メジャーからインディーまで、あまたのゲームで溢れるゲーム業界。そんな中で、近年ひそかにブームを迎えているジャンルが存在する。それが「実写ギャルゲー」だ。
「実写ギャルゲー」とは、実写の写真・映像によって物語が進行するADVゲームのことである。「ギャルゲー」と謳っている通り、プレイヤーは現実の女性が演じるヒロインを相手に、甘くてドキドキのリアリティ溢れる恋愛を体験することができる。
そんな実写ギャルゲーだが、現在このジャンルをけん引しているのはお隣、中国と韓国である。中でも2023年にリリースされた中国の『しまった!美人に囲まれた!』や2024年に韓国でリリースされた『まさか!下宿生が全員美女ですって?』などの作品たちは、その高い映像クオリティや有名ストリーマーのゲーム実況などから大きな話題を呼び、ブームをさらに加速させることとなった。
ここ数年間で数十本以上のタイトルがリリースされるなど、間違いなく今追い風の吹いているジャンルであると言えるだろう。
そんな中、私たちの住む日本でも、この度新たな「国産実写ギャルゲー」が登場することとなった。それこそが、今回紹介するゲーム、『ラブ・スタートアゲイン』だ。

本作は国産ゲームということで、もちろん全編フル日本語ボイス。これまで実写ギャルゲーといえば字幕か吹き替えだったため、このジャンルに馴染みのあるプレイヤーにとっても非常に期待できる1本だ。
ただ、日本においてこのジャンルはまだそれほどの認知を獲得するに至っていないと思う。この記事を読んでいる方の中にも、その具体的な内容についてまだあまりピンと来ていない人がいるのではないだろうか。そんな状況において本作は本作は「実写ギャルゲー」というジャンルを日本に普及させる起爆剤となる可能性も秘めていると筆者は感じた。
そこで、この記事では本作を通して筆者が感じた実写ギャルゲーの魅力、特にその没入感とリアルさについてお伝えしたい。
始めに結論から述べておくと、本作は「物語性ではなく“体験”のゲーム」である。2次元では決して表現できない生身の人間による演技やどぎまぎする恋愛模様など、そうしたリアルな体験部分がこのゲームジャンルの得意とするところなのだ。
と言っても全ては伝わらないと思うので、これからその部分について詳しく説明していきたいと思う。
従来のギャルゲーとは異なる「実写だからこそできる体験」、その真髄の端緒に少しでも触れていただけたら幸いだ。それではさっそく、ゲーム内容に(筆者の視点で)迫っていくとしよう。
※この記事は『ラブ・スタートアゲイン』の魅力をもっと知ってもらいたいウェイブさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
大学時代にタイムリープ……した先で出会うヒロインを紹介
ゲームの説明に入る前にまず、本作の軽いあらすじとメインヒロイン6人を紹介しておきたい。
『ラブ・スタートアゲイン』の物語は、ブラック企業での労働に疲れ果てた主人公(あなた)が、過去へとタイムリープするところから始まる。
いきなりこいつは何を言っているんだと思われるだろうが、実際そうなのだから仕方ない。こういうご都合主義にとやかく言っていたらお話は始まらない。
何はともあれ、過去へと飛ばされた主人公は自身の青春である大学時代へと遡る。そこでは主人公を取り巻く6人の女性と1人の親友がかつてと変わらぬ姿で現れ、それぞれの方法で主人公に接し、積極的にアプローチを行ってくる。
こうして、一度は逃した恋のチャンスを掴むべく、過去に戻った主人公は様々な選択肢を通じてヒロインたちとの恋愛を繰り広げていくことになるのだった。恋をもう一度……まさに「ラブ・スタートアゲイン」である。
それではお待ちかね、本作に登場する各ヒロインを紹介しよう。本編で登場するヒロインは以下の6人だ。
大学の同級生である椎名梓彩さん。明るくて誰とでもフレンドリーに接するムードメーカーだが、恋愛になると急にしおらしくなるというギャップを持つ。
主人公の幼馴染、桜井香澄ちゃん。大学も同じで家族ぐるみで仲がいいなど、主人公と一番距離感が近い相手である。
高校三年生の西村優季ちゃん。主人公は大学生時代にタイムリープしているので、少しだけ年下の女の子である。ちなみに家がとても裕福。
主人公のバイト先の先輩である小野寺愛さん。どこかふわふわしている雰囲気の人だが、主人公の前ではお姉さんムーブを欠かさない。
主人公のお隣に引っ越してきた美女、山吹千歳さん。その正体はなんと人気動画投稿者である。お酒が大好きでいつも酔っぱらっているなど若干ガサツな性格でもある。
大人しくて不思議な雰囲気を持った片桐美玖さん。不良に絡まれているところを助けたことで、主人公と知り合う。
これらヒロインと交流し、好感度を上昇させていくことがこのゲームの目的となる。それでは、ここからはゲームの中身について見ていこう。
実写だからこそ出来るリアルな人間描写に、思わずドキドキ……///
ゲームを始めてすぐのころ、タイムリープに混乱している私(主人公)の前に、可愛らしい2人の女子大生と、親友の姿があった。彼女らは主人公の大学時代に仲の良かった「イツメン」である。
ちょっとしたやりとりの後、話は週末の予定のことに。それぞれ行きたい場所が異なるということらしい。
ここで、選択肢が現れる。明るく元気溌溂な梓彩が好きな脱出ゲームか、それとも幼馴染である香澄が好きな水族館か……。どちらか1つを選ばなければならないという状況だ。
かなりの時間逡巡したあげく、香澄が行きたがっている水族館を選んでみると、こんな風になった。
梓彩、そんな露骨に悲しそうな顔をしないで欲しい。この悲しみようから察するに、彼女は確実に私のことが好きである。
逆に、香澄は露骨に喜びすぎである。直接的なセリフこそないものの、これは確実に脈ありと見ていいだろう。
本作のゲームプレイの95%は短いムービーの連続再生によって構成されており、字幕や選択肢を除けば物語中にテキストは一切出てこない。
そのため、本作では先ほどのようにヒロインたちが表情やボディランゲージを使ってこちらにメッセージを送ってくる場面が非常に多い。というよりも、彼女たちとのコミュニケーションにおいてプレイヤーが重視すべきは、実際には発言内容よりもそのような「言外のメッセージ」なのだ。
別の場面をご紹介しよう。先ほど紹介した香澄と私の自宅で一緒に「飲み」をするシーンだ。少しだけお酒に酔ったであろう香澄が、突然私の肩に頭を乗せて……。
主観視点でアップになり、若干伏し目がちに話を始めてからの、最後にこちらの目を見てこのセリフ。男なら誰しもがドキドキしてしまうことは間違いない(私はした)。
ちなみに、このやり取りの前には、「男と女が部屋の中で二人きり……w」みたいにイチャつくくだりがあったこともお伝えしておきたい。たまらん。というかいい年したオタクには眩しすぎる。
この場面、写真だとどうしても伝わりづらいが、実際のゲームプレイでは香澄の表情がころころと変わる。「何か起きちゃうかもよ?」という打算と、好きな異性にグイグイいく緊張の中で揺れ動く、香澄の心境が恐ろしいくらいに伝わってくる場面である。
現実で異性と接するとき、私たちは「相手の言外のメッセージ」に敏感だ。それは例えば視線の動きであったり、ちょっとした表情筋の動かし方であったり、無言の時間を通してこちらに伝わってくる。
そして考えてみれば、実はそういった細かな所作が実際のコミュニケーションの大半を形作っているのかもしれない。本作はそういったことに改めて気づかせてくれる。
これこそまさしく、「実写だからこそできる表現」の1つだと思う。まさに「恋愛シミュレーション」……は言い過ぎかもしれないが、少なくとも、これらの恋愛体験が2次元ギャルゲーの「萌え」の文脈とは異なる次元で展開されていくことは強調しておきたい。
つまり、「キャラクター」や「ストーリー」を楽しむという「物語性」のゲームである2次元ギャルゲーと比べると、実写ギャルゲーは「体験」を主題に置いているように思えるのだ。
選択肢は「甘くない」、試されるあなたの恋愛テクニック
もちろん、リアルなのは女優の演技だけではない。本作に登場する選択肢も、リアルさを表現するのに一役買っている。
またまた香澄とのストーリーに戻ろう。物語を進めていくと、ゲームの途中で香澄とのデートイベントが発生する。2人きりでの花火も楽しみ、夜の海を見ながら良い感じになる私と香澄……。そしてついに、香澄は私にその本心を打ち明けてくる。
「あなたのことが好き。」
男としてはもちろん一番右の選択肢一択!……なのだが、実はこれが罠である。
若干ネタバレとなるが、ここで右の選択肢を選んでも、残念ながらそのまま香澄とお付き合いを始めることにはならない。それどころか、好感度が下がってしまうのである。それはなぜか。
「私が欲しそうな言葉を選んでる」
……どういうこと!?
私がオンナゴコロを語るのもおかしな話だが、多分、ここですぐにYESと即答するような男は香澄からすれば「軽い男」なのである。
「告っておいてYESがダメって何でだよ!」と思う私のようなモテ度の低い男では、残念ながら香澄の心を完全に射止めることはできない。これが現実での恋愛というものなのだろう。
そう、本作に登場するヒロインたちはみな主人公にそれなりの好意を抱いてはいるものの、だからと言って必ずしもこちらに都合のいいコミュニケーションは取ってくれない。
他の場面も紹介しよう。ヒロインの一人である千歳さんは有名な動画投稿者であり、主人公の「推し」である。この場面はそんな千歳さんがお隣に引っ越してきて、ひょんなことから主人公を自宅に招いてくれるシーンだ。
「何かあった?」翌朝、ベッドで目覚める二人。
酔っぱらったせいで記憶のない千歳さんが、こちらに事情を訪ねてくる。選択肢は「流石にそれはないです」か「ご想像にお任せします」の2つ。
気さくで明るい性格でユーモアを好む千歳さん。こちらに好意を抱いてくれているし、昨晩は良い感じの雰囲気になっていた。前者の選択肢は突き放しすぎだし、関係性を考慮すれば後者の選択肢も「無くはない」選択肢である(そういうユーモアとして捉えてくれるかもしれないし)。
だが……こちらの正解は前者の「流石にそれはないです」である。どれだけこちらのことが好きな女性であってもここでふざけるのは「ライン越え」ということらしい……。
何となく人となりが掴めてきたと思ったらこれである。この恋愛における「いつ押して、いつ引くか」という駆け引きが、何とも絶妙で難しい。しかも相手は現実の女性である。リアルだからこそ選択に失敗して嫌われたときのダメージも大きい。許して。
何も「2次元のヒロインはこちらに都合のいい存在だけど、こっちは違う」と言いたいわけではない。実際、複雑でリアルな選択肢を用意した2次元ギャルゲーも数多く存在する。
しかし、実写の力は恐ろしいもので、本作が演出する女性相手のコミュニケーションは、全体的にどこか試されているような、緊張感の溢れるものとなっている。先ほど挙げた実写ならではの細かなしぐさも相まって、実際に「生身の人間」を相手にしているような不思議な錯覚をおぼえるのだ。
こちらがグイグイいけばデリカシーのない男と思われ、しかし紳士たろうと思えば逆に想いが離れていくというこのジレンマ。嫌われたくないという思いでどんどん具合が悪くなっていくという思春期男子のような体験を、私は本作で味わうことができた。
「実写ギャルゲー恐るべし」このゲームは深遠なる世界への入口だ
ここまで読んで、本作、そして「実写ギャルゲー」が独特の魅力を持っていることがお分かりいただけただろうか。
冒頭でお伝えしたとおり、本作は「物語性ではなく“体験”のゲーム」だと言えると思う。
ヒロインたちは皆いたって普通の女の子たちであるし、物語に壮大なドラマや仕掛けがあるわけでもない。しかしながら、そこには物語に感動するのとはまた違った「体験の没入感」が備わっている。
繰り返しになるが、本作ではヒロインたちの演技による細かなしぐさや表情から感情を読み取るという楽しみがある。そして映像が主人公の主観視点で進行することによるドキドキ感に加え、一筋縄ではいかない選択肢……
「実写ギャルゲー恐るべし」私が本作を体験して抱いた感想がこれである。
これまで馴染みのなかった日本ユーザーにとっても、この作品がジャンルへのちょうどいい入口になるだろう。本作が日本語であるからこそ生まれる女子大生のリアルな存在感が、あなたをこの深遠なる世界へと導いてくれる。そこでは、これまでとは全く異なる、恋愛ゲームにおける新しい体験が味わえるはずだ。
『ラブ・スタートアゲイン』はSteamにて発売中だ。