【とある組織の、機密文章より抜粋】
D級ギ・クロニクル「祈祷者の護符」に憑依していた上位精霊。アオイトリは仮称である。
『奈落』より発掘される『ギ・クロニクル』には、まれに上位精霊が憑依していることがある。あまりに長い年月の経過ゆえ、例外なく記憶の大部分を忘失しており、明確な証拠が得られたことはないが、『クロニクル』設計において精霊の関与が必要だったか、あるいは何らかの助けになったのであろう。
一部の精霊は、憑依する『ギ・クロニクル』の知識や発動権を持っていることがあり、仮称アオイトリもそうであったため、『祈祷者の護符』はその難解な機能にも関わらず、用法用途の解明に至った。当人も遺物管理局に協力的であり、分類は「従者(※局員の随伴を条件に憑依するギ・クロニクルを運用可能)」とされる。
人格は明朗で情熱的、といえば聞こえは良いが、乱雑で破滅的、ともいえる。
『祈祷者の護符』の機能は、特定異世界の、特定の祈祷の場である「Twitter」への接続である。祈祷の場にはその異世界の無数の思念が渦巻いているが、その大部分は猥雑であり、しばしば極めて悪辣なものも含有された、汚濁の海とも呼ぶべきものである。
おそらく『護符』の設計意図は、異世界の純粋で清らかな意志を集めることだったが、失敗してこのような混沌に接続してしまったがゆえ、仮称アオイトリも混沌とした性格になったのだろう。
仮称アオイトリ自身は「Twitter」に対し極めて強いこだわりをもち、その混沌とした祈祷の意図をできる限り忠実に『護符』所持者に反映させようと努める。『護符』は所持者と祈祷者の間で意志や思考を疎通させる。そして、『祈祷者』全ての多数意志によって所持者の意志を改造する。
あくまで意志の疎通と改変に限られるはずの『護符』の機能だが、何度か、常識離れした効果を上げたと報告されている。おそらくは『祈祷者』の意志が強く所持者に働きかけた結果の『火事場の馬鹿力』なのであろうが、仮称アオイトリ自身はこれを『祈祷の奇跡』と表現している。
このように不明点・不確実性が多々あるうえ、拷問や洗脳といった用途への協力は拒否する融通の利かなさから、『護符』の階梯はD級と評価されているが、潜在的な可能性は秘めているだろう。幸いにして、遺物管理局の一部の者との関係は良好なので、今後の更なる活用の試みが待たれる。
【留意事項】
仮称アオイトリが過去に一度、『祈祷者の護符』の接続先は一つでなく、「似たような祈祷体系を持つ滅びに瀕した世界」であると証言した記録がある。以降仮称アオイトリは黙秘しているが、そうだとすれば協力先の『祈祷者』に危険が迫っている可能性がある。対応策は未定だが、留意すること。