4月7日に発表された、PC(Steam)、PlayStation 5、Xbox Series X|S向けの新作FPS『Marathon』。本作は、『Destiny』や『Halo』のBungieが手がけることやスタイリッシュなグラフィックから、発表時から大きな話題となった。
日本時間4月13日(日)に配信予定のライブ配信に先立ち、今回編集部では本作の最新映像を視聴するメディア向けの事前説明会に参加。ゲームプレイや世界観を描く3種類の映像を観ることができたほか、ディレクターであるジョー・ジーグラー(Joe Ziegler)氏にインタビューを実施した。
『Marathon』では、プレイヤーはサイバネティックな傭兵「ランナー」として、「タウ・セティIV」の失われたコロニーの遺構で富と力を探し求めるとのこと。脱出に成功(勝利)することでアイテムを持ち帰ることができるほか、チームワークを重視したシステムも特徴だ。
本稿では、最新映像からわかったゲームプレイの詳細、そしてジョー氏の口から語られた本作の特徴を紹介していく。なお、今回視聴した映像は以下の生放送にてチェックできるので、本稿とあわせて視聴することをオススメする。
「できるだけ多くの戦利品を獲得し、脱出すること」が目的の、最大18名マルチ脱出シューター
今回拝見した動画では、ゲームの目的はシンプルで、できるだけ多くの戦利品を獲得し、脱出することであると明確に語られている。
最大18人のフィールドで、制限時間があり、生き残ればアイテムを次回に持ち越すことができるというのが基本情報だ。この点において、Marathonには既存の脱出シューターと同様の原則がある。
しかし、後のインタビューでも語られているが、本作の特徴はキャラクター選択式であり、速いペースでの激しいチーム戦といった独自の要素を主眼としていることだ。
実際に、動画中では丁寧な索敵や待ち伏せといったゆっくりとしたペースの進行と、素早く展開する激しい銃撃戦の両方が映し出されていた。戦闘面では、大小の人型ロボットで構成された敵AI:セキュリティー・フォースとの戦闘や、プレイヤー同士の戦闘が存分に描かれていた。
動画中において、透明化や盾の展開といったランナーの能力が確認できている。武器としては、ハンドガン、アサルトライフル、ショットガン、ライトマシンガン、スナイパーライフルといったものが確認できているが、おそらくサブマシンガンもあるだろう。
プレイヤーの武器にも実弾のようなエフェクトを持つものとエネルギー弾のようなエフェクトを持つものが存在している。他にもナイフの装備スロットがあったり、グレネードをフィールドで獲得したり使用しているシーンも確認できている。
ダウン・バット・ノット・アウト(倒されてもまだ終わりではない)のシステムについても触れられており、本作では倒されても終わりではないという特徴がある。ダウンに対しては、ナイフや銃撃トドメを刺すシーンも確認できている。
全体を通してBungieがこれまで手がけてきたようなゲームに共通する戦闘のダイナミックさが印象的であり、しかし元来の脱出シューターならではのプレイスタイルも必要に応じて選び取ることができる、幅の広さを感じさせてくれる内容だった。
ジョー・ジーグラー氏インタビュー。チームワークを重視し、アクションとタクティカルの両側面を重視
Joe Ziegler
Game Director
Bungieジョー・ジーグラーはBungieにおいて、2023年7月より『Marathon』のゲームディレクターとして開発を指揮している。業界での経験は10年以上に及び、以前はRiot Gamesで友人らと立ち上げたプロジェクト『VALORANT』のゲームディレクターを務めていた。Riotに在籍していた12年の間には、『League of Legends』の開発も手掛けるなど、中核的な役割を果たした。
空いた時間にはジャンル問わずゲームをプレイしたり、さまざまなジャンルの音楽を聴いたり、もっぱらテレビを観たりしている。料理も好きで、よく妻と新しいレストランを開拓している。
──今までの脱出シューターと異なった、Marathonだけにしかない要素について教えてください。
ジョー氏:
Marathonでは様々な独自の体験を提供したいと考えています。特徴的なものはふたつあり、ひとつ目がクルーベース(チームワーク重視)のゲームプレイです。多くの脱出シューターがソロプレイ中心であることに対して、私たちは味方の復活システムやクエスト進行の共有など、チームプレイを促進する仕組みを多く取り入れ、プレイヤー同士の結び付きを強化しています。
ふたつ目が、アクションとタクティカルのハイブリッドスタイルのゲームプレイです。従来の脱出シューターではタクティカルな側面が強く、ゆっくりとしたペースでゲームが進行し、敵を待ち伏せるようなプレイが支配的でした。
私たちのMarathonでは、アグレッシブにアクションを実行するか、タクティカルにじっくりとプレイするかをプレイヤーは選択できます。これは、Bungieが真に強烈なアクションゲーム体験を作り出してきた歴史と、生死をかけた戦いならではの意志決定やリソース管理といったタクティカルな性質の一部を組み合わせた形です。
──伝統のある、逆に言えば今のプレイヤーたちになじみが薄いMarathonというIPを選び、脱出シューターに仕上げた理由はなんですか?
ジョー氏:
私たちはMarathonというIPが脱出シューターというジャンルに実に適していると考えています。90年代のオリジナルのMarathonは、AIが普及した世界を描いています。
制約から解放された暴走AIも登場し、プレイヤーに対して誤った情報を与えたり、危険な状況に陥れるように仕向けるという要素がありました。語られ、与えられる全ての情報が信頼できないという世界において生まれる疑心が、生死をかけたゲームのスリラーホラー的な雰囲気の構築に完璧だと私たちは感じています。
──MarathonというIP自体の魅力はなんですか?
ジョー氏:
『Marathon』というIPの魅力についてですが、私たちが提供するものはクラシックな『Marathon』のアイデアを現代的に再解釈したものです。
特に興味深いものとして、「人間であるとはどういう意味か」、「知性を持つとはどういうことか」、「何が本物で何が偽物かもわからない、自身で説明することもできないような世界で生きるとはどういうことか」といった究極的なテーマをこの作品は持っています。
プレイヤーは、ランナーとしてこの謎めいた世界で仕事をすることになります。その過程で雇用主とのやり取りなどを通して発見するものが、表面からはわからないこの世界の真実に辿り着くためのパズルのピースとなります。
サイバーな世界観の魅力に迫る。地球的なものの隣にあることで不気味さも伴う、鮮やかな色彩
──本作で印象的で独特な色使いをされているのには、どういった意味があるのでしょうか。
ジョー氏:
私たちがゲームやマーケティングのために選んだアートスタイルには複数の目的があります。
そのひとつが、Marathonの雰囲気を効果的に伝えるということです。鮮やかな色彩が、活き活きとした地球的なものの隣にあることで不気味さも伴うようにデザインしています。
これは、ゲーム中のプレイヤーの様々な感情の矛盾を表現するためのものです。『Marathon』は、多くの点において、ある意味「矛盾の実験場」と言えます。高揚・緊張・疑心といった感情の共存をゲームに反映し表現するため、このアートスタイルを選びました。
──トレイラーの舞台にも日本語が見え、セキグチジェネティクスというワードもありましたが、本作における日本の立ち位置を教えてください。
ジョー氏:
『Marathon』の世界では地球上の国家として日本が存在するため、セキグチジェネティクスのような企業が登場します。ですが、日本に関する特別なものは現時点ではありません。
「チームの全員が脱出のためのプレイに没頭できること」を重視。味方による蘇生はもちろん、自己蘇生も可能
──リスポーンやダウンのシステムについて詳しく教えてください。
ジョー氏:
まず、Marathonでリスポーンシステムを実装した最大の理由は、チームの全員が脱出のためのプレイに没頭できることを重要視したことにあります。
他の脱出シューターでは、死んでしまったプレイヤーはそのまま排除されてしまうという問題があります。特に、友人と一緒にプレイしていた時に死んでしまうと、「なぜ私は友達のプレイを見せられているのだろう」と思ってしまいます。
そこで、私たちはダブルダウンを実装しました。体力がゼロになるとまず「ダウン状態」になって地面を這うことになります。この状態で敵からトドメを刺されると完全に死亡してしまいます。
そして、このどちらの状態でも、チームメイトが生きていれば復活させてもらうことができます。チーム全員が倒されてしまえばアウトです。自分自身を復活させられる「セルフリバイブアイテム」も用意していますが、こちらは見つけることが難しくなっています。
──映像中で使用されていたキャラクターの能力は、ランナーに依存したものなのか、ゲーム中で獲得できるものなのでしょうか。また、ランナーに依存したものであれば、それぞれのシナジーについても考慮されていますか?
ジョー氏:
Marathonにおける能力の多くはキャラクターに依存しています。各ランナーは基本的にふたつのアクティブアビリティと、ひとつのパッシブアビリティを持っています。アクティブアビリティでランナーの役割が決まるため、それぞれのシナジーも重要な要素です。
たとえば、シールドを持つランナーが前線で敵の攻撃を受け止めている間に、ステルス能力を持つランナーが敵状を探り奇襲するといった連携が可能です。グレネードやクレイモアといったアイテムを世界の中で見つけることもできますが、大部分はキャラクターベースです。
──マルチプレイで特にプレイヤーに楽しんでもらいたいところはどこですか?
ジョー氏:
社内や外部のテストで見えてきたのですが、チームが一丸となって困難や複雑な状況に挑むときに最も楽しい体験が生じます。
本作はチームプレイを主軸に設計されているため、ソロも可能ですが、他のチームと遭遇することもあるため難易度が非常に高くなってしまいます。
つまり、Marathonの醍醐味は味方同士の連携と戦闘にあります。特に、高難易度のAIとの戦闘や、多くのランナーが集まるようなダイナミックなイベントでは、チームの連携力が試されます。私たちは、友達と協力してこのような困難を乗り越える体験を楽しんで欲しいと考えています。
──キャラクターベースですが、装備以外に成長要素はあるのでしょうか?
ジョー氏:
派閥の依頼をこなしたり、ミッションを完了させたり、アイテムを獲得することで全てのランナーに共通したある程度のアップグレードを獲得することができます。
また、ショップで新たなアイテムを購入することができるようになるなど、プレイの継続に伴った成長があります。
──他の脱出シューターなどのように、シーズンやワイプなどの精度は導入されますか?
ジョー氏:
私たちはシーズン制の採用を計画していて、シーズン間のワイプも実施する予定です。つまり、シーズンが変わればプレイヤーの進捗状況はリセットされ、獲得したアイテムも削除され、ゲームを最初からやり直すことになります。
それだけではなく、新しいシーズンでは新コンテンツも導入するので、ゲームの流れや体験は全く異なったものとなります。シーズン1も2も3も、それぞれ違った印象と特徴を持ち、新しいアイテムや新要素によってプレイスタイルも独自のものとなるよう設計しています。
ゲームから脱出成功することで、アイテムを持ち帰れる。さらにアイテムはチームメイトに貸し出しが可能
──プレイヤー間のアイテム売買などの要素はありますか?
ジョー氏:
プレイヤー間のアイテムの譲渡はできませんが、アイテムを貸し出せるシステムを実装しています。友達とプレイする際に、一時的にアイテムを与えることができるというものです。
貸し出されたアイテムは、脱出に成功すると自動的に元の持ち主に返却されます。
このシステムは初心者プレイヤーのサポートにも役に立つはずですが、アイテムは必ず返却されます。
──本作クロスプレイには対応していますか?
ジョー氏:
現在の計画では、クロスプレイとクロスセーブを提供する予定です。
マッチメイキングキューに入った場合、全プラットフォームのプレイヤーと対戦することになります。また、PCとコンソールの双方のアカウントで進行状況を共有することもできるので、プラットフォームを選ぶ必要はありません。
キーボード&マウスとコントローラーの双方で公平かつ直感的にプレイできるように調整することに多くの時間を費やしたため、私たちは本作におけるクロスプレイに対して強く自信を持っています。
──先日Nintendo Switch 2の情報が公開されましたが、リリースプラットフォームが増える予定はありますか?
ジョー氏:
現時点では、リリースプラットフォームを増やす計画はありません。しかし、将来的にはMarathonをより多くのプラットフォームで展開することを検討する可能性もあります。
──18 playersという言葉がありましたが、これは3人×6チームという認識でよろしいでしょうか?
ジョー氏:
今回お見せしたマップ「Dire Marsh」においては3人×6チームとなります。ただし他のマップでは違う構成になる場合があります。
──ビーコンのようなものに向かって走り、操作しているシーンが描かれていますが、あれが脱出装置になるのでしょうか?
ジョー氏:
以下の画像の箇所についてであれば、ご理解の通りです。
プレイヤーがこの装置(exfil beacon)を起動することでタイマーが作動し、ゲームから脱出できるようになります。成功すればアイテムを持ち帰ることができ、失敗(脱出を試みている最中に他のプレイヤーにキルされるなど)するとアイテムを失います。
──ロードアウトリフレッシュとありましたが、ロードアウトがリフレッシュされる条件をお教えください。またリフレッシュされた際、それまでにロードアウトとして設定していたものも消えるという認識でよろしいでしょうか?
ジョー氏:
シーズン終了後のリセットの話であれば、答えはYesです。
Vault(保管庫)/ロードアウトはシーズンごとにワイプされます。ただし、一部の要素はシーズン切りかえ後も引き継がれる予定です。(例:タイトル、エンブレムなどのゲーム内実績)
──ダウンと蘇生に関して。ダウン状態からの蘇生はアイテム不要で、バッグになった味方はアイテムを使用しての蘇生となる形でしょうか?
ジョー氏:
こちらは誤りです。
まずプレイヤーの体力がなくなると、ダウン状態(這って移動することはできるが攻撃はできない状態)になります。チームメンバーがダウン状態になった場合、味方は比較的すぐに蘇生することができ、蘇生が完了すればすぐに攻撃にも参加できます。
ダウン状態中にキルされた場合でも、味方はアイテムを使用せずに蘇生することができます。ただし、ダウン状態からの蘇生よりも時間が長くかかり、さらに蘇生後のプレイヤーは死体からloot(戦利品)を再度拾いなおす必要があります。