現地時間1月18日、英国のストリーマーHBomberguyことハリー・ブルーイス氏は、若いトランスジェンダーやその家族を支援する英国の慈善団体「マーメイド」のため、『ドンキーコング64』の達成率101%を目指しつつチャリティを募るライブストリームイベントを行った。このイベントの模様はTwitchに映像としてアップロードされている。
ブルーイス氏はこのイベントで時間制限を設けず、『ドンキーコング64』101%クリアを達成するまでプレイし続けると宣言していた。氏は最終的に休息を挟みながら約58時間という長い時間をかけ、宣言どおりに101%クリアを達成した。チャリティイベントとしても34万5千ドル、日本円にして約3800万円を集める大成功となった。
ブルーイス氏がこのイベントを開くことになったのは、慈善団体マーメイドへの資金援助計画が白紙になったことが理由となっている。慈善団体マーメイドは、英国政府機関であるビッグロト基金(Big Lottery Fund)から50万ポンド(約7100万円)の資金援助を受けるはずだった。イギリスのタイムズ紙によれば、この助成金で少なくとも英国内で45の施設のネットワークを構築する予定だったという。
しかし、映画『ハイっ、こちらIT課!』の脚本・監督として知られるグレアム・リネハン氏やいくつかのメディアを中心とした人々により、「マーメイドは子供の性転換手術を推奨する”攻撃的な組織”である」といった理由での反対活動が起きる。これらの反応を受け、基金はこの助成金を見直す決定を下したことを発表。基金の広報担当者は、市民から懸念と支持、双方の意見を大量に受けたことによる決定だと説明している。
ブルーイス氏はこの基金の決定に反対しており、上記の動画の中でも中心人物であるリネハン氏に対してFワードとともに怒りを表明、さらにはマーメイドへの資金援助を募る『ドンキーコング64』のチャリティ配信へと至った。なぜ『ドンキーコング64』なのかだが、ブルーイス氏は子どものころにクリアすることができなかったタイトルとして同作を挙げている。
こういった背景のすべてを知った上でかどうかは定かではないが、ともかく「白紙となった慈善団体への資金援助のためにひとりのストリーマーがゲームをマラソンプレイする」という取り組みは、各界の著名人から大きな称賛を浴びた。
『ドンキーコング』シリーズの作曲家のグラント・カークホープ氏、『DOOM』シリーズのジョン・ロメロ氏、『Fallout:New Vegas』のディレクターであるジョッシュ・ソーヤー氏といった著名なゲーム業界人。また、元米軍兵士でさまざまな機密情報を内部告発し逮捕されたチェルシー・マニング氏、史上最年少で米国下院議員として当選したアレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏も。ブルーイス氏の活動に賛同したゲストたちは、ライブストリーミングに電話やチャットで参加した。
下院議員のコルテス氏はボイスチャットでイベントに出演し、NINTENDO64は持っていなかったものの、従兄弟の家に入り浸り『スーパーマリオ64』や『ポケモンスナップ』で遊んでいたことを振り返り、『スーパーマリオ64』とNINTENDO64は最高だったと話している。さらにトランスジェンダーが直面している困難にも言及。「差別がこの問題をより深刻なものにしています。経済の枠組みでこれらの問題を議論することは重要ですが、差別が経済的困難の中心的な理由であるという事実を放棄しないでください」と伝えた。
今回のチャリティイベントについてマーメイドは、「今日はブルーマンデー、1年でもっとも悲しい日です。とある人物がトランスキッズとコミュニティのために『ドンキーコング』をプレイし34万ドルもの寄付金を集めてくれました。今日は最高の月曜日です!」と感謝のツイートを残した。またライブストリーミングイベント終了後、ホストであるブルーイス氏は支援してくれたすべての人に感謝の意を表明。そしてマーメイドへの寄付を引き続き呼びかけている。
なお、別の面からこのイベントを見ると、ブルーイス氏の『ドンキーコング64』101%スピードランの記録は57時間48分32秒となり、記録収集サイトであるspeedrun.comでは最下位の65位という結果になる。現時点では実際に登録されていないが、ファンの視聴者は彼の記録を付け加えるようなファンアートも公開している。
ライター/古嶋誉幸