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イクサオトメのプロフィール

【とある組織の、機密文章より抜粋】
 A級ギ・クロニクル『戦乙女の冠』に憑依していた上位精霊。イクサオトメは仮称である。
 放置すれば活発に反世界的活動を行う危険な精霊である。『戦乙女の冠』が遺物管理局の所蔵する『ギ・クロニクル』の中でも最古にして最悪の一品といわれるのは、「滅びた異世界の遺志を継承する凶悪な召喚体を際限なく呼び出す」という機能の凄まじさもさることながら、機能のほぼ全てを仮称イクサオトメに掌握されているためである。諸々の難点にもかかわらず『冠』の機能と仮称イクサオトメについて当局が相当の情報を持っているのは、ひとえにこれらを制御する試みを極めて長期間継続してきた歴代監視者の努力の賜物である。詳しくは管理儀典別冊第三巻:『巡礼』を参照のこと。

 仮称イクサオトメ自身の人格は、陰鬱で横暴ながら、寂しがり屋で気弱である。知性は相当に高く、言語や高度な概念を交えた対話も可能である。一方で人の話を聞かない・恣意的に解釈する・健忘・妄想など様々な問題があり、継続的対話や交渉は不可能である。
 仮称イクサオトメは「自らを神とあがめる戦闘集団の教練」および「世界終末戦争への参戦」という2つの目的に基づいて行動している。しかし起こる現象は客観的には「多数の召喚体を洗脳し暴走させ、誰彼構わず襲撃する」でしかなく、規模によっては世界規模での災厄を招きかねない。
 以上のことから現時点では極めて危険な存在と評価せざるを得ず、分類は「洪水(※特殊儀式によって管理可能だが失敗すれば広域災害を引き起こしうる)」とされる。

 記載時点での『冠』の制約または不具合は以下の通り:
召喚体の寿命は数日に限られる。
接続先の異世界はノルド的世界観*を持つものに限られる。
接続先の異世界は何らかの『欠損』を抱えて滅びたものに限られる。
このため召喚体は『欠損』を核とした不安定な精神を確実に備えることとなる。
召喚体は意図的に能力を制限された状態で召喚される。『欠損』を象徴するキーワード(特記:現場ではこれを『鍵の言葉』と呼称しているが、過去に『中央』から激しく批判された経緯があるため、先方との通信には使用しないこと)を聞くことで制限は解除されるが、同時に凶暴化・仮称イクサオトメの制御からの部分的離脱など、危険度が跳ね上がる。この状態は「オスコレイア態」と表現される。召喚体がキーワードを自ら認識し、深い内省とともに唱えることで、暴走を回避した能力制限解除を行えるとされれるが、それには召喚体の大きな精神的成長を要し、召喚体の短すぎる寿命がそれを極めて困難にしている。

 なお、召喚体の人数および強度に上限は確認されていない。

*ノルド的世界観とは、特定の神話世界観類型のことである。言語体系、信仰体系、寒冷な気候、闘争、陰鬱さ、「黄昏」と呼ばれる終末現象などにより特徴づけられる。

【追記】
 第621回の『巡礼』において『戦乙女の冠』が詳細不明の魔術的事象に巻き込まれ、結果として仮称イクサオトメの意識が正常化されたと報告された。同時にギ・クロニクル本体は大きく欠損し、そのために階梯はD級程度にまで低下したとの推測も添えられている。
 当局最長に及ぶ「洪水」分類も鑑みれば予断は一切許されないが、今後は管理儀式の廃止も含めた対策が急務である。

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