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妥協も惰性も一切なし、フランス生まれのカッコよすぎる“JRPG”『Clair Obscur: Expedition 33』がマジで良すぎたから全人類遊んでくれ

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みなさん、生き急いでますか?

……まぁ、たぶん生き急いでないと思うんですけど、「生き急ぐ」って、案外悪いことばかりじゃないのかなって思うことがあります。やりたいことを全部詰め込んで、誰にも止められないくらいの速度で突き進んでいく。そういう姿勢からしか生み出されない独特な熱量って、たしかに存在します。

そんな“生き急ぎ”の熱量で構成されたゲームが、フランス生まれのRPG『Clair Obscur: Expedition 33』です。

※トレーラーをみて興味惹かれた人は是非この記事を読まずに購入に踏み切ってください。4月24日、PC(Steam、Epic Games Store)、PS5、Xbox Series X│Sに向けて発売されました。メディア的にはどうかと思いますが、筆者は本気で「何も知らないままこのゲームを遊んでほしい」と思っています。

この作品、キャラクターも、物語も、戦闘システムも、アートも音楽も、すべてが初速コンコルドくらいの勢いで詰め込まれていて、ちょっと心配になるレベルなんですよね。

トレーラーを見て「うわ、洋ゲーか……」って身構えた人、ちょっと待ってください。ビジュアルこそ洋ゲー味にあふれる本作ですが、プレイすれば端々に詰まった「和ゲーっぽさ」に気付くはずです。

ユーザーインターフェースや演出、コマンド制の戦闘など、ちょっと懐かしさすら覚えるそんな作品で、むしろ日本のRPGを通ってきた人にこそフックとなるポイントが多いのでは? とさえ思えてくるレベル。

実際、本作の開発元・Sandfall Interactive(サンドフォール・インタラクティブ)のCEO兼クリエイティブディレクターであるギヨーム・ブロッシュ氏弊誌のインタビュー記事のなかで「日本のRPGが大好きだ」と公言しているほどなので、本作でのJRPGに対するリスペクトは明白。

本作がすごいのは、ただ「JRPGっぽい」だけではなく、この“ぽさ”を足がかりに、プレイヤーを強引に世界へ引きずり込んでしまう熱量の高さです。「こんな最高のゲームを作ったんだ、全力で遊んでくれ!」という制作陣の情熱が伝わってきます。もしかして、クリエイターも生き急いでる……?

文/Squ
編集/うきゅう

※この記事は『Clair Obscur: Expedition 33』をもっと知ってもらいたいSEGAさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


「33」——人が死んじゃう呪いの数字

そんな圧倒的な情熱によって形作られた本作の、ストーリー部分を軽く説明しましょう。白状しておきますが、めちゃくちゃ重いです。エグいです。最高です。そしてなにより——生き急ぎすぎです。

まず、この世界では、年に一度“ペイントレス”と呼ばれる謎の存在が「数字」を描くことで、その年齢に達している人々が無惨にも儚く消えてしまいます。人々はペイントレスを打倒し、この悲しき輪廻から解放されるため有志によって結成された“遠征隊”を送り出し続けています。

今年描かれた数字は「33」。
つまり、33歳の人間が全員“消える”年。愛する人、家族、この記事の編集担当であっても例外ではありません。

……これ作中だと67年続いてるらしく、登場人物たちはこの事実を半ば受け入れてるっぽいんですよね。メインでフォーカスされるギュスターヴもその事実を理解しながら、深い関係にある女性・ソフィーとの別れに臨んでいるところから話が始まります。

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「33」が描かれ消失するソフィー(右)と、別れを受け入れるギュスターヴ(左)。

そして今年こそこの理不尽な運命をくつがえすため、キャラクターたちは通算33回目の遠征へと旅立ちます。「第33遠征隊」として……。

プロローグが終わると、出発前夜の港に放り出されます。“遠征隊”ですからたくさん人がいます。きちんと仲間のことを知っておく必要があるので、挨拶をしないとですね!

ある程度挨拶が終わると、いざ出港。打倒ペイントレスをかかげ、住民たちの未来のため、人類の未来のために遠征隊が旅立ちます。娘との関係性に悩む隊長がダンディでカッコいいです。

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遠征隊の隊長。娘さんに理解してもらえなくて悲しそう。

そんな遠征隊の前に、謎の老人が現れます。ふつうの世界であれば老人のひとりやふたりに違和感を覚えることはないでしょうが、一定の年齢を超えた人たちが容赦なく消されていくこの世界で、抹消をまぬがれている「老人」……。まちがいなく、ただものではありません。

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明らかに抹消される年齢のはずなのに消えていない謎の老人が現れ、困惑する遠征隊メンバー

あれよあれよという間に、遠征隊は不意を突かれる形で襲撃を受け、散り散りになってしまうのでした。

これ、超序盤のイベントなんですが、ものすごく心に残るんですよ。その理由は本作のキャラクターの描き方にあると思います。

本作、キャラクターの描き方が非常に印象的で、ダークで重たい世界観のなかに、クスッと笑えるコメディ的要素がしっかり組み込まれていて、深刻さと笑いが絶妙なバランスで成立しています。会話をしているだけで自然とキャラクターに愛着が湧いてくるんですね。

だからこそ、プレイヤーに「これからこの仲間たちと冒険するんだ!」と思わせておいて、なんの躊躇もなくプロローグで「え、そこまでやるの!? 序盤からこんなことが?!」という展開をぶち込んでくる、その容赦の無さにプレイヤーの感情は揺さぶられまくりです。

たとえば、このシエルさん。祝賀会で結構印象的だったのに中盤まで出会えないわけですよ。筆者的にビジュアルが好みだったので、「あぁこの人はやられたのか……」とすごく悲しかったですし、ゲームを進めて再会できた時はめちゃくちゃ嬉しかったです。

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(画像は『Clair Obscur: Expedition 33』公式サイトより)

誰がいつ死ぬのかわからない極限状態だからこそ、仲間たちには「どうか最後まで生き残ってくれ」と思ってしまうんです。彼らが命をかけて旅に出る理由も、戦う意味も、ものすごく重たくて、だからこそ。生き急いでる世界のなかで、それでも生きていてほしいと、そう思わせる力がこのゲームにはつまっています。

バトルシステムが意味わからん!けど面白い……なんで!?

……そんなストーリーをつなぐ、バトルシステムもスゴいんですよこのゲーム。“生き急ぎ”が詰まってます。

なんだったら、面白い仕組みが盛りだくさんすぎて、慣れるまでは正直ちょっと脳がバグります。でもルールや遊び方に気づくと、めちゃくちゃ楽しい。わけがわからないまま夢中になっている自分がいるんです。

たとえば、さきほどご紹介したシエルさん。途中加入で生きていることが判明する彼女は、かなり独特な性能をしています。彼女の扱うスキル周りの説明、聞いてくださいね?

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フォーテルを操るキャラクター・シエルのスキル「フォーカス・フォーテル」は5フォーテルを付与し、1サンチャージを生成。続けて「トワイライト・スラッシュ」を使えば、フォーテルをすべて消費してダメージアップ、さらに1ムーンチャージを獲得。しかも、サンチャージが1あるときにトワイライト・スラッシュを使えば、なんと5APが戻ってくる。

何を言ってるかわかんないですよね。大丈夫です、プレイした筆者も把握し切れてません。正直いまだにフォーテルがなんなのかわかっていない自分がいます。

でも実際にプレイしていると不思議と手が動いているんですよね。何度か使っていると、「とりあえずサンチャージ溜めときゃいいのかな?」とか「特定の敵に対して付与したフォーテルが10フォーテルになったから、このスキルで他の敵にフォーテルを伝播させよう」とか、不思議と考えている自分がいるんです。フォーテルの意味もわからないのに。

シエルさんをどう動かすのが最適なのかもわからないまま遊んでいますが、なぜか“おもしろい”。もう一度、もう一度と、たとえ負けてしまったとしても、もうちょっとやってみたいと思わせる中毒性を持ち合わせています。そんななかでハマりコンボとか見つけてしまった時は、もう脳汁が出ます。

なお、戦闘システムが特殊なキャラクターはシエルさんだけではありません。パーティに加入するキャラは、全員なにかしらの独自システムを持っています。それぞれを汎用システム化していろんなゲームを出すって選択肢もあったはずなのに、惜しげもなく本作へフル投入。マジでこのゲームを作った人たち、生き急ぎすぎ。

さらに、本作には複数のキャラクターを用いたコンボも多数存在します。実際に筆者が見つけて終盤までずっと使い続けていたコンボをご紹介しましょう。

序盤から特定のキャラクターで取得できる「デガジュマン」という、2ターンのあいだ相手の弱点属性を火に固定するスキルと、火系のスキルを数多く有しているキャラクターで相手をボコボコにするシンプルな組み合わせですが、これが非常に強力で、数多くのボスを打倒できてしまったんです。

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システムが複雑だからこそ、自分なりの“型”が見つかった時に一気にバトルが楽しくなってくる。「意味わからん」が「楽しい!」に変わる瞬間をきちんと用意しているんですよね、このゲーム。

ちなみに、まだまだバトルの仕様は盛りだくさんです。多分もっとわけがわからなくなりますが、安心してください。遊んでるうちに「よくわかんないけど、なんかわかった!」ってなりますから。

まず、コマンド制バトルなのにパリィがあります。敵の攻撃に合わせてボタンを押すことで被ダメージを軽減出来るゲームは数あれど、プレイヤーの腕次第でノーダメージで戦闘を終えることも可能でかなり異質です。『マリオRPG』のジャストガードとかに近いですかね。

敵や技によって適切なタイミングは大きく変わり、わざとタイミングがずらされている技も少なくありません。気分はさながら闇の『リズム天国』、ボスであれば一度ミスするだけでも即死級の攻撃も飛んでくるので、かなり高純度な難しさを楽しめます。

ひるがえって、負けた時のストレス負荷が少ないのも本作の良いところ。戦闘中にロードが出来るという「ちょっとお前は何を言っているんだ」というシステムが搭載されているんです。戦闘中のセーブこそできないものの、あまりにパリィをミスり過ぎた時などサッと直前のデータをロードできるのは戦闘難度の高い本作ではかなりうれしい仕様でした。

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バトル中でもロードができちゃう!

ではパリィを覚えることが必須かと言われると、序盤のうちはそうでもありません。パリィよりも猶予フレームの長い「回避」もありますしね。

ピクトスと呼ばれるアイテムの存在も、「パリィが苦手」という人のゲームプレイを強力にアシストします。このピクトスというもの、要は装着型の常在型能力のような存在で、つけているとキャラクターのステータスにバフがかかったり、戦闘において有利となる効果を付与できます。

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1キャラあたり最大3つまでピクトスを装備できる。いろいろ付け替えて理想の組み合わせを探そう。

装備状態で戦闘をこなすとパッシブスキルのような形で習得することができ、一度習得したピクトスの効果は装備せずとも一定のポイントの範囲内でキャラクターに反映することが可能です。

ピクトスによっては「回避時にAP(スキル使用に必要なポイント)を得られる」「回復出来ない代わりにどんなダメージも50%カットする」といったパリィ下手をサポートしてくれるものも存在します。うまく使い分けていけばどうにかなることもあるでしょう。

ただ、最終的にはパリィはマジで覚えたほうがいいです。全段のパリィに成功した際に発動可能なカウンター攻撃がとてつもなく有用なため、絶対にパリィ出来る攻撃をいくつも準備しておくことが攻略のカギとなるはずです。かなしいかな、ここにパリィに不慣れなまま後半のボスと戦って泣いている筆者がいます。

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死亡すると「遠征失敗」の文字が。お、おれのせいで……。

極端に難しい要素でもないので、おまけ的にはなってしまいますが、スキル発動時に発生するQTEについてもご紹介しておきましょう。どのキャラクターにも共通する仕様として、スキル使用時のQTEが存在します。

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成功時のボーナスはスキルごとに異なりますが、タイミングよくボタンを押すことでダメージが上昇したりボーナス効果が追加されるようです。ん……? アタック時のQTE……?

そういえば本作の開発を手掛けるSandfall Interactiveのギヨーム・ブロッシュ氏が弊誌のインタビューで「過去に遊んだJRPG」についてこんなことを言っていました。

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※『レジェンド オブ ドラグーン』:1999年にソニー・コンピュータエンタテインメントより、PlayStation向けに発売されたRPG。美麗なグラフィックのほか、ストイックな戦闘システムやゲーム自体の驚異的な難度からコアな人気を持つ作品。

“アディショナル”【※】だこれ!!!

※アディショナル
『レジェンド オブ ドラグーン』に存在する戦闘システム。攻撃時、画面中央に表示されるボタンをタイミングよく押すことで技が真価を発揮するシステム。本作への影響を強く感じさせる。

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ライター
最近ゲーム業界にサメ映画ブームが来ている気が・・・え? 『スター・ウォーズ』のゲームが出すぎて手が回らない毎日。1日36時間欲しい。
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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