Nintendo Switch版の話も飛び出した! 6年振りに復活した『桃鉄』という唯一無二なゲームのすごさとは?

Nintendo Switch版の話も飛び出した! 6年振りに復活した『桃鉄』という唯一無二なゲームのすごさとは?

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「さくまさんがもしまた倒れたら、僕が代わりに作ろうと思っていた」(桝田氏)

――今回はニンテンドー3DSでの発売ですが、据え置きゲーム機ではなくて、携帯ゲーム機を選んだのはなぜですか? 『桃鉄』というと、みんなで集まってTVを囲んで遊ぶというイメージが強いので。

さくま氏:
 僕も開発チームも、その前に作った時から時間が経ってしまったので、Wii Uみたいな据え置きゲーム機のソフトを1年で作れるのかどうか、自信がなかったんです。それでまずは、携帯ゲーム機の3DSでやってみようと。

――1年という開発期間は、どのようにして決まったのですか?

さくま氏:
 今回のお話がある程度固まったあたりで、発売はいつ頃にしようかという話になった時に、それはもちろん年末だろうと。

 任天堂さんのほうからは「春はどうですか?」っていう話もあったんですけど、僕としては「いや年末だ」と。だって『桃鉄』は年末ですから。それで必然的に、1年で作ることになったんです。

――なるほど。ところで、桝田さんが今回の『桃鉄』のお話を聞いた時に、桝田さんご自身から「手伝いたい」と切り出したと、さきほど言われていましたが、それはなぜですか? 

桝田氏:
 さくまさんはこれまでに2回、病気で倒れてるんだよ。だから今度の新作を作ってる途中に、もしまた倒れたら、その時は僕が代わってバックアップをしようと思っていたんだ。そのために『桃鉄』の仕様書も全部読んでさ。

 さっきも言ったように、僕が関わっていたのは最初の頃だけだから、そこからものすごく進化していて、仕様書を読むのがすごく大変だったけど。

――『桃鉄』の仕様書というのは、どれぐらいの量なんですか? 

桝田氏:
 とんでもない量なのは確かだね。僕は普通の文庫本1冊なら20〜30分ぐらいで読めるんだけど、この仕様書を読むのには2〜3日かかったぐらいだから。

さくま氏:
 今はもう、昔みたいにプリントアウトすることがないから、目に見えるボリュームでは説明できないんですけどね。

桝田氏:
 ゲームの仕様書というのは、業界に長くいる人じゃないと、ただ読んでも理解できないんだよね。実際にその状況になった時には、仕様書の該当する場所に書かれていること以外の様々な要素も絡んで影響してくるわけじゃない。それがゲーム中の10年目に起こるのか、20年目に起こるのか。4位の時に起こるのか、1位の時に起こるのか。そういうことを頭の中で組み立てながら、読まなきゃいけないから。

――桝田さんは、ご自身が『桃鉄』に関わらなくなってからは、『桃鉄』をプレイしていなかったのですか? 

桝田氏:
 触ってないね。奥さんや子どもが遊んでるのを後ろから見て、あれこれ言ってたぐらいだね。「『桃鉄』もずいぶん便利になったね」とか、「貧乏神もずいぶんひどいことをするようになったね」とか。

――“ひどいことをする”というと? 

桝田氏:
 貧乏神があまりにもひどいことをやって、ゲームのバランスを壊しちゃったら、遊んでる人がゲームを投げちゃうだろうというのが、まだ僕が関わっていた頃の調整だったわけ。

 その後になって、“ひどいことになっても、どうせ次にまた遊べばいいや”っていう開き直りが出てきてからは、貧乏神がホントに無茶するようになったよね(笑)。でもそれは、『桃鉄』というジャンルだから許されるんだよ。

現在は様々なバリエーションが存在する貧乏神だが、やっぱりキングボンビーの悪行は別格。ボンビラスの世界では金などいらないのかもしれませんが……ううう。

 前回の対談でさくまさんも言ってたけど、『桃鉄』は麻雀なんだよね。この手牌なら早く安く上がったほうがいいのか、それとも大きな手をじっくり狙ったほうがいいのか。でもそれを4人がそれぞれで考えているから、その通りにはならないわけだよ。

 その通りにならないことがおもしろいっていう部分と、カードをどう組み合わせるかっていう部分の、運と戦略の微妙なバランスが、『桃鉄』は良くできてるんだよね。久しぶりに自分でやってみて、改めてそう思ったよ。

「99年プレイは最初、ギャグのつもりで入れたんですよ」(さくま氏)

――昔と今の『桃鉄』を比べてみて、ここは現代風になっているなというところはありましたか? 

桝田氏:
 スピード感というか、ゲームのテンポは全体的に上がってるよね。

 それと僕が関わっていた頃は、申し訳ないんだけど「99年なんて、やる人もいるかもしれないけど、普通はやんないよね」というスタンスだったんだよ。だからチューニングも「30年を過ぎたら、あとはいいかげんでもいいよね」って感じだったんだ。

さくま氏:
 そこまできっちりとは、チューニングしなかったよね。30年までなら、4人で集まってやる人もいるだろうと思っていたけど。

 99年は最初、ギャグのつもりで入れたんですよ。当時のハドソンの社長に、「『天の声2』【※】を作ったから『桃鉄』も対応しろ」って言われて。

※『天の声2』
1988年に発売された、PCエンジンのセーブデータを保存できる外部記憶装置。ちなみに“天の声”とは、RPG『桃太郎伝説』のセーブ用パスワードの名称であり、『天の声1』に相当する周辺機器は存在しない。

桝田氏:
 あの頃のPCエンジンのゲームは、みんなそうだよ(笑)。ところが今回の『桃鉄』を見たら、70年過ぎてからでも新しいイベントがドカドカ入ってくるんだ。“こりゃ本気だ!”って思ったよ。

さくま氏:
 「1人で100年やります」っていう人が、けっこういるんですよ。最初はギャグのつもりだったけど、意外とみんな遊んでるんだなって。

思った以上にみんなプレイしているらしい、「100年」。一人でじっくり遊びたい人にオススメ。

――『桃鉄』では、1人プレイをどれぐらい重視しているのですか? 

桝田氏:
 実際にプレイしている時間が多いのは、1人だと思うよ。みんなで遊んでいる時の印象が、強く残っているというだけで。

――自分の場合、1人でやるのは対戦のための練習と、あとはサイコロで1を出す【※】ための練習でしたね(笑)。

さくま氏:
 1を出す練習って、ホントにやってたの!? 以前にタクシーで奥さんと『桃鉄』の話をしていたら、運転手さんに「あれは目押しができるからいいですよね」って言われたんですよ(笑)。僕らが『桃鉄』を作ってるとは知らずに言ったんだと思うけど。

※サイコロで1を出す
シリーズの初期の作品では、目押しで1を出すことができると豪語するプレイヤーが大勢いました。

――100年プレイのような長時間プレイに対するチューニングは、どのように行うのですか? 

桝田氏:
 まず1つはさっきも言ったけど、50年、70年と経ってもプレイヤーを飽きさせないように、新しいイベントが起こるようにする。それともう1つは、50年やったぐらいじゃとても買えないような高額物件を用意するってことだね。

 100年プレイと言っても、普通の人でも20年から30年ぐらいで、だいたい決着がついちゃうのね。「このバランスでいいの?」ってさくまさんに聞いたら、「いいんだよ。『桃鉄』は20年過ぎたらもう、RPGだから」って言われてさ。“その割り切りなんだ”って、なるほどと思ったよ。

 100年遊ぶモチベーションというのは、ライバルキャラと接戦を演じることではなくて、プレイを少しずつ積み上げていって、この超高額物件を買おうとか、そういうものなんだよね。RPGのレベルをカンストするみたいな。そういう思い切りで、バランスを調整してるんだなって。

――最近の潮流だとどうしても、短いプレイ時間を求められがちだと思うんですが、そこへの意識というのはどうですか? 

桝田氏:
 3年モードの対戦は、10年ぐらいプレイした後の状況から始まって、そこから3年間っていう形になってるから、あれはいい感じだよ。僕でも一番強いコンピュータ相手だと8割ぐらいしか勝てないから、一般の人はたぶん勝率5割いかないと思うよ。

 お手軽なものを求められるのは、確かに最近の風潮ではあるんだけどさ、『桃鉄』はもはや“桃鉄”というジャンルなんだし、もちろんユーザーが求めているから変える部分はあってもいいけど、“ここだけは譲れない”や“変えたくない”という部分があってもいいと思うよ

「“ゆべしもち”で臨時収入がもらえるのは、じつはバグだったんです」(さくま氏)

――今回の新作では、新しい物件がかなり増えたそうですが? 

桝田氏:
 さくまさんは今回に限らず、毎回更新してるからね。

さくま氏:
 この6年でなくなっちゃったお店とかも、けっこうあるんですよ。今はネットで検索すれば、いろいろ出てくるようになったけど、『桃鉄』を始めた頃は、その場所に実際に行かないとわからなかったですから。

 「現地ではすごく流行ってる」って言われたんだけど、実際に行ってみるとぜんぜん流行ってなかったり、食べてみたらぜんぜん美味しくなかったり。最近は、すごく流行ってるんだけど昔からあるものじゃなくて、つい最近できたものが多いんだよね、B級グルメブームで。

――物件を採用する基準というのは、どういったものなんですか? 

さくま氏:
 僕の好み(笑)。あとはヘンな名前だと、やっぱり興味が沸くよね。美味しいのはもちろんだけど。

――僕は“ゆべしもち”【※】の実物を、いまだに見たことがないんですよ。

※“ゆべしもち”
ゆべしとは、ゆずとくるみを材料に用いた加工食品もしくはお菓子のこと。その独特な名前のインパクトから、多くの桃鉄プレイヤーの記憶に残っている。

さくま氏:
 ゆべしもちで臨時収入がもらえるのって、じつはバグだったんですよ。僕自身はあんまり美味しくないと思ったので(笑)、ホントだったら臨時収入はもらえないはずだったのに、なぜかもらえるようになってて。

 臨時収入が高いものってだいたいは、僕が美味しいと思ってるものなんですよ。“揚げたいやき”とか“カキオコ”とかね。

桝田氏:
 日本ってこんなに狭い国土なのに、食べ物のバラエティがこれだけあるんだから、スゴいよね。豊かだよね、食文化が。同規模の他の国だったら、『桃鉄』なんて成り立たないよ。他の国だと、南と北で多少違うぐらいで、どこに行っても同じものを食べているんだから。

 物件の名前なんて、たかだか7文字ぐらいじゃない。でもそこを深掘りしていくとね、意外とおもしろいよ。

 日本各地の物件について調べ始めると、地方の単なる化学工場だと思っていた会社が、じつはその分野で世界シェアの8割を占めてたりするのよ。そういうとんでもない会社が、まだ日本には山のようにあるんだ。“すごいな日本!”って思ったよ。不景気とか停滞とか言われてるけどさ、ぜんぜん大丈夫だって思えるよね、『桃鉄』をやってると。

――新しい物件がいろいろと登場する一方で、たとえば“出雲そば”みたいに、ファンの間で定番となっている物件もあると思います。新しいものと定番のものの配分については、どのように考えられているのですか? 

さくま氏:
 僕は“流行っているテーマパークの理論”というのをよく言うんだけど、常に最低1割は新しいものに入れ替えるようにしないと、リピーターの人たちに飽きられてしまうんです。『桃鉄』の物件の場合は1割よりずっと多く入れ替えてますけど。

 でもあんまり変えすぎると、リピーターの人にとってはぜんぜん知らないものになってしまうので、それも困るんです。だから変えすぎるのも、また良くないんですよ。

――そんななかで、『桃鉄』のずっと変わらない部分というのは? 

さくま氏:
 物件が常に入れ替わったりはしているけど、根幹にある精神的な部分は、何も変わってないですよ。今回は震災復興の部分が新しく入っているけど、それぐらいかな。あと今回、47都道府県の県庁所在地だけは、駅の形を変えたんですよ。『桃鉄』で県庁所在地を覚えてもらえたらいいなぁと思って。

 キャラクターも今回、イラストは変わっているんだけど、そのキャラらしくないことはしないように、気をつけています。

――今回、一部のキャラクターのイラストが変わったのは、なぜなんですか? 

さくま氏:
 今回は久しぶりの『桃鉄』になったわけですけど、僕としてはこれが新しい『桃鉄』の幕開けだと考えているんです。これからも『桃鉄』を作り続けるためには、キャラクターのイラストも今の時代に合わせて、この機会に新しくしたいと思ったんです。

 今回は制作までの紆余曲折が非常に多かったので、新しい『桃鉄』をやるという話を、ギリギリまで誰にも言えなかったんですよ。だからイラストを描く時間もかなり少なかったんですけど、僕の古くからの友人たちが大勢協力してくれて、新しい絵を描き起こしてくれました。

『たちあがれ日本!!』には、おなじみの土居孝幸氏以外にもたくさんのイラストレーターさんが参加している。

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