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勇者に憧れるケモ耳少女が冒険するゲーム『アルタ』をプレイしたら、すべての道が“パン屋さん”に通じるパン本位制世界だった。強くなりたい? パン屋をやれ! 勇者になりたい? パン屋をやれ!

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勇者に憧れるキツネ娘が、強くなるためパンを売る——。

それが『Aeruta(アルタ)』というアクションRPGのすべてである。

「なんのこっちゃ?」と、首を傾げてしまうのも無理はない。アクションRPGなら、モンスターとの戦いを重ねていくことで主人公ことプレイヤーは強くなり、ゆくゆくは勇者になれるものじゃないのかと。

『Aeruta(アルタ)』レビュー・評価・感想:勇者を目指すケモミミ娘がパンを売って強くなるゲーム_001

確かに本作も基本はダンジョンに潜り、モンスターとの戦いを繰り広げていくことに重きを置いている。

しかし! 『Aeruta』では、そんな行動を繰り返したところで強くなることがない!
強くなるため、勇者になるためにはパンを作り、店で売らなくてはならない。

なぜなら、ダンジョンでの探索や戦闘がもたらすのはどこまでいっても「パンの素材」(たまに「資材」)のみであり、キャラクターを強化するための金も、新たな技を習得するためのスキルポイントも、パン屋経営をすることでしか入手できない、「パン本位制」とも言うべきゲームシステムだからだ!

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どんなにパン作りと販売に関係ない行動を取ったところで、最終的にはパンへと行きつく。そう、本作は「すべての道はローマに通ず」ならぬ「すべての道はパンに通ず」の格言を体現せしアクションRPGなのである。

主人公であるキツネの少女「チャヤ」の目的に沿って肉付けするなら「憧れの勇者に至るすべての道はパンに通ず」だ。

公式にお披露目されている動画を見る限りでは、横スクロールのフィールドで近接武器を振るい、敵を蹴散らしながら進んでいくオーソドックスな2Dアクションゲームのようである。事実、ゲームとしての手触りはその通りだ。

しかし、明らかにパン作りと関係ないはずの行動の全てが、最終的にパンに繋がってしまう。何をしてもパンに行きつく。本作をプレイする限り、パンのことを考えずにはいられない。

かつて、ここまでパンを意識しながら遊ぶアクションゲーム(およびアクションRPG)があっただろうか……。筆者は本作のプレイを重ねるにつれて、脳内がパンに染まっていった。

そして、この一連のサイクルに身を任せた結果、本当に主人公が強くなり、凶悪なモンスターも華麗に倒していく勇姿を見せるようになったことから、パン作りも止められなくなっていったのだった。

「なにを言っているんだ?」と怪訝に思った方がいれば、ぜひ実際に『Aeruta』を遊んでみてほしい。きっとあなたも、プレイ中ずっとパンのことを意識し続けてしまうはずだ。

そして、ゆくゆくは「パンとは力だ!」との真理を得ることになる(……かどうかは人それぞれです)。

文/シェループ
編集/うきゅう

※この記事は『Aeruta』の魅力をもっと知ってもらいたいグラビティゲームアライズさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


パンを作り、ワンオペ体制でひたすら販売。その先にこそ、勇者への道は開く!

最初に軽く本作の概略を紹介しておくと、基本は横スクロールのアクションRPG。プレイヤーは勇者に憧れるキツネの少女「チャヤ」を操作し、ローグライクな分岐構造を持ったダンジョンに潜り、罠を乗り越え、モンスターたちと戦いながら最深部への到達を目指す。

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ローグライクと表したように、ダンジョン構造は挑むたびに変化し、また探索中に力尽きると最初からやり直しになる。ただし、力尽きても探索中に手に入れたアイテムやチャヤのステータスがリセットされるペナルティはない。最深部到達までに要する時間も長くても5~6分程度(最速で2~3分程度)で、気負うことなく挑戦できる。

そんな本作の最大の特徴は、いくら戦闘でモンスターを倒してもチャヤが強くならず、お金も手に入らないことだ。モンスターを倒しても、ダンジョン内にある宝箱を開けても、手に入るのはパンを作るための素材か、後述する「コムギ広場」の建物を発展させるための資材だけ。

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チャヤを強くするには、それらの素材を用いてパンを作ることで得られる「スキルポイント」や、パンを店で売ることによって手に入るお金をコムギ広場の特定施設で消費し、各種ステータスや武器の強化をおこなわなければならない。

ゆえに本作のプレイヤーにとってパン作りおよびパン販売は決して無視できない。無視すれば必ずどこかで行き詰まる仕組みになっているのである。

加えてパン販売はプレイヤー参加型のリアルタイム“ワンオペ”形式である。

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さすがに、パンの焼き上げそのものはNPC(イーフィ)が担当してくれるものの、焼きあがったパンの品出しおよび陳列、レジでの清算作業、果ては客が落とすゴミの掃除まで、すべてにチャヤを直接操作して取り組むのだ。

基本はパン屋の中という狭いフィールドの中を行き来するだけなのだが、ものすごいテンポでやることが降りかかってくる。

店頭では在庫のパンが尽き、キッチンでは補充分のパンが完成する一方、レジには客が並び、店内にはゴミが散らばるという、ランチタイム時の飲食店そのものの勢いで物事が展開されるのだ。それもあって、想像以上に忙しく、うまくこなせると達成感もある。

しかも、レジ打ちに関しては指定されるコマンドを制限時間内に入力することが要求されるミニゲーム形式。

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客が購入するパンの数が多いと、入力するコマンドも長くなる(接客業の経験者なら苦笑い不可避な部分)。

これが現実のレジ打ちを疑似的に再現したものになっているのもニクい。筆者のみならず、実際に接客業の経験があるプレイヤーであれば、さまざまな思い出が蘇るのではないだろうか。

もちろん、入力に手こずっていると客に怒られる。それ以外でも在庫の補充が遅れたり、レジ打ちの対応を後回しにしすぎても客は怒って帰ってしまい、その日の売上に重大な影響が出る。客商売は、甘くない。

しかも、在庫の補充においては、焼き上がったパンがオーブンを飛び出して逃げ出すというトラブルも時折発生。そのために素早く動いて回収するという、ちょっとしたスリルを演出する要素まである。

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出来上がったパンが逃げ出した!捕まえて売れ!(……ん?)

「なぜパンがオーブンから逃げ出すのか……?」との疑問が浮かぶかもしれないが、本作のパンはそういうものだ。深く考えてはいけない。それを在庫として補充し、客に売るという流れに対しても考えてはいけない(現実では絶対に衛生面を気にすべきだが)。

とにもかくにも、慌ただしくて妙な現実味も含んだ要素であることは察せられるだろう。アクションRPGにパン屋販売という経営シミュレーション的な要素がある時点で、テンポの鈍りを想像するかもしれないが、実際はそんなことを全く意識させないほど忙しい。

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そして、ここで頑張ればお金が沢山入り、前述したステータスと武器の強化を重ねておこなえるようにもなる。売るためのパンも、作った数がそのままチャヤの攻撃アクションを拡張させるためのスキル獲得へと繋がり、それがダンジョン探索でのモンスターとの戦闘を有利に進めるための良好な結果へと繋がる。

かくしてプレイヤーは、「勇者になりたければパンを売れ!」「すべての道はパンに通ず」という本作の真理を痛感させられるのである。それほどまでに本作はパンを意識しなくてはならない。

見た目はオーソドックスな2Dアクションゲームであるが、その裏には個性的すぎる動機づけを図るゲームデザインが炸裂しており、本作を強烈に印象付ける魅力となっている。

冒険の途中で村のパン屋に寄ったら、オーブンが爆発した挙句、クマの少女に泣きつかれて店員として働くことになりました!

そもそも、なぜ勇者に憧れているはずのチャヤはパン屋で働くことになったのか? 単刀直入に言えば事故だ。

チャヤは勇者に憧れる冒険者見習いで、冒険者ギルドの依頼から「アルタクリスタル」なるクリスタルを回収するミッションに取り組んでいた。その途中、チャヤは小さな村でもある「コムギ広場」へと訪れ、漂っていた美味しそうなパンの匂いに釣られ、匂いの出先であるパン屋へ立ち寄る。

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パン屋には誰もおらず、オーブンが稼働した状態になっていた。そのオーブンからパンのいい匂いが漂っていたため、チャヤは近くに寄ったのだが、突然オーブンが大爆発。粉々になってしまう。

それを不運にも、その場に戻ってきたパン屋の店主でクマの少女「イーフィ」に目撃されてしまった。実はこのパン屋、翌日に開店を控えていた新店舗。その記念すべき日の直前に重大なトラブルをチャヤが(意図せず)引き起こしてしまったのだ。

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爆発自体はチャヤの意志とは関係なく起きた紛れもない事故だが、イーフィはそんなの知ったことかと言わんばかりに激怒・錯乱・大号泣。

このままでは自分が捨て犬に見間違えられて拾われた挙句に麻薬探知犬としてコキ使われ、ボロボロにされる未来に向けてまっしぐらだと嘆くイーフィだったが、チャヤが冒険者であることを知ると一転。彼女にパン屋で働くことを強要する。

かくしてチャヤは、イーフィのパン屋で働かされることになり、並行して「アルタクリスタル」探しのミッションにも取り組むことになるのだった。ややかいつまんだ紹介だが、このような導入と共に本作は始まり、パンから逃れられない運命が決定付けられるのだ。なんともはや。

また、主人公がキツネの少女で、彼女をパン屋の店員として働かせるのはクマの少女であることからも分かるように、本作の世界観は全体的に可愛らしい。というか、ケモミミのキャラクターてんこ盛り。その種の好きな方々には堪らない世界観である。

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ダンジョン内で遭遇するモンスターにしても、マスコットのような容姿をしており、一見しただけでは敵とは思えないほど可愛らしい。

それらを麺棒や鞭、レイピアといった近接武器で、ボンボコバシバシしていくのは人によっては心を痛めるかもしれないが、出血などの残酷な表現は一切なく、コミカルな散り方をするのでご安心を。

あと、麺棒が明らかに一般的な武器じゃないことも気にしてはならない。

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それらの可愛らしさを強調する、キャラクター全般のやたらジタバタとしたアニメーションと表情も見所だ。特にチャヤとイーフィはその象徴で、焦ったり、泣き崩れたりといったアニメーションの数々には、思わず微笑ましい気持ちになってしまうだろう。

それぞれのキャラクター付けも面白く、イーフィに関しては若干の闇(?)を抱えている点からも印象に残りやすい。

拠点フィールドのコムギ広場には、チャヤとイーフィのほかにも名ありのキャラクターが次々とやってくるのだが、そのキャラクターたちも愉快な個性付けがされているので必見だ。

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ちなみにイーフィを始め、名ありのキャラクターたちとは交流を図ることで好感度が高まるという要素もある。好感度が高まると、該当するキャラクターがパン屋での仕事を手伝ってくれるなどのメリットがあるので、積極的に会話を重ねていくのがオススメだ。

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ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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