『ギャラガ』から生まれ『スーパーマリオ』が育てた「ボーナスステージ」という言葉──ゲームはなぜ「面」という単位を使い、いつから「ステージ」と呼ぶようになったのか

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 「ボーナスステージ」と聞くと、努力やリスクなしに「ひと儲けのチャンス到来!」って感じでワクワクしますよね。

 いまではゲームはもとより、テレビ番組などでもよく聞く言葉になっていますが、どこから発生したかはご存知ですか?

 そもそもいつからゲームの「面」をステージと呼ぶようになったのか? なかには「ラウンド」と呼ぶものもあるけど使い分けは? と掘り進めれば疑問は積もるばかり。

 ゲームから発生した用語が通常の日本語に溶け込んでいく様子を、緻密な資料の調査とともに追いかけるこの連載で、今回はそんな「ボーナスステージ」という言葉にナビゲーターのやる夫とやらない夫が迫ります。

 調査主は、ホビーパソコンの歴史などで知られるタイニーP(@Kenzoo6601)。
 PC-6601にボカロっぽいことをさせたり……とまあニコニコ界隈で活躍するお方です。

中の人/タイニーP


一般化しつつある「ボーナスステージ」はノーリスク&イージーの意味

年明け最初の、第5回だお。
今回のテーマは、「ボーナスステージ」だ。
ゲームだとそんなにめずらしい言葉じゃないとは思うけど、国語辞典にも載ってるんかお。
いや、いまのところ『広辞苑』や『大辞泉』、『大辞林』のいずれにも収録されていない。しかし新聞のデータベースを調べてみると、ここ数年ビデオゲーム関連以外での用例がいくつか出てきている。

たとえば朝日新聞2014年9月19日付紙面では、大相撲秋場所の記事で、嘉風関が横綱鶴竜のほか大関ふたりを破ったみずからの好調さに関連して、「(先場所までの自分は)大関のボーナスステージになっていた」とコメントしたと記されている。
つまり、大関に簡単に白星を献上しちゃうことを「ボーナスステージ」って表現したわけだお。
また、マイナビが2015年秋に実施した「2016年卒の就活生の間で流行った『就活ワード』ランキング」 では、ランキングには入らなかったものの特徴的だった言葉のひとつに「ボーナスステージ」が取り上げられている。

その意味は、「既に得た中小企業の内定に十分満足してるが、大手企業の最終面接が残っている状況」というものだ。
細かいところは忘れてたけど、「就活ワード」って言葉はネットのニュースでも見た記憶あるお。
このほか、読売新聞2016年1月5日付夕刊の囲碁・将棋面では、このころ夫の出身地である台湾に住まいを移していた女流囲碁棋士の小林泉美六段が、台湾行きについて親しい友人から「泉美さんのボーナスステージね」と言われたことをコラムに記している。

これは、しばらく囲碁の試合から遠ざかることになるのを指しての表現のようだ。
息抜きを「ボーナスステージ」って言ったわけかお。
これらの例を踏まえると、「ボーナスステージ」という言葉の説明として、以下のようなものが考えられる。

1)ビデオゲームで、通常のゲームの合間などに挿入される、得点やアイテムを多く獲得できる場面。プレイヤーのミスに対するペナルティーのない息抜きという扱いになっている場合も多い。

 

2)上記から転じて、

(a)簡単に成功・勝利できる機会、またはそのような対戦相手。

(b)物事の成否や試合の勝敗にとらわれる必要のない、息抜きの場。

(c)満足できる成果を確保し、それが損なわれないという前提で、さらに追加の成果が期待できる機会。

この中で、ビデオゲームのボーナスステージとは少しイメージが異なってきているのが2)の(c)だ。

これはビデオゲームでは、エンディングの後に遊べるように追加される場面が近い。
そういうのは、ゲームだとそのまんま「追加ステージ」とか、「エクストラステージ」みたいに言う気がするお。
うむ。ほかの表現もありそうだが、いずれにせよボーナスステージとは区別されていると言える。

この2)の(c)については、ビデオゲームそのものよりは、それを模したテレビのバラエティー番組の影響で広まったと考えたほうがよさそうだ。とくに有名なのは、フジテレビ系の人気番組『ネプリーグ』だろう。あるいは、音楽CDで1990年代以降採用例が増えた「ボーナストラック」の影響もあるかもしれない。
そういや、ゲームだと昔は「ボーナスラウンド」っていう呼びかたもあったと思うけど、そっちをあまり聞かなくなったのはなんでだお? 慢心、環境の違いかお。
さすがに慢心はないだろ、常識的に考えて。

しかし環境の違いについては、当たらずとも遠からずというところかもしれない。
ほー、そうなんかお。
それを知るためにも、ビデオゲームでの「ボーナスステージ」という表現が広まっていった流れを、時代を追って見ていくことにしよう。

ビデオゲームの「面」という考えかたはインベーダーゲームが由来

さて、ビデオゲームのボーナスステージという考えかたを確立したのは、1981年夏にナムコがアーケード向けに発表した『ギャラガ』と言っていいだろう。
『ギャラガ』は前々回の「ボス」の話でも出てきたし、もうすっかりおなじみだお。
 

【やる夫と徹底検証】ゲームの「ボス」という言葉の起源とは――『ポートピア』『ツインビー』『悪魔城ドラキュラ』…ジャンルごとに「ボス」の歴史を辿ってみた

 
『ギャラガ』ではステージ3、7、11……と、以後4つおきのステージが「チャレンジングステージ」と銘打たれており、敵のエイリアン「ギャラガ」が弾を撃たないようになっている。

しかもプレイヤーの操る「ファイター」に向かっての体当たりもしてこないため、絶対にミスにはならない。

通常は画面外から隊列をなして飛来し、画面上部に陣取るギャラガが、ここではすぐに画面外に逃げてしまうので、それを逃がさず何匹撃ち落とせるかでボーナス点が決まるという仕組みだ。

ギャラガの飛びかたがチャレンジングステージごとに違うから、それをちゃんと覚えるのがパーフェクトのコツだお!
これ以前にも、ゲーム進行の中で、いくつかの「面」をクリアするごとに、息抜きとしてのボーナス獲得のチャンスがあるビデオゲームはいくつか存在した。

有名なところでは、日本物産の『ムーンクレスタ』がそうだ。中には『ギャラガ』と同様に、仮にボーナスが得られなくても、それ以外のペナルティーはまったくない、タイトーの『インディアンバトル』のような例もある。ただ、そのノーリスクでのボーナス獲得のチャンスを、はっきり独立した面として数えるゲームはめずらしかった。
PlayStation 4 ダウンロード版『ムーンクレスタ』プレイ画面
(画像は公式PlayStation™Store 日本|アーケードアーカイブス ムーンクレスタより)
そうなんかお。ってか、そもそもゲームの「面」って言葉はいつごろ出てきたんだお。
そこは重要なポイントだな。調べてみると、1979年前半に世間を騒がせた『スペースインベーダー』の大ブームの最中には、すでにあったようだ。

1979年6月にヘラルド出版から発行された、日本でのビデオゲーム攻略本のはしりといわれる『インベーダー攻略法 これであなたも10000点プレイヤー』にも、「1面を全部消し去って2面めがあらわれたとき」という文章がある。
ここでもやっぱりインベーダーかお。
『スペースインベーダー』のゲーム進行は、画面上部に整列して登場する55匹のインベーダーを全部倒すまでをひと区切りとしている。

倒したあとは、最初よりも1段低い位置に55匹のインベーダーが現れて難易度が上がり、再度ゲームが始まるわけだ。ここから、インベーダーをひととおり倒すことを「1画面消す」などと呼ぶようになり、また、ゲームの段階を「1画面め、2画面め」と呼ぶようになった。
『スペースインベーダー』ゲーム画面
(画像はスペースインベーダー公式サイトより)
「1面、2面」は、その短縮形ってわけだお。
ところで『スペースインベーダー』は、日本では類似品やコピー品ともども「ブロックくずし」の総称で広まった、米アタリの『ブレイクアウト』をヒントに発想されたものだ。

『ブレイクアウト』では、画面上部に現れるブロックを全部壊すと、再度ブロックがすべて現れる。それも全部壊した場合、ブロックはもう出てこなくなり、得点が上がらなくなる。事実上そこでゲームは終了というわけだ。
ブロックくずしは有名だけど、そういう細かいとこまでは知らなかったお。
しかし、たとえば『週刊プレイボーイ』1978年8月1日号の「TVゲーム 新鋭機に勝つハイテクニック」など、インベーダーブームに至るまでのビデオゲーム紹介記事をいくつか確認した範囲には、「1面、2面」という表現は見当たらなかった。
インベーダーはブロックくずしがヒントになって作られたけど、「面」って言いかたはブロックくずしの時代にはなかったかもしれないわけかお。
この「週刊プレイボーイ」の記事を見ると、『ブレイクアウト』【※】の紹介で「ブロックを全部消せば448点。これで再ゲームができ、これも全部消せばパーフェクトの896点になる。」という説明がある。

つまり、ブロックがもう一度すべて現れることを「再ゲーム」と表現していたわけだ。これはなかなか興味深いポイントだ。

※この記事ではゲームの名称を『ブロッキング』としているが、記述内容から判断すると、『ブレイクアウト』と同一のものと考えられる。

そりゃまた、どういうことだお。
前回も少し触れたが、『スペースインベーダー』までのビデオゲームは、プレイ時間が決まっている、あるいは「ガンゲーム」と呼ばれた射撃ゲームであれば撃つ回数が決まっているというものが大多数だった。

このため高得点者へのご褒美は、プレイ時間や射撃回数の延長、またはゲーム終了後にゲームをもう一度初めからやり直せる再ゲームという形をとっていた。
1回分のお金で2回できるってのは、なかなかうれしいご褒美だお。
『ブレイクアウト』でも、規定の得点、一般的には400点を挙げると再ゲームができる【※】。ただしこれは、ブロックを全部壊したあとにもう一度すべて現れる仕組みとは別だ。

つまり『ブレイクアウト』のご褒美は、一種のプレイ時間の延長としてのブロックの再出現と、再ゲームとの2種類があったわけだ。

※点数は設定変更可能で、再ゲームなしにすることもできる。

2段構えってわけだお。
しかしこの「週刊プレイボーイ」の記事の担当者は、そのふたつをうまく区別できずに、ブロックの再出現を「再ゲーム」と表現したと考えられる。

もしかしたら、区別していたけれども、うまい説明が思いつかなかったのかもしれないがな。
なーるほど、「面」って表現があれば、2面めに進むことと再ゲームとはわりと簡単に区別できそうだけど、当時はそうじゃなかったわけだお。
なぜその区別が難しかったのかを考えると、原因のひとつは、再登場したブロックの状態がゲーム開始直後と変わりがないことだろう。

逆に言えば『スペースインベーダー』では、2回目に出現するインベーダーの位置が1段下がっていたことで、「最初とは違う局面」であることが誰にでも明らかになった。これが「1画面め、2画面め」、そして「1面、2面」という形で、局面の進み具合を認識することにつながったと考えられる。
ブロックくずしでも、2回目に出てくるブロックの形がもし違ってたら、その時に「面」って言葉が出てきていたかもしれないお。

「面」から「ステージ」へと移るきっかけは『ギャラガ』

さて、この「面」という表現は、『スペースインベーダー』の時点では、タイトーが公式に使ったわけではなかった。1979年7月発表の『スペースインベーダーパートII』のチラシでも、「インベーダーは1回消すごとに上部よりいきなり降下して来て」という文章がある一方、「画面」や「面」という記述は見当たらない。

ところが、先に触れた『インディアンバトル』が1980年秋に発表された際のチラシには、「2面、4面、6面と、2段階おきにクリアするごとに投縄のパターンが現れ」という文章が出てきている。
「面」って言いかたが、あっという間に広がったわけだお。
この時期のアーケードゲームのチラシや、筐体に添えられたルールの説明書きを見ると、メーカーごとに言葉の好みのようなものがある。

「面」にあたる表現については、たとえばセガは1980年の『侍』『トランキライザーガン』「ラウンド」を使っていた。またタイトーは「パターン」をよく使っていたようだ。
「ラウンド」は、このころのゲームにもう出てきてた言葉なんかお。
一方、早いうちから「面」を使っていたのが任天堂だ。

1979年夏発表の『モンキーマジック』のチラシに「面数がふえると」との表現があるほか、セガの『ヘッドオン』を、同社の許諾を受けて1979年秋ごろから任天堂が販売した『ヘッドオンN』のチラシにも、「1DOT(点)消すごとに5点、2面全部消すごとに点数が増加し」とある。
ほー。そしたら、ナムコはどうだったんだお。
ナムコの初期のビデオゲームで、1979年秋発表の『ギャラクシアン』と1980年夏発表の『パックマン』のチラシを見ると、面数を示す画面右下の旗やフルーツを「クリア数」としている一方、『パックマン』の仕様書では、この画面右下のフルーツを「ラウンド表示」と説明している。

またこのすぐあとの1980年秋に出た『タンクバタリアン』では、各面の開始時に「ROUND 1」などと表示される。
つまりナムコでも、ゲームの面を初めから「ステージ」って言ってたわけじゃないんかお。
そういうことだ。ナムコのゲームで、面を数える数詞として「ステージ」を使い、これを画面上に明記したのは『ギャラガ』が最初だ。そして、他社のアーケードゲームを見渡しても、このような形で「ステージ」を使った例は『ギャラガ』以前にはちょっと見当たらない。

海外まで含めて考えると、『ギャラガ』が初めてと断言するのは難しいが、かなり早い例だったことは間違いない。
『ギャラガ』が出たのが1981年夏ってことだから、日本のアーケードゲームだと、「ラウンド」のほうが「ステージ」より1年かそれ以上早く使われてたと考えていいわけかお。
ところで、このころのアーケードゲームに詳しい方はご存知のことだと思うが、ナムコがビデオゲームで「チャレンジングステージ」という言葉を使ったのは、『ギャラガ』が初めてではない。
へ? そりゃどういうことだお。
ナムコのゲームの「チャレンジングステージ」は、1980年秋の『タンクバタリアン』の発売と同時期に展示会に出品された、『ラリーX』で採用されたのが最初だ。

つまり『ギャラガ』よりも約1年早いわけだが、じつはこのゲームでは、たとえば1回めのチャレンジングステージでは画面右下に「ROUND 3」と表示される。つまり『ラリーX』の場合、チャレンジングステージはあったけれども、面を数える数詞として「ステージ」が使われたわけではないということだ。
 
『ラリーX』発売後間もなく登場した難易度調整版『ニューラリーX』のゲーム画面。右下にROUND1との表示がある。
(画像はWii Virtual Console Arcade NEW RALLY-Xより)
なんだか話がややこしいお。ってか、そしたらどうして「チャレンジングラウンド」じゃないんだお。
その理由は、どうやらモータースポーツのラリーにあるようだ。

ラリーの基本は、チェックポイントで区切られた行程をそれぞれ指定された平均速度で走り、目標タイムから早くても遅くても減点されるというものだ。

一方『ラリーX』のルールは、迷路に点在する10個のフラッグを順不同で全部通過するというもので、ラリーよりもむしろスタンプラリーに近い。しかしチラシなどで、フラッグを「チェックポイント」とも表現しているのは見逃せない。
それは、ラリーの用語から拝借してるわけだお。
うむ。そしてラリーでは、目標タイムが0秒、すなわち早ければ早いほどよい区間を「スペシャルステージ」と呼び、しばしば一般車の進入を禁止して競技が行われる。

一方、『ラリーX』のチャレンジングステージでは、プレイヤー側の「マイカー」が燃料切れになるまでは、敵の「レッドカー」が動かないようになっている。
そこはちょっとスペシャルステージっぽいお。
つまり『ラリーX』では、この「スペシャルステージ」をもじって「チャレンジングステージ」という表現を使ったと考えられる。
それで、面は「ラウンド」で数えるのに、「チャレンジングステージ」って言葉が出てきたわけかお。
そういうことだ。ところで「チャレンジング」とは、「挑戦的な」という意味だ。『ラリーX』のチャレンジングステージは『ギャラガ』のそれとは異なり、ノーリスクではない。

燃料切れでレッドカーが動き始めたらミス必至なのはもちろん、迷路に点在する岩の数がほかのラウンドよりも多く、そちらにぶつかってミスになることもある【※】。そして、マイカーの速度が通常よりも少し上がっている。

※ミスした場合、チャレンジングステージは終了して次のラウンドが始まるが、その際、通常のミスと同じくマイカーの持ち数がひとつ減る。マイカーの残りがなければゲームオーバー。

つまり、『ラリーX』の「チャレンジングステージ」は、どっちかっつーと「よりスリルのあるラウンド」みたいな意味もあるわけだお。
こうして見てみると『ギャラガ』は、『ラリーX』のチャレンジングステージを取り入れつつ、あくまでノーリスクとし、挑戦的ではありながらも息抜きとしての位置づけも強めたということになる。そしておそらくは、「チャレンジングステージ」という表現に合わせる意図もあって、面を数える数詞を「ステージ」としたのではないかと考えられる。

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