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『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)

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第五の分岐

選択肢:誰も犠としない
が選択されました!

End 10に分岐します。

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_061

「……フフッ。
 
 ま。
 あんたは指さすよね。
 私を」

「……
 
 逆に、何故じゃ。
 
 何故、みずから、
 そんな危険な橋を……!」

「なぜ、ね。
 
 それ気にしてんの、
 未だにあんただけかもよ。
 ウルヴル。
 
 ま。
 どっちが『狼』だか、
 結局分からないわけだし。
 いいだろ。
 五分と五分だ。
 
 私が『狼』なら、万々歳」

「馬鹿な!
 貴様それで、そんなことで、
 命を放り捨てるなど……」

「べつに命は捨ててない。
 
 あんたに賭けてみただけ」

「……ぬ、う……」

「一応、こいつは拾ってってよ。
 魔法の力は枯れそうだけど。
 『埋めてきたみんなの形見』
 ってところで。
 
 じゃ、後は任せたよ。
 
 それとも銃(これ)、つかう?」

「要らん。
 
 ワシは、鍛冶師。
 
 自分で決めた仕事を、
 責任もって終えるには、
 
 自分で打った、
 道具を、使う……」

「ごたくはいいから。
 
 震えすぎ。
 しっかり頼むって」

「……
 
 ぬ、う……
 
 ち、ち、
 血と、肉と、骨にかけて──
 
 ──っ!!」

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_062

 ……

 一撃とは、いかなかった。

 槌(つち)の一撃は、
 ヨーズを大きく傷つけたが、
 命を奪いはせんかった。

 ヨーズは
 『落ち着いてやって。
 大丈夫。痛くないから』

 などと言うておった。

 そんなはずが無かろうに、
 穏やかに、微笑みながら。

 ……

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_063

 五度の強打の末、
 ヨーズは逝った。

 そんなことをしても
 何にもならん、
 むしろ冒涜(ぼうとく)にも等しい、
 そんなこと、知れておったが。

 それでも、
 その死体に、謝った。

 馬鹿のように、謝り続けた。

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_064

 【ヨーズ死亡】

 【生存】
 ウルヴル

 【死亡】
 フレイグ、ヨーズ、ゴニヤ、ビョルカ、レイズル

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_065

 『ワシは、この牢へ置いてけ。
 こんな老骨(ろうこつ)、おったところで
 ただの足手まといじゃ……』

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_066

 『おいおい、冗談きついぜー。
 人里への道知ってんの、
 ウルヴル爺さんだけだろ?』

 『……そうじゃった。
 ならワシにも、
 やれることはあるかの……』

 一瞬、目が霞んで、
 そんな会話を、思い出した。

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_067

 たかが数日前のことが、
 大昔のことのように思える。
 凍てつく牢獄のなか、
 ひどい扱いは受けておったが、
 同胞があった。
 子供があった。
 希望があった。

 今はどうか。
 何もない。
 何も。

 ……何も、ない?

 嘘だ。

 自分に嘘をついてどうする。

 もう誰もおらん。

 もう、とっくに気付いとる。

 言え。

 白状しろ。

 その醜い本性を。

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_068

「ワシ、は、
 
 死ぬのが、恐ろしかった!!
 
 老いぼれが、
 子を守って死ねばよしと、
 勇ましく言うたびに、
 恐ろしさは増した!!
 
 じゃから、
 じゃから、
 
 死をもたらすものを、
 疑って、疑って、
 信仰すら疑って……
 
 結果がこれじゃ!!
 自ら望んだ結果が!!」

「姑息じゃった!
 卑怯じゃった!
 なぜならワシは
 欺(あざむ)いた!
 
 『疑』を隠して!
 『理』に装った!
 
 やみくもに同胞を疑い、
 男を疑い、女を疑い、
 巫女すら疑った!」

「それでも、子だけは、
 ゴニヤだけは疑わんと!
 たとえ『狼』じゃろうが、
 命に代えてもゴニヤは守ると!
 そう決めた!
 そう決めとったのに!!」

 『──おこら、ないで──
 
 ねえ、ふたりとも──
 
 ゴニヤがしんだら、
 
 おこるの やめて
 くれる かしら──』

──あの瞬間。
 自分の中で、
 おかしなものが目覚めた。

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_069

「……

 

 そうとも。
 
 約束は果たした。
 我は怒るのをやめた。
 あの子の、アルマの死が、
 我を怒りと滅びから遠ざけ、
 代わりに、全てが滅びた。
 
 ゆえに我は、死ねん。
 わが命は、
 あの子と全てを負うがゆえ。
 
 クク、ハハハハ!
 またこの論法だ!!」

「何度これを繰り返す、
 巡礼の監視者よ!
 
 無駄、無駄! 何度やろうが、
 我すら逃れ得ぬ戦乙女の鎖が、
 他の亡霊どもに
 ちぎれるものか!
 
 しょせん我らは、
 愚かさで故郷を焼いた前科者。
 
 『疑』と『欺』の炎に、
 全ての希望をくべるほか……
 能は……ない、のだ……」

「……
 
 いかん……
 
 まだ昼間じゃのに、
 意識が……
 
 老いぼれには、
 ここが限界、か。
 
 のう、『死体の乙女』さまよ」

 倒れ
 雪に顔がうずまった

 ああ 死にたくない

 死にたくない

 今もって
 死ぬほどに
 死にたくない

 が

「死ぬ前に
 
 せめて
 
 レイズルを
 ゴニヤを
 
 誰が殺したのか
 
 ヨーズだったのか
 
 知りたか っ た」

「……
 
 誇れ
 
 ゴニヤを殺したのは我
 つ ま り 貴 様 だ
 ウ ル ヴ ル
 
 『あの言葉』を聞いたならば
 せざるを得まい?
 ハハハ
 さて
 
 時間切れだな
 
 早く次に進めろ
 監視者」

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_070

 【ウルヴル死亡】

 【巡礼者が全滅しました】

End 10「孤独」

『ギ・クロニクル』第五夜(End 10「孤独」)_071

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