『ドラクエXI』は堀井さんにケンカをなだめられながら制作された?若手ディレクター&プロデューサーが語る開発裏話【忘年会書き起こし】

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 国民的RPGシリーズの代名詞「ドラゴンクエスト」シリーズの最新作、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』が発売されたのは、2017年7月29日。寄せられた期待に応える出来映えで登場し、多くのユーザーがプレイに没頭。高い評価を博した。

 それから数ヵ月。2017年12月19日に、同タイトルの制作に携わったプロデューサーやディレクターが集い、開発の思い出や裏話を語り合う“ゆるふわ忘年会”が、ニコニコ生放送にて催されたのだ。
 出演したのは、『ドラゴンクエストXI』ディレクターの内川毅氏(37歳)、PS4版プロデューサーの岡本北斗氏(31歳)、3DS版プロデューサーの横田賢人氏(32歳)、そしてMCを担当したニコニコの中野真氏の4名。

 開発における三人のやり取りを通して、いかに『XI』が作られたのか垣間見せたほか、PS4版と3DS版を同時に制作したがゆえの苦労話や秘話、クリエイターを目指したきっかけや原点となったゲームなどを熱く語る、ゲーム愛に満ちた放送となった。本稿では、その内容を書き起こし、抜粋してお届けしたい。


3DSとPS4、どちらも遊んだ人の割合は1/4

中野氏:
 それでは、若手開発者による“ゆるふわ忘年会”を始めたいと思いますが……でも、若手といっても内川さんはもう37歳ですよね。

内川氏:
 そうですね。若手じゃない(笑)。

中野氏:
 ゲーム業界の若手って、どれくらいまでを言うんですかね。

横田氏:
 なんなら、俺らも若手なのかって話ですし。

内川氏:
 ふたりは充分若いでしょう。

横田氏:
 でも、俺も10年くらい会社にいるよ。入ってからの長さだと、開発チームの中で言うとかなり長いほうじゃないかなと。

内川氏:
 だけど、本編のプロデューサーをこの歳でやるのって、ないでしょ。

中野氏:
 なかなか聞かないですよね。いままでのシリーズの中でいちばん若いんじゃないですか?
 岡本さんとは『XI』の開発を始めるよりもずっと前から会ってたんですが、年齢を聞いたときに「えっ、そんな若いの?」って。もっと上だと思っていたんです。

岡本氏:
 だから丁寧に扱ってくれてたんですね。でも若手だとわかって、どう雑に扱ってやろうかと(笑)。そういえば中野さんって、横田さんやうっちー(内川)とは、あまり話したことないですよね?

内川氏:
 僕は、中野さんと直接やりとりをするのは今日が初めてですね。

中野氏:
 「ドラクエ」の一ファンとして、「気軽に声をかけちゃいけないんじゃないかな」と遠慮してたところがありまして。

岡本氏:
 現場では、すごく気さくなオッサンですよ(笑)。

中野氏:
 ちなみに放送をいま観てくれている人たちは、『XI』をプレイしているのかな?

横田氏:
 まだの方とかいらっしゃるかな?

横田氏:
 「これから買うよ!」が3番なんですね。「買わない」がない(笑)。

岡本氏:
 PS4と3DSの両方をやった方もいるんじゃないですかね。

横田氏:
 これはしくじりですね(笑)。

中野氏:
 この選択肢はドラクエファンを舐めていますね。

岡本氏:
 両方やってくれた方が多いといいですね。

内川氏:
 両方遊んだというコメントも結構あったしね。

中野氏:
 「やってない」というコメントもあったけどね、1名(笑)。

岡本氏:
 そういう方は、これから遊んでくれたらいいんですよ。

中野氏:
 まだ待ってる人がいるでしょうしね。

中野氏:
 アンケートの結果が出たようですよ。

横田氏:
 おおー、PS4版が多い。

岡本氏:
 (横田さんの肩を叩きつつ)スマンな。

横田氏:
 売り上げた本数的には、アレだから(笑)。両方遊んだ方が1/4いらっしゃるんですね。

中野氏:
 これから買う方も1割弱くらいいますね。

横田氏:
 買ってくださいね、本当に(笑)。

岡本氏:
 両方遊んでくれた方も、片方プレイした方も、本当にありがとうございます。

横田氏:
 片方でも全然充分だと思う。

ふたつのハードにディレクターがひとり──何が起こる?

中野氏:
 この番組を行うにあたって、事前にアンケートを募集したんですが、その中にこんな一通がありました。

 「PS4と3DSの2ハードで出したことで、内容のすり合わせに苦労されたのではないでしょうか。とくにこれが大変だった、というエピソードがあれば教えていただきたいです」

内川氏:
 自分は3DS版とPS4版の架け橋になっていたんですが、イベントシーンで情報の行き違いなどがあったときがいちばんヤバかったですね。

 たとえば、太陽の神殿にある「聖なる種火」が守られているバリア【※1】みたいなもののサイズの問題がありましたね。3DS版のほうは「こんなに大きいなんて聞いてない」とか(笑)。
 いちばん細かかったレベルでは、王様の座る位置【※2】の問題が。3DS版はクレイモラン王とサマディー王がこの位置に座ってるのに、PS4版はこっちに座っているみたいな(笑)。さらに、最初のオープニングムービーでも違う座りかたをしてて、3つとも全部席順が違う、と。

※1 太陽の神殿にある「聖なる種火」が守られているバリア
太陽の神殿にある結界で、オリハルコンの入手に必要な「聖なる種火」を守っている。勇者の紋章で解除が可能。

※2 王様の座る位置
ロトゼタシアにある主要国の国王が一堂に会する場面が本作に登場。それぞれ円卓に座っており、その並び順について内川氏が言及している。

岡本氏:
 最初のムービーのサイズ感に合わせて作ったら、PS4版のテーブルがめっちゃ広くなったりね(笑)。

内川氏:
 しょうがないから嘘つこうって決めて、テーブルを小さくしました(笑)。

岡本氏:
 後は、オーブの並びの順番が違ったり。

内川氏:
 あー、オーブの順番な! オーブの順番あったね(笑)。これも、3DS版、PS4版、ムービーで全部違ってましたね。で、「どうする?」、「無視しよう」って(笑)。
 最終的にどうしたのかは忘れちゃったけど。【※】

※編集部補足:PS4版、3DS版のゲーム中にオーブを捧げるシーンを確認したところ、オーブの並びは、それぞれ一致していました。しっかり調整されたようです。

岡本氏:
 円卓【※】の並びは直したよね。

内川氏:
 円卓の並びは直したんだけど、3DS版は3Dと2Dの違いもあって、2Dのほうは2Dの演出のために配置が違ったりとか。なので、演出のための差異は認めました。

※円卓
会議、会合などに用いられる、円形の卓。『ドラクエXI』では、各国の王が集う場面などで使用された。ゲーム内のムービーにも登場。

中野氏:
 じゃあ、仕様なんですね。

内川氏:
 はい、仕様です。「これは仕様で」、「これは統一させよう」という線引きは、細かいところまでけっこう気を遣いましたね。

横田氏:
 PS4版はPS4側の都合で、3DS版は3DS側の都合で……ハードや表現方法の関係で、それぞれ直すところがあるんですけど、それぞれが同じ問題点を同時に直すことがあって、その場合「どれが正しいんだ」って錯綜するんですよね。バッティングすることがあって。

内川氏:
 そこは単純に、自分の伝達ミスっていうのもあったんじゃないかなと。

岡本氏:
 ほぼそれがすべてだよ。

一同:
 
(笑)

岡本氏:
 「内川さんからこんなこと言われたんですけど、どうなってるんですか?」と質問が来て、横田さんに聞いたら「そんなの知らない」って(笑)。今回の開発でいちばん面白かった点は、真実は三人に話を聞かないと出てこないということ(笑)。

 一人目と二人目の話は一見、だいたい真逆の話に聞こえるんですけど、じつはそれぞれ合っていて、立場の違いから表現が変わっているだけなんです。俯瞰してる三人目に話を聞くと、それが見えてきて、言ってることがわかると。ちなみに、こうやって話を聞いていくと、いつも犯人はあの人(内川さん)なんですよ(笑)。

内川氏:
 「俺、そんなこと言ったっけ?」って(笑)。

岡本氏:
 貴方がポロッと言ったことが、ね。

横田氏:
 うっちーは両方のディレクターをやってるので、大変だったと思うんですよ。

中野氏:
 (岡本と横田を指し)それぞれに向き合ったということですよね。

横田氏:
 そうです。ディレクターをひとりにするかどうかという話もあったんですよ。うっちーひとりで両作品のディレクターをやるのは大変なんじゃないかって。でもPS4版と3DS版は、台詞とかほとんど一緒なんですよね。

 それは同一性を重んじたからですが、そのためにはディレクターがふたりいると、「出来るだけ一緒に合わせる」という部分が担保できないと思って、うっちーには両ハードのディレクターをやって欲しいとお願いしました。だから……ミスはあるよね(笑)。

内川氏:
 ミスっていうか、細かいところね(笑)。

横田氏:
 そうそう(笑)。俺らは半々くらいだけど、うっちーは二役やってるからね。

岡本氏:
 どんな揉めごとがあっても、最後は「うっちーがやるって言ってるんだから、黙ってやんなさいよ」という話でしかなくて(笑)。

内川氏:
 いやもう、ホントにいろんな人に迷惑をかけました(笑)。

中野氏:
 今回のような開発体制自体が珍しいじゃないですか。ふたつの異なるハードで同時に出すというのは。

内川氏:
 ぶっちゃけ、狂気の沙汰だと思いますよ(笑)。

岡本氏:
 そういえば、曲を充てるのも大変でしたよね。まだイベントシーンが出来てなくて、フィールドも走っていたら落ちちゃうようなときに、「フィールドからこのシーンに入ったときに音楽は継続するのか、それとも別の曲を充てるのか」を決めていかないといけないんです。それを決める作業を、うっちーと一緒に深夜にずっとやってましたね。

内川氏:
 岡本君とはPS4版の曲を、3DS版はまた別の音楽担当者とチェックしました。演出も若干違うので、その部分も確認したり。なので単純に2倍ではありませんが、見る量は多かったですね。

岡本氏:
 PS4版の方で「これで行こう」と決めて3DSに持っていったら、尺が全然合わないってことも(笑)。

内川氏:
 それで別の曲の案を出したりとか。

横田氏:
 同じマップなのに、PS4版と3DS版で同じ曲を充てても「なんか違うな」って感じるときがたまにあるんですよ。なので、そこはうっちーと相談して……PS4と3DSで、一部のマップだけあたってる曲が違うところがあるんじゃないかな?

岡本氏:
 あるある。

横田氏:
 気付いた方がいらっしゃるかどうかはわかりませんが、そういう部分でも音楽では苦労しましたね。

堀井さんになだめられた件

岡本氏:
 「ディレクターやプロデューサーとは? 3人は開発でどういう役割ですか?」という質問もありますが、これ聞きたいですか?(視聴者に向けて)

中野氏:
 ディレクターとプロデューサーの違いは、ちょいちょい話題になりますよね。会社にとっても定義が違ったりしますし。

内川氏:
 今回だと、ふたりともかなりディレクター寄りの動きを見せてくれたかな、って感じ。

横田氏:
 見せちゃったかな。うっちー的にはやりづらいところもあったかもしれないけど。

内川氏:
 やりづらいってよりは、助かったというほうが正直ある。(PS4版と3DS版の)2本を見ていましたが、中核が出来上がった後は、まだ手が回っていないところに自分の時間が取られるので、細かいところと言うとアレですが、不具合の対応といった部分は岡本君と横田君にサポートしてもらい、だいぶ見てもらいました。

横田氏:
 ディレクターとプロデューサーの違いをざっくり言うと、ウチだとプロデューサーは「枠組み」や「予算」、「スケジュール」に責任を持つ人で、ディレクターは「ゲームの中身」に責任を持つ人、って言えるのかな。

岡本氏:
 大まかにそうだよね。『XI』だと違ったけど。一般的には、お金持ってきて、商品売って、売り上げを上げてというのがプロデューサーで、ディレクターはその予算内ですごい面白いゲームを作る人。でも『XI』は、まずゲームを作る人がいて、僕らは「ゲームを作る人が出来ないこと」を全部やる。

 例えば、ゲームのバグを取るデータベースがあるんですが、そのバグについて「直す直さない」を決めるのは本来ディレクターの役割なんですが、PS4版のバグデータベースを内川さんは一回も見てないと思います(笑)。

内川氏:
 見てないことはないよ(笑)。

中野氏:
 逆に言うと、そういった体制だったからディレクターがひとりでも成立していたんでしょうね。

岡本氏:
 「俺、3DS版やるから、PS4版は岡本君に任せた」とか言って(笑)。

横田氏:
 それは、お前が信頼されているからだろ(笑)。

岡本氏:
 「任せた」じゃねーよ、みたいな(笑)。

中野氏:
 「ドラクエ」に関わっている人たちってこだわりを持ってる場合が多くて、仲良さそうだけど、仕事になるとどっちも譲らない、というような印象もありますね。

内川氏:
 今回は、「ドラクエ」というひと括りよりも、音楽性ならぬ『XI』性の違いかな。

岡本氏:
 音楽面はモメたよね(笑)。すぎやま先生から新曲が上がってきたときに、(内川は)すごく言うんですよ。

内川氏:
 言うというか、「ほかのところでも使えるよね」とかね。

岡本氏:
 「ここはもっと激しくバーンってやりたいから、この曲を使いたい」みたいなね。ロケーションに合わせた曲がちゃんと決められているんですけど、そういうのナシに「もっと激しいのがいい」とか言うので、こっちは「何? 新しい曲使うの?」って感じになるんですよ。

横田氏:
 このふたりが違うことで議論が生まれて、そこからいい答えが生まれたのかなと思います。

内川氏:
 開発しているときは、さらに堀井(雄二)さんが一緒にいるので、(岡本と内川が)ケンカして、堀井さんが「まあまあまあ」と言って(笑)。

岡本氏:
 「岡本君が言ってることもわかる。うっちーが言ってることもわかる。だからこうしよう!」みたいに仰って、(僕たちは)「はいっ!」って。……堀井さんの前で現場がケンカするっていうね(笑)。

内川氏:
 お前らもっとまとめてこいよって話ですよ(笑)。

岡本氏:
 でも、終わった後に堀井さんに聞いたんですよ。「あんな感じでやってたのはどうでしたか」って。そしたら「全部流れがわかるから、むしろいい」って言ってくださって。優しいですよね。

横田氏:
 堀井さん、本当に優しいね。全然怒らないし。

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