日本デジタルゲーム学会の主催する会議「日本デジタルゲーム学会 第15回 年次大会」にて、Steamに投稿されたビデオゲームの日本語レビューを対象とした「ジャンルごとの感情分析」に関する論文が公開された。
論文の著者である廣田雅春准教授は、Steam上の12ジャンルのなかにある1700タイトルから収集した約34万件の日本語レビューを分析し、プレイヤーが各ジャンルに対してどのような感情を抱いているのか、その傾向を調査した。

廣田教授は、海外ではこれまでも英語レビューの研究が行われてきたとし、日本語レビューに対する感情分析を行うにいたったという。
レビューのテキストは、AIモデルを用いて評価【※】。それぞれのレビュアーが抱いたと推定された感情を「喜び、悲しみ、期待、驚き、怒り、恐れ、嫌悪、信頼」の8種類に分類し、レビューごとの感情の強さを数値化して傾向を導き出している。
※分析にあたっては、Steam Web APIを使用してレビューを集積。LINE DistilBERT Japaneseを感情分析データセットWRIME Ver 2によってファインチューニングしたモデルであるJapanese to emotionsを使用して評価したという。出力された感情値に対してソフトマックス関数を適用し、その最大値に対応するものをレビューの感情としたようだ。
論文によると、全ジャンルを通してもっとも多く見られた感情は「喜び(joy)」であった。Steamの大半のレビューはゲームの楽しさについて語られており、全体的に肯定的な内容が多いことがデータから示されている。次いで多かった感情は「期待(anticipation)」で、機能追加などゲームへの要望が多く含まれていた。
3番目に多い「悲しみ(sadness)」は、ゲームへの不満がレビューの記述内容の多くを占めている。一例として、ゲームのバグや言語対応、コントローラーなどの対応関係、対戦のマッチングやフレンドとの協力プレイに関する不満などのレビューが多く見られたという。

本研究において特定のジャンルごとにデータを抽出した結果、Massively Multiplayer(MMO) が全ジャンルの中で「喜び」の割合がもっとも低く、逆に「悲しみ」の割合が最多であることがわかったという。この結果を見た廣田准教授は、サーバー問題やログイン障害、チーターに関する不満が多く含まれるためと考察。長期運営型コンテンツの課題が抽出された。
また、Early Acces(早期アクセス版) は全ジャンルの中で「期待」の割合が最多となった。開発段階のゲームを先行して提供している性質上、機能追加などユーザーからの要望が多く存在するためではないかと考察されている。
さらに、Free To Play(基本プレイ無料)は全ジャンルの中でもっとも「嫌悪(disgust)」の値が高くなった。廣田准教授は、基本無料タイトルには対戦型FPSが多く含まれているため、勝敗の悔しさやチーターに対する不満が「クソゲー」といった短い表現で書き込まれやすいためであると考えた。

このたび、行われた研究の課題としては、「恐れ(fear)」に関するデータの扱いが挙げられている。恐れの感情がもっとも強いと評価されたレビューでは、ホラーゲームなどの怖い部分についての記述が多く見られたという。
しかし、今回の分析対象となったSteamの大分類には独立した「ホラー」ジャンルが含まれておらず、アクションやアドベンチャーなどに内包されていたため、恐れの割合が高いジャンルは結果として現れなかったようだ。
そのため、ホラーゲームをはじめとするより詳細なジャンル分類を用いた分析に取り組むことは今後の研究における課題とされている。
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