫画のネタにしていることに「俺はもう何の価値もないんだ」と思うほど衝撃を受けまして。アシスタントをやっている自分よりも、別業界でブイブイ言わせていた人の方が、価値があると気づいたんですよ。

 そもそも「マンガを一生懸命描きたいです」なんて人はごまんといるわけですから、そういう人よりも歌舞伎町でスカウトをやっていた人の方が面白い話を描くだろう、と。もちろんマンガの才能がある方はその限りではありませんが。

──つまり、人生経験の差に気がついたわけですね。

木星在住氏:
 そういうことですね。そもそも6年間やって芽が出なかったわけですから、天才的な才能もないわけで。だから、何か自分の武器を見つけないと戦っていけないと思い、アシスタントを辞めたんです。

 ただ、ご飯を食べるためにはお金が必要なので、あまり大きな声では言えませんが、まずはイラストをヤフオクで売ることから始めました。そこから同人誌に行って、いろいろ模索していったんです。

──同人の活動は何年ぐらい続けられたんですか?

木星在住氏:
 27歳までですから、4、5年ですね。それからはエロマンガの仕事も入って、28歳ぐらいまではエロ同人とエロマンガを描いていました。『ナナミちゃん』を描き始めたのは29歳か30歳のころですね。

──ずっと同人を続けられていて、何がきっかけでオリジナルの方に行こうと思ったんでしょうか?

木星在住氏:
 まず前提として、同人誌という場所を終着点として活動していなかったんです。もちろんこれは、同人誌を下に見ているということではありません。むしろ同人誌という市場に参入して圧巻だったんですよ。

──想像していた場所とは違ったということでしょうか。

木星在住氏:
 全然違いましたね。そこをゴールにしている人がいるというか、そこにプライドを持ってやっている人がたくさんいて……。
 自分はある種、経験と収入目的でしたが、その場所を市場として、夢としてやっている人たちは、本当に輝いていて……コミケ以外でも同人誌に対する情熱がすごい。だから僕は、彼らには絶対に敵わないと。

 28歳ぐらいになると、そういうことがわかってきたんです。またその頃になると、多少知名度も高まり、貯金も貯まってきましたので、自分が骨を埋める場所を作りに行こうと思い、オリジナル作品である『ナナミちゃん』を描き始めたんです。

 するとタイミングよく出版社からスカウトが来てくださったんですよ。ところが、初めは編集さんも下から持ち上げる感じでいたんですけど、どんどん立ち位置が変わっていっちゃって。「この流れじゃダメですよ」みたいなこともたくさん言われて、結局連載させてもらえなかったんです。

──詳細はこちらの最後に書かれていますね。

木星在住氏:
 ええ。これに関しては編集の方が100%悪いとは言いませんし、当時の『ナナミちゃん』をどこかの出版社に持ち込んでも、結局は同じことになっていたと思います。

 そんなとき、和久井先生のことを思い出しまして。先生はご自身の体験を元にマンガを描かれているわけですが、自分もこの体験を武器にしてしまえばいいと思ったんです。

 つまり『ナナミちゃん』という作品に、ボツになった過程を付加価値として付ければ、記憶に残るだろう、と。ボツになった作品がたとえ100個あったとしても。
 だから、多少なり自分の人生経験が生きた行動だったと思います。

──実際それで話題になったのだから、その作戦は成功したと言えますね。

「Bar365」が自分という人間を証明する場所

──さて、いろいろな話が繋がってきましたが、ただまだ繋がっていないのが……このお店なんですよ。先ほどお話にあったように“収益的な意味合いが強い”と思いますが、なぜ飲食業なのでしょうか。

木星在住氏:
 これは同人時代から感じていたことなのですが、同人にしろインディーにしろ、企業じゃないので関わる人が限られてしまうんです。しかも、いまはたった3人で作っているので、極端な話1年間で3人としか会わないという異常事態になりかねないわけで。

 そうなると、“自分の人間関係や経験がすごく偏ってしまう”という危機感を覚えたんです。これも、「経験が必要」という和久井先生の影響ですね。

──だから飲食店なんですね。

木星在住氏:
 ここだと週に1、2回だけ勤務しても何十人という人と会話させてもらえますからね。ですから、そういう社交の場といいますか、自分が人として成長できるうえでの場所を作りたかったんです。

──それにしても素敵な内装ですね。内装に関する知識があったんですか?

木星在住氏:
 いえ、全然なかったですね。木材とかだといろんな技術が必要なはずですが、コンクリートはひとつの技術だけでできるなと思い、コンクリ特化でいきました。プロの方には失礼な話ですが、「コンクリだったら絶対1、2週間でいけるだろ」って(笑)。

 それに今回使ったコンクリは“モルタル造形”という、手で粘土のようにこねて付けられるので、「粘土ぐらいなら触ったことがあるから」ということで、“なんとなく”でやっちゃいました。

──“なんとなく”で、ここまで(笑)。

木星在住氏:
 ずっと手でこねて、それを付けて……という繰り返しでしたね。完成まで1年もかかってしまいましたが……。コンクリを貼り続けた結果、ここに以前あったお店よりワンサイズ小さくなっちゃいました(笑)。

 こういうエピソードも付加価値かなと思っていて、1年間コンクリをこねくり回してもお酒の味は変わりませんが、やっぱりほんの少しの“唯一無二感”が出るじゃないですか。

 それがきっかけで「ザ・ノンフィクション」というテレビ番組に取材してもらえましたし、自分という人間を証明する場所になったと思っています。仕事の面においても、「ひとりで1年間、こういうことをやったんだ」と言うと、けっこういろんな人が会ってくれるというか……。
 そして「じゃあ、おまえの言うことってウソじゃないのね」とか、「おまえがそう言うんだったら、やるんだろうね」と言ってくれるようになりまして。

──ここに来ればそう思ってしまうでしょうね。ちなみに「木星在住さんに会いにこよう」と思った人は、何曜日に来ればいいんですか?

木星在住氏:
 土曜ですね。
 ただ、高円寺にお住まいの人と仲良くなることはあっても、「俺のことを知っています」とか「会いにきました」という方で仲良くなった人はいないんですよね……。なんか、長くしゃべれなくて。

 来てもらえるのはすごく嬉しいんですけれど、なんだか“かしこまって終わる”というか。そういうときは店長のシュンくんに助けてもらっています(笑)。
 本業の方もいろいろ知ってくれていて。

店長:
 シュンです。僕もゲームが好きで、昔はゲームクリエイターを目指していたぐらいです。

木星在住氏:
 彼は勧誘して来たわけじゃなくて、このお店に来てくれて、いろいろ話しているうちに「店長をしてもらいたいな」と思うようになって、入ってもらったんですよ。

──そうやって仲間が増えるのも、この場所ならではですね。

木星在住氏:
 そうですね。今日はいろいろごめんね。

店長:
 いえいえ、全然。片耳で聞いていましたけれど、こういう話はあんまり聞いたことがなかったので面白かったです(笑)。

木星在住氏:
 自分からわぁわぁ喋っても、相手に引かれるから恥ずかしい(笑)。

店長:
 オーナーの考えなどを知っていたほうが、来てくれたお客さんに「オーナーって、どんな感じの人なんですか?」って聞かれたときに、僕らは「こういう人なんですよ」と喋れるので。ここはオーナーあっての店なので、「こういうオーナーがやっているお店なんですよ」って、やっぱり言いたいじゃないですか。

 僕にとっては今日みたいな話を聞けた方が、これからの会話にも繋がるし、そこから話が広がったら「じゃあ、オーナーって面白いから、会ってみませんか?」という流れにもなるなと思っていて。

──場所は高円寺ですが、どういったお客さんが多いのでしょう。

木星在住氏:
 マンガやゲームを知って来てくれた方は、変わっている人が多いですね(笑)。

店長:
 高円寺の人も変わっている人は多いですけれど。それとはまた違うジャンルというか、癖が強い方が多い印象がありますね。でも、そういう多種多様な人が来るから面白いんだと思います。

最終目標は映画

──最後に、今後のことも伺いたいのですが、広告としてのマンガがあり、場所としてのバーがあり、収益確保としてのゲームがありますよね。基本的には、この仕組みを続けていくんでしょうか。

木星在住氏:
 実のところ、ゴールはマンガでもゲームでもなく、映画なんですよ。

──……映画!?

木星在住氏:
 僕は『ナナミちゃん」の映画を作りたいんです。計画では、先ほどお話した後3本の新作ゲームを年1回ペースで出していきますが、それらのトータルの利益見込みが2億円になります。で、それを元に映画製作に入ります。制作期間は2年を予定しているので……公開は2024年の予定です。

 ゲームもマンガもすべて映画に向けて作って行きます。

──つまり、映画が上映されるまでマンガ連載は続くということでしょうか。

木星在住氏:
 ええ。オチとエンディングはすでに完成しているので、あとは6年という期間を前提にしつつ、映画の製作状況を見て描いていく予定です。

──それって、掲載先の編集部さん的には大丈夫なんでしょうか……。

木星在住氏:
 僕がゲームとか飲食をやると最初に言ったときは「こいつ、マンガ嫌いなんだ」と編集さんに思われていたようなのですが、いまでは「マンガごっちゃ」の編集長さんから「おまえが言うなら付き合うよ。週に何ページでも、月に5ページでも、映画に向けてがんばろう」と言ってくださっていて。

──いいパートナーが見つかったんですね。ちなみに、映画を結末に持ってくることに、何か意味はあるのでしょうか?

木星在住氏:
 「なぜ最後に映画を作りたいのか」と聞かれると「なんでだろう」とドキドキしますね……。僕としては「のどが渇いたから水を飲むのに、なんで水飲むの」って聞かれているような異様な感覚で……。

 でもやっぱり……やっぱり映画というのは“夢”なんですよ。マンガでも小説でもゲームでも、最後は映画だと思うんです。
 それにお笑い芸人だって映画を作るじゃないですか。なんというか……文化人は最終的に映画を撮るんです。僕もそうでありたいな、と。

──なるほど。

木星在住氏:
 またある意味、僕はマンガ一本でも、ゲーム一本でも、飲食一本でも、食っていくことができないんです。だからもうその程度の人間だと自分でもわかっていますし、腹をくくっているところもあって、作品一点で自分の中心が見つけられなくてもいいじゃないか、と。

 ゆえに最後が映画であり、その過程を含めて、エンターテインメントとして世に出したいんです。

──本日はありがとうございました。(了)

 高校卒業後から漫画家のアシスタントとなるも、なかなか芽が出なかった木星在住氏のそれまでの人生は、“空虚なもの“だったかもしれない。だがゲーム開発を始めてからの氏の人生は一転、“漫画家“にくわえて“飲食店店主“”ゲームクリエイター“と、以前とは比べ物にならない濃密な日々となっている。彼の“バックボーンを武器にする“という術は、ちょっとやそっとじゃ真似できないそのすべてを体験したからこそ身に付いたものである。

 それはソーシャルメディアという軸足が重要になってきた現代において、非常に有効なプロモーション手段だろう。我々のようなメディアが興味を持って記事が作られていることからも“成功している“と言えるのではないだろうか。

 器用じゃないなりに夢を叶えようと生きている木星在住氏だが、そんな氏だからこそ今回語られた今後の計画には説得力があり、そしてワクワクさせるものがある。今後リリースされるゲーム3作品もそうであるが、彼がひとつの終着点として描くという映画にも期待したい。

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文・取材
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai
 
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