「サッカーは格闘技だ!」
そう言われて、どれだけの人がすんなり飲み込めるだろうか。

『キャプテン翼2 WORLD FIGHTERS』を先行プレイしていて、もっとも衝撃的だったのがこのワードだった。
だってサッカーは、ボールをつないでゴールを目指すスポーツであって、一般的にはここまで激しい技の応酬を想像する競技ではない。
だからこそ、本作が掲げる「サッカーは格闘技だ!」という言葉には強烈なインパクトがある。
さらに、公式がキャッチコピーで「世界よ。これがサッカーだ。」と言い切っている。
1981年の開始以降、全世界で9000万部以上を発刊している、サッカーマンガの金字塔『キャプテン翼』シリーズ。その「ワールドユース編」を原作者・高橋陽一先生の監修のもと制作した最新ゲームがそう主張するなら間違いはない。……間違いないはずだ。
本作では、若林源三の「サッカーは格闘技のはずだぜ」という言葉を象徴するような、激しい攻防が前面に押し出されている。そんな試合を体験する中で、あることに気が付いた。
ファウルがないのである。
現実の試合ならファウルを取られそうな激しいプレーでも、本作ではホイッスルが鳴らない。試合の流れを止めず、アクションの応酬を楽しませるためのゲーム的なアレンジなのだろう。そして、気付いてしまった。
「このサッカーゲーム、審判がいない……!」
どこをどう見ても、ジャッジをする人間が本当に不在なのだ。聞こえてくるのは観客の歓声と、臨場感あふれる実況だけだ。

サッカーにも格闘技にも本来は審判がいる。では、試合を止める存在をあえて置かず、必殺技と駆け引きを前面に押し出した本作は、どんなサッカーアクションなのか。無茶でありながら妙に納得してしまう、その正体を追いかけていこう。
そして、こんな思い切ったサッカーゲームを手掛けたプロデューサーへのインタビューもあわせて掲載していく。
取材・文/世界のザキヤマ
ラフプレイを超えた技の数々。サッカーは格闘技なのかもしれない
まずは冒頭で「サッカーは格闘技」と言い切ったタイのチームから紹介したい。

腹にダイレクトアタックしているようにも見えるが、じつはボールを介している。腹を直接蹴っているわけではない。ないのだけど、そもそも相手を壊す目的でやっている技である。
さらに技を放った後には、ものすごくサディスティックな顔で「お前の息の根は おれが止めた」というセリフで煽る。すごい。自分の知っているサッカーではない。やはり格闘技か。
タイユースは激しいプレーが多く、遠距離から猛然とタックルしたうえ、やはり腹にボールを押し付けて膝蹴りを入れる技もある。ボールを介していれば何をやってもいいのか……!

ただ、攻撃的なのはタイに限った話ではない。スウェーデンのステファン・レヴィンの放つシュートは、そもそも破壊を目的とした技だ。
原理としては、ボールを何度かスピンさせた後、弾丸のような回転をくわえてシュート。衝撃を重視することで、受け止めたゴールキーパーは腕に多大なるダメージを負う。
ちなみにこの技は「殺人シュート」と呼ばれているが、サッカーで出していいワードじゃない。もう競技の前提が違う。
余談だが、原作でのレヴィンは、哀しいバックグラウンドがあってこの技を開発するに至った。ただし、本作ではこの殺人シュートを使い続けることを宣言するほど覚悟が決まっている。彼には幸せになってほしい……。
サッカーを格闘技たらしめているのは、相手を壊す技だけではない。そう、『キャプテン翼』ではおなじみの合体技だ。これらはおおむね、プロレスで言う空中殺法と言い換えてもいいだろう。
もっともプロレスらしいのが、メキシコの格闘技「ルチャ」を駆使するメンバーたちの5人がかりの合体技「サンフォールビッグバン」だ。
まず1人が土台になり、そこから4人が飛び上がる。さらにそのうち2人が空中でスパイクの裏を上に向けて足場を作り、残り2人がそれを蹴って飛翔してからボールを叩き込むという、大がかりな空中殺法だ。
現実のサッカーではまず見られない大胆な連携だが、本作ではその常識外れの迫力を、試合を止めることなく存分に味わえる。審判不在のゲームデザインが、こうした技の魅力をさらに際立たせている。
日本ユースも負けてはいない。3人で組む「スカイラブツインシュート」は、ひとりを踏み台に、ジャンプして2人でシュートを撃ち込む。これも現実なら反則だが、「細かいことはどうでもいい。とにかくすごい。」という説得力をもって迫ってくる。
そんな日本ユースでとくに注目したいのが、主人公の大空翼を中心とした「フルパワー・スカイダイブ」だ。
具体的には、翼くんが腹でボールをホールド、チームメイトが翼くんを押し上げ、それを食い止めようとした相手チームのメンバーも巻き込んでゴールする。より正確に言えば、翼くん自身がボールと一体化している。合体技+ゴールへのタックルという、本作の方向性を象徴する技と言えるだろう。
ここまでで「サッカーは格闘技」にはだいぶ納得してきたのだが、話はここで終わらない。必殺技を見続けるうちに、格闘技ともまた違う「何か」の気配がしてきたのだ。
格闘技というより格ゲーなのかもしれない
ここまで「サッカーは格闘技である」面から本作を見てきたが、べつの技を見ているうちに、認識がもう一段階ズレてきた。
「格闘技というより、格ゲーなのでは……?」
そう思ったきっかけが、中国の肖俊光が使う「反動蹴速迅砲(はんどうしゅうそくじんほう)」だ。
相手のシュートをそのまま蹴り返すカウンター技だが、これは格ゲーの領域に足を踏み入れているのではないだろうか。
プレー感として、タイミングを合わせてハマった際がものすごく気持ちいい技だった。エフェクトとして巨大な龍が現れるのもポイントが高い。
必殺シュートのイメージに合わせ、幻獣めいたものが召喚されるタイプはまだまだある。疑問を挟む間もなく見惚れてしまう。ただ冷静になると「シュートを撃ったら幻獣が出る」を受け入れている時点で、筆者の感覚は格ゲー側に引きずられている。
なお、イメージなのか物理的に変化しているのか線引きが難しい必殺技がある。それがドイツのヘルマン・カルツが使う「ハリネズミパス」だ。正確無比なテクニックは理解できるけど、パスをもらったら痛そうすぎる。
同じくドイツからカール・ハインツ・シュナイダーの放つ「ネオ・ファイヤーショット」も見逃せない。
この技、ボールが本当に燃える。炎が赤→青に変わるほど温度が上がっているので、サッカーボール大丈夫か……? と思うが、本作のボールは異常なまでのタフネスを誇るので心配はない。

同じくらいインパクトがあり、かつ大仰なのがウズベキスタンのザンギエフの必殺シュート「グレートロックブラスター」。あまりの衝撃に岩がせり上がってくるようなパワーということだが、これを「パワー」のひと言で済ませるのは胆力が据わりすぎである。
動物、炎、岩──撃つたびに何かが飛び出し、さらにはカウンター技まで存在する。ここまではまだキャラが使う必殺技の話に留まっているが、ふと視点を変えてシステムに目を向けてみると、はっとする要素のオンパレードだったのだ。
HP制、タイミングの駆け引き……これは「サッカーという名の格闘ゲー」だ!
ここまで必殺シュートを軸に見てきたが、サッカーなのか格ゲーなのか、境界線はあやふやなままだった。しかしシステムも併せると、「サッカー形式の格闘ゲームだったのだ!」と確信した。
というのも、本作のゴールキーパーにはHPの概念があるのだ。彼らはどんなにめちゃくちゃなシュートでも基本的に止める。「SGGK(スーパーグレートゴールキーパー)」の異名を持つ若林源三を筆頭に、すさまじい技量を持つキャラたちが布陣を固めているので納得感しかない。
どんな必殺シュートが来ても倒れない絶対的な安心感。やっぱり若林くんかっこいいな……。
ただし、シュートによって相手ゴールキーパーのHPを削り、0にすれば得点することができる。HPを減らすことが勝負の核なのは、じつに格ゲーらしい要素と言えるだろう。
ゴールキーパーとの駆け引きでは、シュートを撃つ側が軌道を決め、止める側はそれを予測して防御方向を合わせる。しっかり読み切ればゴールキーパーのダメージは最小、外せば大きく減らされてしまう。
ちなみに攻撃側がシュートを放った位置に応じて、キーパーが防御方向を入力するまでの猶予が変化。遠くから必殺シュートを放った際は防がれやすくなる、ということだ。リスクをとって近づいてから放つか、ボールを奪われる前に遠くから攻めるか……これも駆け引きのおもしろさに貢献している。
そしてゴールキーパーにも必殺技が用意されている。イタリアのジノ・ヘルナンデスは光り輝く右手で、ドイツのデューター・ミューラーは岩石を砕きながら決死の勢いでボールを止める。攻防ともに必殺技を駆使するのは格ゲー感がかなり強い。
選手同士の攻防では、タイミングの読み合いでボタンを押すことで優劣が決まるシステムが採用されている。ゴールキーパー以外の選手にはスタミナが設定されているため、最適な行動を取れば温存しつつ戦えるという流れだ。
さらに互いの距離が近いと、有利を取れるカットイン演出が出やすくなる。「どこまで引きつけるか」という駆け引きが重要で、どのタイミングでボタンを押すか、チキンレースに近いものがある。対人戦でとくに白熱できそうな要素だ。
カットイン演出の中では、冒頭にも登場したシンプラサート・ブンナークの絵面が強力で、出すたびに相手の腹にボールを叩き込む。成功したときの爽快感は相当なものだった。
ここまで揃えばもう認めるしかない。公式は「これがサッカーだ」と言い、「サッカーは格闘技」という考えが根付き、審判はいない。
バラバラに見えたこの主張、すべて「格ゲー」なら辻褄が合う。格ゲーに審判はいないし、殴り合うし、それでいてこれは紛れもなくサッカーの試合なのだ。




























